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もりやさんが過保護過ぎてもう呪い級  作者: 天才じゃない人
第一章「特殊な同居人たち」
1/1

クセのある人々と………、俺

ヒマな時に書きます。更新遅いです。

 むかしむかしのおはなしです。


 あるところにみんなのへいわをまもるために、よくないことをするものをたいじするお寺がありました。


 あるときはびょうきのかぜを。


 あるときはあばれるけものを。


 あるときはわざわいのかみを。


 そのお寺のおぼうさんはだいだい、いつもたたかううんめいでした。

 そのお寺のこどもはたたかうためにおとこのこしかうまれませんでした。



 しかし、あるときとつぜんおんなのこがうまれたのです。



 そのおんなのこはおとこのこにくらべ、とてもつよいチカラをもってうまれました。

 おんなのこはたたかえるチカラをもっていましたから、たいへん、しょうらいをきたいされていました。

 でも、おんなのこをおんなのこだということで、たたかいにだしたくないひとびとがそれにはんたいしました。


 なのでお寺のおぼうさんたちがはなしあい、ひとつのことをきめました。



 おんなのこは、このお寺をまもるためにそだてよう。と。



 お寺をのちのじだいにつづけていくために、よくないものをたいじするのではなく、あくまでお寺をまもるためだけにチカラをつけさせようということです。


 そのけっか、おんなのこはお寺をまもらせるためにかなり(・・・)めんどうみのよいやさしいせいかくにそだてられました。

 それまでは、よかったのです。



 しかし。

 ひとつ、もんだいが。


 めんどうみがよすぎて、ぎゃくにわざわいをおこしてしまうのです。


 ひとりをまもるためにおおぜいをぎせいにしたり。


 わざわいをたいじするためにやまをけしさったり。


 おんなのこはいっしょうけんめいしているのですが、どうしてもまわりにめいわくをかけてしまうのです。

 これではいけない。だれかがそういいました。


「このままではまもるどころか、ほろびてしまう」

 お寺のおぼうさんたちはまたはなしあい、けっか、またひとつのことをきめました。


 おんなのこを、たいじしよう。


 おぼうさんたちはチカラをあわせ、ななかいのあさとななかいのよる、やすまずにおんなのことたたかいつづけました。


 おんなのこはとてもつよく、おぼうさんたちがみんなでたたかってもかてませんでした。


 しかし、はちかいめのあさ、おんなのこをたましいだけにするおまじないをかけ、ふういんすることにせいこうしたのです。


 たましいだけとなり、“いきること”にさよならするかわりにおんなのこはからだとじゆうをうばわれたまま、お寺のおくふかくにふういんされたのです。






 俺の実家の寺に伝わっている童話のようなこのお話。

 面白くもなんともない。

 これが実際にあったことだと小さいときから教えられ、社会の歴史を学ぶ感覚でこの事実を捉えていたのを覚えている。


 この話の名を、『守家物語もりやものがたり』。

『おんなのこ』の名を守家というから『守家物語』なのだ。(寺の書庫の資料を調べた。確かだ)


 幼いときはこの話をただただ知っているだけだったが、最近になって『おぼうさん』たちの身勝手さに気付いた。


 自分たちで『めんどうみよく』なるように育てた結果、怪物を生み出してしまった。

 怪物になったらなったで「害があるから殺そう」とは。昔の話とはいえ、あまりに身勝手だ。『おんなのこ』の気持ちを一切考えていない。

 そんな奴がご先祖様かと思うと尊敬とか感謝とかしたくなくなる。お盆とかなしでいいんじゃないかとか思ってみたり。


 まあ、何にせよ大昔の話で。


 その『おんなのこ』が今どうなっているのかなんて誰も知らない。知る由もない。

 今は、現在いまの話をしなくちゃならない。俺たちは前にしか進めないんだ。


 しかし。


 この物語は、その『守家』さんについてのお話だ。




 俺の名前は『御汰佛みだぶつ じん』。漢字を変えたら“御陀仏”になるって小、中学校の全員に言われた。


 まあそれは気にしてないんだけれども。


 あるお寺の次男で、今年高校生になる。

 義務教育も終わったし、独り立ちするための訓練をしに実家を出てきた。一応仕送りはもらう予定だが、基本アルバイトでもして自分でお金を稼ぐということをやってみようかと思っている。

