表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

プロローグ

挿絵(By みてみん)


 ↑ 表紙。


偶発的に生まれた正義感は、時として全くの無駄となる。

もっと言うと、

所詮十七年しか人生というレールを走っていない俺が

厳しい世間の中で人助けできる力なんぞ微々たるものであり、

それを分かりやすく言い換えるならば

高校二年生という若輩者が、

その場のテンションに流されるまま行動するとロクなことにならないということである。


しかし、今日という日はまさに絶好調だった。

朝に見たテレビの星座占いで一位を獲得し、

偶然、昨日予習していた箇所が抜き打ちテストにそのまんま出てきて、

昼に売り切れ必死の限定やきそばパンをゲットでき、

下校途中、道端に転がっていた500円玉を拾ったのである。

……安っぽい、大変に安っぽいが、

高校生の絶好調といえば、所詮その程度の薄っぺらい幸運の積み重ねなのである。

そんなので幸福感を味わえるのだから、

日本という国は大変に平和的な土地であり、

そんな環境下で育ててくれた両親にも感謝を示したい。


「おいっ! 大変だ! 高校生が橋から落ちたぞ!」


それが、

下校途中にお婆さんからバッグをひったくった男をテンションに任せて追いかけ、

隣町に架る大橋の上までランニングした挙句、揉みあいとなり、

そのまま俺だけが橋の下へと転落している最中であったとしてもだ。


死に際の集中力だろうか。

こんなくだらないことを長々と考えていても、

まだ体は川底にはつかない。

もう少し神様とやらは時間をくださるようなので、

色々と無茶な注文を考えてみることにする。


そうだな、もし生まれ変わるなら、

異世界で勇者とかはどうだろう。

……いや、まてよ。それはそれで面倒だな。

勇者なんてのは規律と責任、

そしてお使い的な業務が多すぎて気苦労が絶えないのではないか。

外に出て魔物をバッタバッタ倒せるのは快感かもしれないが、

そもそもそんなに魔物が徘徊するような世界で、

わざわざ危険に身を投じる必要性があるのだろうか。

もう少し楽そうで、命の危険が少ない職業がいい。

とするならば現代で言う公務員的な役割を異世界に変換すると何なのだろう。

「……ギルドマスター?」

そうだ。

冒険者に仕事を与え、それでいて自分は剣を振うことなく事務仕事を全うする。

例え危険な世界にあっても、

そこからの距離は近すぎず、遠すぎず。

極めて絶妙な立ち位置で成り立っているじゃないか。

嗚呼、もし第二の人生を始められるならそんな物語を。


そして、俺は川に落ちた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