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時の魔法  作者: karon
23/25

新しい現在

 自分の寝台で目覚めたテオドールはゆっくりと身を起こす。

「妙な夢を見た」 

 そう呟いたテオドールの眼前で、見慣れない青いカーテンが目の前で揺れていた。

 そのカーテンは、部屋の真ん中で区切るようにつるされている。

「こんなものあったっけ?」

 そう思ってカーテンをめくった。その帳の向こうには今度は薄薔薇色のカーテンが下りている。

 薄薔薇色のカーテンをめくれば、その向こうに、同じように机と寝台があり、寝台の上で身を起こしていたのはテオドラだった。

 テオドラはきょとんとした顔でテオドールを見ていた。そして手元の枕をつかむとやにわにテオドールに投げつけた。

 まともに顔面に食らってテオドールはしりもちをついた。

「着替えてないわよ、なんで覘いてんの、テオドール」

 とげとげしくテオドラはそう言って、薄薔薇色のカーテンを閉じた。

「え?」

 思わず周囲を見回す。あの極彩色の道化、時の妖精の姿を探して。

 扉が開いて、見慣れた侍女が入って生きた。

「あの、ダリア」

「どうしましたか、テオドールぼっちゃん?」

 明らかに挙動不審なテオドールを怪訝そうに見る。

「いや、その」

 ダリアは小さくため息をつくと、そのままカーテンを開く。

「お嬢様、お支度の時間です。起きていらっしゃいますか」

「起きてるわよ」

 カーテンの向こうにダリアが消える。

 テオドールはなおも周囲を見回し、時の妖精の姿を探した。


 ダリアに手伝わせて支度をしたテオドラと、動揺しながらそれでもいつもの習慣通り、自分も着替えた。

「何よ、テオドール、人の寝起きを除いて、レディに失礼だと思わないの」

 テオドラが憤然とした様子で詰め寄ってきた。

「何がレディだ、餓鬼」

「同い年で何言ってんのよ」

 テオドラがかみついてきた。

 不意に、頭を誰かにつかまれた。そのまま一気にテオドラの頭にたたきつけられる。

「朝っぱらから何を喧嘩している、テオども」

 いつの間にか来た父親が、腕組みをして自分とテオドラを見下ろしていた。

 こぶのできた頭をさすりながら、父を見上げる。

「貴方、何を朝から」

 涼やかな女性の声。振り返ると、そこにいたのは見慣れた母親ではなかった。そこにいたのはセシリア。

 あわい空色のスカーフの下には、あのうじゃけていた傷跡があるはずだ。

「二人とも、朝ごはんですよ」

 やわらかい笑みを浮かべてセシリアは食堂に入っていく。

「どうしました、坊っちゃん」

 父親の側近が、その場に立ち尽くしているテオドールに話しかけた。

「あの、テオドラは」

「姉上がどうしたんですか?」

「姉上?」

「テオドラお嬢様は貴方の双子の姉上でしょう」

 あっさりと言われ、テオドールはその場で固まった。

 セシリアが生き延びたため、現在が変わってしまった。本来なら、テオドラと交代で消えるはずだった自分は、なぜか、テオドラの双子の弟として、ここで生きている。

 事態は把握した。だが、それならそれで説明くらいしろと時の妖精をののしる。

 時の妖精はもう姿を現さない。不幸なテオドールは消えてしまったから。

 それでも、あの原色の衣装の端でも見えないかと、テオドールは周囲を見回した。

「ご飯に行こう」

 テオドラが声をかける。

 そしてあの時のようにテオドラがテオドールの腕をつかんだ。

「借りは作りたくないの」

 不意に聞こえた言葉に、目を瞬かせると、テオドラは怪訝そうにテオドールを見た。

「今日はちょっとおかしいよ」

 テオドールは小さく笑った。

「いや、ご飯に行こうか」

 二人は食堂に駆け込んだ。


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