 お寺は、俺は次男坊だから継がなくていいらしい。だから自立していかなくちゃならない。



 高校の名は『私立選推館学園しりつせんすいかんがくえん』。それなりに名門の学校だ。

 それに加えて、特筆すべき点が一つ。


 学校は柵の中にあって、幾つかの校舎。講堂やグラウンドがある。


 と、いうところまでは普通の学校と変わりはしない。

 だが、この学園は柵の中だけが敷地では無い。実はこの地域一帯、つまりは町ごと学校の所有地なのだ。規模が違う。しかもその中に幼稚園から大学まで一通り揃っている。


 生徒には一人一人に寮であったりマンションであったり、そういった賃貸を借りさせ、みんなそこから学び舎へ通うのだ。金持ちは一軒家を丸ごと借りるというから優雅なものだ。


 町そのものが学園の為のものであり、学園の校則なんかも全域で適用されている。

 まあ、“借りさせる”目的は学園の資金集めだと思うけどね。

 市長や町長と言った首長の類は機能せず、この町は学園長が取り仕切っている。飾りとしての町長はいるが、実質的な権限は無い(らしい)。




 んで。

 いま俺はその“借りさせられた”賃貸物件に向かっているわけだ。



 俺の賃貸の形式は『シェアハウス』だ。



 シェアハウスとは、一軒の住居を複数人で共有して、個室をプライベート空間とするものだ。

 いくら“借りさせる”といっても全てを学園が取り仕切ることはできないので、ひとつひとつの物件に責任者を置き、彼らから家賃を徴収して、その一部を責任者の賃金として渡しているのだ。

 俺が何故マンションや寮にせず、比較的プライバシーが危ないシェアハウスにしたかというと、


 他に………空きが無いのだ。部屋の。


 全くと言っていいほど空いている物件や部屋がなかった。しかし、これだけ広い選推館学園の街で、一つも賃貸が空いていないはずがないのだ。


 これにはまあ、明確とは言えないが確かな理由があるのだが………まあそれはもう少し後で話そう。


 それとそのシェアハウスについてもうひとつ。

 他の住人の六人が全員女子。奇跡的に。もう奇跡には慣れっこだけどな。


 ちなみにその家の個室は7部屋しか無いからもう満員で他に人が入る予定はまず無い。つまり状況的にはハーレム状態というやつだ。

 ある人(・・・)がそう仕組んだ。というか仕向けた。つーかそうなるようにした。しやがった。

 ある人とは、………これも後で紹介しよう。

 人といえるかも、もうわからないんだけどな。




 シェアハウスの住所は高校に比較的近く、学校まで徒歩10分というくらいだ。うむ便利。………これも、あの人が呼び寄せた現象かなあ。


 今日、初めてシェアハウスの先輩たちと会う。全員女性。緊張する。すごく。

 俺はどっちかっていうと男友達しかいなかったから、女性と話す機会は少なかった。だから、女の人と話すときは多少なりとも緊張してしまう。


 もうだいぶ歩いたから、そのシェアハウスの家までもうすぐだと思うが………着かないな。

 実は、もうかれこれこの辺りを20分近く歩いている。

 その家がこの近くにあるのは間違いないのだ。歩いて2分の位置にあるはずなのだが、着かない。なんか同じところをグルグル回っているだけのような気がする。


 見知らぬ土地で迷ったか? いやしかし、俺は方向感覚に疎いわけじゃ無い。むしろ強い。

 初めて来た東京の地下鉄を完璧に乗り継げたくらいだからな。地方に住む者としてはこれはすごいことではないかぁ? 諸君。褒めてくれるなら褒めてくれたまえ。


 あっ。


 そうこうしているうちに、ほら、またあのスーパーの前に来てしまった。


 どうやら絶賛タイムセール中のようで、半額以下の値段となってワゴンに乗る野菜やら肉やらを貪欲にまるでゾンビのように求める主婦の方々でいっぱいだ。ホンットに戦場だな。あそこから生き残れる主婦へいしは一体何人いるだろうか。

