ダンゴムシの決死のロードムービー
ダンゴムシの決死のロードムービー
ダンゴムシの決死のロードムービー
近くでダンゴムシよけの薬が撒かれた。
もうそこには住めない。
僕は家を捨てた。
朝早く、車のいない時間を狙う。
目指すは、対岸の緑地だ。 目の前に広がる、黒く巨大なアスファルト。
意を決して踏み出す。
あつい。
まだ朝なのに、地面がじりじりと焦げている。
14本の足をフル回転させるが、ちっとも前に進まない。
突如、頭上が真っ暗になった。
見上げると、巨大な黒い壁。人間の靴だ。
どすん! すさまじい地鳴り。
僕はとっさに体を丸めた。
完全な球体になる。
ゴロゴロ、ゴロゴロ!
風を切り、斜面を転がる。
危機一髪で靴底をかわした。
目が回りそうな回転のあと、ポツンと何かが体に当たって止まった。
恐る恐る体をひらく。
ひんやりとした影。
鼻をくすぐる土の匂い。
見上げると、そこは大きな植木鉢の裏だった。新しい国にたどり着いたのだ。
「おい、新入り。災難だったな」
渋い声がした。
振り返ると、片方の触覚が短い長老ダンゴムシがいた。
後ろにはたくさんの仲間たち。
彼らは最高のご馳走(ただの湿った落ち葉)を囲んで、宴会の真っ最中だった。
「あっちの薬の国から、命からがら逃げてきました」
僕が言うと、長老は無言で特上の落ち葉を一枚差し出してくれた。
パリ、と一口かじる。
決死の引越しを終えたあとのご飯は、いつもの3倍、体に染みた。
気楽に読んで。




