第10話『ボクのお仕事』※修正版※
12/25更新の第10話を一部修正しました。
予定通り、クリームシチューを胃袋に収め、キミが出かけたのは午後6時。いやぁ、早くから働いてるんだね、と茶化すボクに一言。
「オトコがバカだからでしょ」
はい、その通り。というか、なんてシュールなお答え。でもね、オトコがバカじゃなかったら、今、ココにキミの家政夫さんはいないのだよ? などと思いつつ、グッとこらえて『いってらっしゃ〜い』。
ここからがボクの仕事時間というワケだ。しかし、ときれいに空になった皿を片付けながら、誰に問うでもなくひとり愚痴る。キミは一体、今までどんな生活を送っていたんだね? 右を見れば寝起きのままに放り出されたパジャマと思しきワンピース、左を見れば本棚らしき棚に詰まれたマンガ、CD、MDの山。そして部屋のいたるところに、そう安くもなさそうなブランドの服やら煌びやかなドレスやら、果てはストッキングにハイヒールまでが転がっている。
服を片付ける。
洗濯機を回す。
ゴミを捨てる。
そしてまた、
服を片付ける。
それからの5時間はだいたいその繰り返し。やっと床全体がキチンを現れたところで、ボクは休憩を取ることにした。
大量に撒き散らされた服を片付けてみて気づいたコトがひとつある。ここの部屋には、本当に家具が少ないのだ。備え付けのクローゼットに、本やらなんやらいろいろなモノがギュウギュウに詰まった本棚、そして小さなオーディオ。最後に丸型のテーブルにふたり掛けのソファーとベッド。あ、あとは台所周りのもろもろも。
そう、現代人の常識であるTVすらない。
つ・ま・り。
ココの空間には娯楽と言われるモノは本棚の中に詰まっているワケだ。そして、何某かの娯楽を求め、彷徨っていたボクの瞳が左を向く。と同時に、逸れていく。
ハッキリ言わせてもらおう。あそこのゾーンを片付けるには、少なくともあと1日は必要だ。目にとまった2つの本棚(うちほとんどが紙類)。捨てるモノ、残すモノの選択は彼女に任せるとして……ミイラとりがミイラとり。日本人は勤勉だね。そんな言葉が頭の片隅をよぎっていく。
結局ボクは、その日の仕事をあきらめて、夜の昼寝(!?)をむさぼるコトにした。