「必ず生きて帰って………旦那と息子に美味しい手料理を作るんだ……! 」ってな。

 主婦も大変だなぁ。


 そんなことを呟きつつ、あのスーパーも学園の管轄なんだろうな〜とも思う。

 おや? いち早く目当てのものを買っ(手に入れ)たのか一人の女性がスーパーの入り口の自動ドアから出てきた。……すごい荷物だな。両手がスーパーの袋で埋まってる。片手で7袋くらい持ってるんじゃないか?


 おいおい。

 あんなにあったらいつか落としてーーー



 ガサッバラバラバラァ………。



 言わんこっちゃない。言ってないんだけども。

 案の定女性は袋を幾つか落としてしまったようだ。買い物の戦利品たる野菜類が道路に散らばってしまった。


「あらあら、どうしましょう」


 バラバラに散らばった野菜を集めている女性の元に、俺は歩いていく。


「大丈夫ですか? 手伝いますよ」


 人助けはお寺の息子として当然のことだ。こんなふうに徳を積むと極楽へ行けるんだぞ。知ってたか? まあ、知ってるか。というかつくづく俺は誰に向かって言っているんだろうな。

 決して、この女性が美人だからという理由だけではない。ちゃんと、良心からだぞお。


「あぁ、これはどうも。親切なんですねぇ、あなた」


 俺は女性からスーパーの袋をぶん取り、コロコロ転がっている欠けちゃったジャガイモやらちょっと傷が付いちゃったトマトなんかをちゃっちゃと袋に入れていく。


 女性は、近くで見ると予想外。すごく若い人だ。二十代くらいかと思われるが、十代といっても差し支えない。

 てっきり、何処かの人妻かと思ったのに。


「よし、と。これで最後ですかね?」


 俺は身渡す限りの景色の中で落ちている野菜を全て集めると、女性に駆け寄った。


「ええ、だと思います。ありがとうございました」


 女性は俺が持っている幾つかの袋を受け取ろうとする。

 しかし俺は首を振ってそれを拒否した。


「これ、また落とすと大変ですよ。あなたの家まで運ばせてください」


 一度関わったのだから、最後までしなければいけない。あと、マジでまた落としそうで心配だ。

 すると、女性は少し驚いた様子で「そうですか?」とにっこり笑顔。うん。美しい。


 やはり女性はこういった優しい人でなければ。


「実は、私の家はこの近くなんですよ。あちらです」

 そう言って、女性は歩き出した。

 俺も、それを追いかけるように女性と歩き出す。


 ちょっと遅くなってしまうが仕方ない。人助けだしね。





「まあ! そうなんですか。今年からこの町へ……?」

「ええ、そうなんですよ。俺も、今年から晴れて華の高校生です」


 楽しい会話を交わしながら俺と満月みつきさんは歩いていく。さっき名前を聞いといた。満月 小夜サヤというらしい。

 いい名前ですね。ついでに俺も名乗っておいた。


「そういえば、御駄佛さんはどちらに住んでいらっしゃるんですか?」

「実は今日この町に越してきたばかりで……住まわせてもらうことになっている家を探していたところだったんですよ。迷子になりましたけどね」

「アハハ、そうだったんですか。それではこの荷物を運び終えたら、次はあなたを送って差し上げなくてはいけませんね」

「いや、申し訳ない。有難いです」


 それは助かる。今日はこのまま路上で野宿かと思っていたところだ。

 情けは人の為ならずとは、こういうことなんだなあ。うん、感・動。


「あ、ここです。私の住んでいるシェアハウス・・・・・です」


 満月さんが立ち止まって見上げた建物は立派な洋館だった。


「荷物はここまでで十分です。同居人に運んでもらいますから。次は……御駄佛さんの家の住所はどちらですか? 地図などがあれば分かりやすいんですけど………」

「ああ、ありますよ。これです」

 俺はわかりやすく目的地が描かれた地図を満月さんに渡す。

