表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時の魔法  作者: karon
14/25

悪化の一途

 それからも事態は悪い方に動き続けた。

 父親の書類が荒らされているのに気付いたのは、父親の側近だった。

 書類の数を確認してみる。

 徐々に青ざめてきた。

 足りなくなった書類の中身を思い出したのだ。


「なるほど」

 父親は不自然なほど静かにその話を受け止めた。

「だがいったい誰がそんなものを持ち出すというんだ?」

 今この館にいるのは、代々この家に仕えている者達だけ。例外は立った二人、セシリアとその女中。

「あの二人の様子を探れ」

「しかし、いくらなんでも」

 父親は小さく首を振った。

「仕方あるまい。新参者はあの二人だけだ」

 そう言われても、うら若い女性二人でなにができるのかといいたくなった。しかし主が聞く耳を持たないのは見ればわかる。

 テオドールは胸が冷たくなるのを感じた。すべてが最悪の方向に動いている。

 自分の判断を呪いたくなる。

 どうして過去を知ろうとしたのか、知ったところで何もできないのに。

 父親はどんどんセシリアへの疑いを強めていく。

 セシリアの女中がよくセシリアに用を命じられて、よく街に下りていることがわかったのが最悪だった。

 徐々にだが、確実にセシリアの立場は悪くなっていく。

 そしてセシリアはそんな環境の変化に気づいていない。

 テオドールは見ていたから分かる。セシリアは何もしていない。

 何も気づいていない。


 セシリアは茶器を弄んでいる。

「ねえ、カルミア、あなた何かした?」

 セシリアが怪訝そうに尋ねる。

「どうかなさったのですか、お嬢様」

 ティーポットを構えたままカルミアはセシリアの顔を覗き込む。

「なんだか、他の使用人がよそよそしいのよ」

 目の前の焼き菓子に手を伸ばす気もしないのか、ただ茶器を弄んだままだ。

「それで、どうして私が何かしたかとおっしゃいますか?」

「だって、私は心当たりがないもの」

 セシリアはきっぱりと言う。実際セシリア本人は、それなりにこの家の使用人達と親しもうと努力をしていたのだ。

 それなりな努力はそれなりな結果を生みつつあった。はずだった。

 しかし最近はセシリアが話しかけてもそそくさとあちら側に行ってしまう女中達。食事の際、料理人に料理のことを聞こうとすれば言葉を濁して会話が進まない。

 今まで最低限の会話は成立していたのに。

 料理人だって隠し味を聞いたくらいでたじろいだりしなかったのに。

「変なことを言った記憶もないし」

 花壇に食べられる花を植えてあるから食材として提供しようかという会話は以前成立していた。

「旦那様も最近目を合わせてくださらないし」

 それが一番の問題だ。夫婦の不仲は二人だけの問題ではない。夫の親族と実家の身内の両方に影響を及ぼす。

「何故かしら」

 セシリアは陰気に呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