第2章「テーブルから散弾銃?」
あれからどのくらいの時間が経っただろう?
さすがに平日の朝方というだけあって、早い時間に見かける常連客の姿は見当たらない。いつもならば何かと話題を提供してくれる店長も、どこかのキャバクラから来たのであろう数名の女性客に掛かりきりで、話しかける隙がない。
このまま少し眠ってしまおうか…。スツールの背にもたれ、こっそりと瞼を閉じようとした、その時。バンッッッ! とテーブルを叩く派手な音と共に、女性客のひとりが立ち上がった。
「ちょっといい加減にしてよねっ! アンタたちなんかに、わたしのコト、口出しされる筋合いないしっっっ!! 何にも知らないクセに勝手なコト、言わないでくれる??」
「てかぁ〜いきなりキレられても困るんですけどぉ〜。ウソっぽいからウソっぽいって言っただけじゃんねぇ?」
仲間割れなのだろうか? 狭い店にヒステリックな怒声が響き渡る。ついつい向けてしまった視線の先には、片手を顔の前に挙げ、ゴメンと謝る店長の姿。気にしないでと首を振り、再び前に向き直った瞬間のコトだった。
ガシャーン!
テーブルの上のグラスやらが倒れる音と共に、立ち上がった女性が太ももの辺りを抑え、倒れ込むのが見えた。
「おいっ! オマエら、いい加減にしろよっ。ほかにも客いんの、わかってんのか!? てか出てけ、もう二度と来んなっ」
「だってぇ〜コイツ、めっちゃムカつくしぃ〜」
「いいから帰れよっ!」
突然キレた店長に文句を言いながらも、倒れ込んだひとりを残し、女性たちは口々に文句を言いながらも店を後にした。
「おい、麻美、大丈夫か? あ〜あ〜アイツら、派手に壊しやがって…」
割れたグラスと零れた氷が乱反射。テーブルの上はもちろんのこと、ボックス席の床からソファーまで、本当にキッチリ(!?)汚されている。ちなみに麻美と呼ばれた女性はと言えば、これまたキッチリ水浸し(いや、酒浸しかな?)になっていた。
「西野さんもゴメンね〜。こっち片付けたら、なんか一杯オゴるよ。ホラ、麻美も座り込んでないで服拭けって」
「…麻美ちゃん、だっけ? ま、とりあえずこっち来て飲み直しなよ」
……。こうなったら仕方ない。袖触れ合うも多生の縁ってヤツでしょ? なんて、ホント、本当に軽い気持ちで、ボクはキミに声を掛けるコトになったんだ。