 この地図は本当に分かりやすい。たどり着けてない俺が言うのもなんだが、そこらへんの案内板とかよりもよっぽどだ。これで迷う方がおかしい。つまりは俺がおかしいのだ。

 満月さんは地図をまじまじと見つめ、思い当たったのか顔を上げた。

 しかし、その表情はさっきまでの朗らかな笑顔ではなく、引きつらせた少し驚いた顔だった。

「……どうしました? 何か………?」

「い、いえ……それが………」

 人差し指をまっすぐに、目の前の洋館を指して満月さんは言った。


目の前(ここ)……です。間違いありません」


 WHAT(ホワッ)!?

 ………………。

 慌てて満月さんから地図を返してもらうと………

 あぁー………うん。確かに、ここだ………!?


 え〜〜と、じゃあ、つまりーーー


 満月さんは玄関のドアを開けた。新しい、入居者が入れるようにして。

「あなたが……今日からここに住む新入りさんだったんですね」






 こ、これもあの人(・・・)の加護のおかげか。まさか同居人にいきなり会うなんて。

 慣れたつもりだったがやはり驚くな。

 この、運の良さには。



 洋館の中に入った俺は広いリビングルームに案内された。


「それでは、住人の皆さんを呼んできますね。それまで、ここで待っていてください」


 そう言うと、満月さんは部屋から出て行った。

 呼んでくる。というのはもちろん紹介のため。マンションのように一部屋一部屋完全に独立しているわけではないから、知らないやつがいきなり住み始めたらビックリするだろう。

 シェアハウスという居住形式ではどうしても各住人とのコミュニケーションが大切になってくるだろう。俺が気持ちよく3年間の高校生かつを送るためには同居人と仲良くなることは必須だといえる。



 しばらくして、ドアの奥から複数人の足音が聞こえてきたので、俺はヤモリを再びカバンの中へ(無理矢理)押し込み、そばにあったふかふかのソファに座って、大人しく待っていました感を演出した。

 ガチャリ。ドアノブが外部から捻られて扉が開いた。まず入ってきたのは満月さんだった。


「それでは皆さん、紹介しますね。あちらが今日からこの家の新しいメンバーとなる御駄佛 仁さんです。色々と分からないこともおありになる事でしょうから、ちゃんと教えてあげてくださいね」


 次に、赤髪ウェーブのちょっと気の強そうな女の子が入ってきた。

 そして入るなり俺を思いっきり指差して、


「え〜!? ちょっとサヤ! こいつ男じゃない! なんでアタシがこんなやつと一緒に一つ屋根の下で暮らさなきゃならないのよ。さっさと出てって欲しいわ。今すぐ出てけ、つか死んで?」


 うわお。


 初対面の相手にいきなり「死ね」とは。なかなかいい根性せいかくをしている少女だ。好きだよ〜そういう子。怒りを通り越してむしろ好感を覚えるからね。

 お寺の息子だからな。俺は寛容なんだ。


「……………」


 次に入ってきた子は何にも言わない。表情も凍りついてるみたいで変わんないし。アレお面とかじゃないんだよね。違うよね。って疑ってしまうくらいのレベルだ。

 背は俺より少し小さいくらい。スタイルはどちらかというとペッタンコ、て感じだ。


「ふぅーん、コイツが話していた入居者かい? 男だったとはねぇ。うん、いいじゃないか。『卯の月《ここ》』には女の子しか居なかったからね。男が一人くらいいたほうが面白くなるのにって思っていたのさ」


 今度は長過ぎる黒髪をポニーテールにくくったナイスバディーなおねいさんがきた。

 妖艶な雰囲気で僕に近付くと、まじまじと覗き込むように僕の顔を見てきた。おおぅ、ち、近い……お互いの顔の距離10センチくらいしかないぞ。長いまつげとすこしつりあがった流麗な瞳は、もはや魔性のそれを感じさせるほどだ。


「顔立ちも悪くないさね。これから楽しくなりそうじゃないか」


 彼女は僕をしばらく見つめたあと、「お互い自己紹介は後だ。ホラ、後ろ」と親指をたてて自分の背中を指した。なんだ? 後ろを見ろってことか?

 っと、思っていたら


「わぁーい! おにいちゃん誰!? ルリと遊んでくれるの!?」

 ガバッ!

「うわっ!?」


 いきなり背後から腕を首に回された。一体誰だ。

 首だけで振り返ってみると、そこには身長110センチあればいいなぁ、くらいしかない幼女ロリを体現したかのような女の子がいた。無邪気に笑ってバタバタとはしゃいでいる。この娘には見知らぬ人への遠慮とかそういう言葉は存在しないようだ。


 まさか、この子も入居者なのか? こんな小さい子が? どう見たって幼稚園児だぞ。


「その子も入居者の一人ですよ。彼女は十七歳です。それでも」


 俺が不審な目でまじまじとルリと名乗った少女を見つめていると、満月さんが俺の感じている疑問をジャストミートに解決してくれた。


「えっ。マジで? これでも?」


 俺より年上なの? この子?いやこの人?


「ええ、マジなんですよ。それでも」


 キャハハハハッ。と軽快に笑いながらルリちゃん(ルリ“さん”とはとても呼べない)は俺の頭をまるでチンパンジーのように登ってきた。ちょっと、邪魔なんですけども。

 ルリちゃんは俺の首を股に挟んで肩車の状態に。だから降りてって。別に重くないけど。あ、体温高ぁい。


「あらまあ、ルリさんがこんなに懐くなんて。珍しい事もあるんですねえ」

「ホントね。あの子は普段なら見知らぬ誰かには絶対近付かないのに」

「ルリは本能でソイツの本質を見抜くからねぇ。その辺の男とは違うってことじゃないさね。男ってだけで邪険にしてると、いつか損するよ? カガリン」

「誰がカガリンよ。私の名前はかがりよ!龍ヶ崎(りゅうがさき) 篝っていうちゃんとした名前があるんだからそれで呼んでよね!」


 なんだなんだ、この子がこんなに俺に懐いているのが珍しいのか? めちゃくちゃこの子フレンドリーだけど。人見知りとか想像つかないぐらいなんだけど。

 まあ、それは別に良しとしよう。お寺の息子の溢れる人格がなせた技と認識しておこう。うん。


「………で、もう一人は? 俺以外の入居者は六人(・・)なんでしょう? あと一人はお出掛けしてるとか?」

「………」

「………」

「………」

「………」

「………」


 そうだ。ここに居るのは入居者全員ではない。この屋敷の定員数は七人。俺を入れてちょうどらしいので、あと一人姿を見せていない人物が存在している。


 というか、なぜみんな口をつぐむ。なんか言ってくれよ。全員難しい顔をしてだんまりしてるんだけど。

 無邪気なルリちゃんでさえ眉間にしわを寄せてるぞ。どゆこと!?

 えー……と。まさか六人目の入居者の存在は禁忌タブーなの? 極秘事項トップシークレットなのかそれ。政界トップの隠し子とか。


「え、え〜〜っとですねー………。なんというか、その……彼女にはちょっと苦手なものがありまして………」

「苦手なもの?」

「ええ、かなり深刻な………」


 スッ……、と。満月さんの視線が半開きのドアの方向に向けた。

 全員がそれにつづき、そのドアに視線を向ける。


 ……ん? 誰かいるぞ。ちょっとだけ三つ編みの髪の毛が見えた。あれが六人目の住人か?

 ふと、ドアの近くで腕を組んで仁王立ちしていたカガリさんがドアの奥に手を突っ込んだ。


「もう、ハルカ! 姿くらいは見せたらどう!? いい加減に直したほうがいいわよ? ソレ」


 そしてぐいっと引っ張ってきたのは、めっちゃ顔が赤くなってる女の子。三つ編みツインの、さっきチロリと見えた人だね。

「あわわわわ………! ち、ちちちちょっとカガリさんっ! わっわわ私はいいいいーでですかららっららあぁあぁっ………」


 うわぁ、スゴイね。声が衰弱した子猫並みに震えてるう。


「そーいうわけにもいかないだろう? その男への極度の苦手意識、なんとかしたほうがいいよ。ホント」


 おねいさんも手伝って、嫌がってドアノブから離れないハルカさんを無理矢理に引っぺがした。

 どうやら、この人は男性恐怖症みたいだな。なるほど、だからこの部屋になかなか入ってこなかったんだ。おとこがいるからな。


「ひゃうぅっ、お、おおおお、おお男の人っ。う、うわわわ、は、恥ずかしぃいいぃ………。き、きき緊張で、は……吐きそ………ぅ、うぷっ」


 あ、それはやめてね。できる限りガマンして下さい。

 男ですいませんね、ホント。


「取り敢えず、これで全員揃いましたね! 御駄佛さん、彼女たちが、この屋敷のメンバーです。ではみなさん、自己紹介をお願いしますね」


 満月さんが音頭を取り、当初の目的である自己紹介が始まった。

 最初は、あの「死んで」発言のヤンキー少女。


「『龍ヶ崎 篝』よ。あなたが嫌い。できる限り早くご臨終になることを祈ってるわ。よ・ろ・し・く」


 こっちも君のことは嫌いだ。初対面のやつに「死ね」何ていう女性とは付き合えないね。こっちだってノーサンキューだ。誰だってそうだろう?


「………………………………。『獣生ししお じょう』」


 一言だけ呟くと、彼女はもうそっぽを向いてしまった。

 そんだけかいっ。もうちょい何かないのかよ。思わず心の中でツッこんでしまったぜ。

 余計なことは要ら(俺と仲良くする気は)ないってか。


「あたしは『麻魅まみ 愛歌あいか』ってんだ。このシェアハウスではサーヤと並んで年長組さ。この街には来たばかりで色々あるだろうが、困ったことがあったらなんでも言いな。力になるよ」


 そんな頼もしいことを言ってくれる麻美さんは口紅のかかった唇を薄く伸ばして優しく微笑んでくれた。


「わっわたっ! 私のにゃ、にゃまえは、きゃっかか『上遣かみつかい はるか』ですぅっ! あ、ああんまりよよよよろしくしたくありませんっ!! で、でではっ!」


 ガクガクと震えまくった自己紹介を早口言葉でもしているかのようなマシンガントークで終えると、上遣さんは疾風のような勢いで部屋を飛び出していった。男性恐怖症か……これは重度だな。


「ルリはねぇ、『九界くがい 瑠璃るり』だよお〜っ。ルリはおにーちゃん好きだよっ。カガリがおにーちゃんをキライになってもルリはキライにならないからねっ。ダイジョーブだよっ。あんしんあんしん~」


 ひしっ。ルリちゃんは笑顔で飛び付きながらの自己紹介だった。


「コラコラ、女の子がむやみやたらに男に抱きつくもんじゃないぞ。離れて、ホラ」


 また俺をジャングルジムにしようとしたルリちゃんを引っぺがして、ソファに下ろす。

 俺は女性に対して少し緊張してしまうが、この子はまんま幼稚園だからそんなことないな。お寺に遊びに来ていた近所の子供達の遊び相手もやっていたから幼児の扱いには慣れてるし。


「最後に、改めて『満月 小夜』です。これから色々なこと(・・・・・)があるでしょうが、どうか、よろしくお願いしますね。御駄佛さん」


 満月さんが恭しくお辞儀をしてくれた。こちらもお辞儀を返し、俺も自己紹介を始める。


「『御駄佛 仁』ですっ! ふつつか者ですが、よろしくお願いしますっ!!」


 特に特筆しておくべき自分の(・・・)特徴は無かったので、おきまりのセリフを言っておく。なんか違うような気もするが、気にしないでおこう。

「ようこそ、シェアハウス『卯の月』へ。あなたを歓迎します」



 こうして、住人の態度に若干の不安要素を感じつつも俺の新天地での生活はスタートした。

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