第1話 役割
僕は知っている。
この世界では、人はみんな「役割」を持って生きている。
それが見えるのは、通行人Bの僕だけだ。
僕は、人の頭の上にあるものが見える。
それはよくアニメとかで見る、寿命とか名前とかでもない。
役割だ。
僕はかっこよく英語で『ロール』と呼んでいる。
他にも見える人がいるか探してみたけど、「そんなこと現実にあるわけないだろ」と
ことごとくバカにされた。
朝の教室。
窓から差し込む光の中で、クラスメイトたちが話している。
僕だけみんなの頭の上には役割が見えている。
例えば、前の席に座っている蓮。
こいつは運動神経が良くて、クラスの人気者。
こいつ役割は『主人公』。
いかにもムカつく役割だ。
その隣で笑っている椿には
『親友』
窓側の席で本を読んでる女の子朝日。
彼女の頭の上には
『ヒロイン』
顔もいいし、男子からは人気だから妥当だ。
凪は思った。
主人公がいて、親友がいて、ヒロインがいて。
まるで一つの物語みたいだということ。
先生が教室に入ってくる。
「席につけー」
クラスがざわざわしながら席に戻る。
先生の頭の上には
『教師』
当たり前の役割。
僕は静かにノートを開く。
そして、少しだけ上を見る。
僕の頭の上には、こう書かれている。
『通行人B』
つまり僕は、この物語の登場人物ですらない。
授業が終わり、チャイムが鳴る。
蓮が立ち上がる。
「なあ、今日カラオケ行こうぜ!」
すぐに人が集まる。
椿も笑いながら言う。
「朝日もこいよ!」
朝日は本を閉じて、少し笑った。
「私は見てるだけでいいよ。」
ヒロインらしい返事だ。
僕はその様子を遠くから見ているだけだった。
帰りの学校の階段。
人の流れの中で、僕は歩いている。
その時。
前から朝日が歩いてきた。
僕は横を通り過ぎる。
でもその瞬間。
朝日が足を滑らせた。
「あっ」
体が後ろに倒れる。
その時。
「危ない」
朝日が倒れる場所にちょうど居た蓮が朝日を抱き抱える。
「大丈夫?」
完璧なタイミング。
まるでーー
そうなるように決まっていたみたいに。
朝日の顔が赤くなる。
「うん、大丈夫。 ありがとう。」
「気をつけろよ」
蓮が笑う。
僕はその様子を少し離れたところから見ていた。
主人公がヒロインを助ける。
物語なら、よくある場面だ。
廊下ですれ違う人の頭の上には、いろんな役割がある。
先輩に、いじめっ子、色々あるけど、大半は『モブ』である。
そして僕と同じ『通行人』もよく見かける。
そのときだった。
ふと、別の生徒の頭の上が目に入る。
そこに書かれていた言葉は
今まで見たことがないものだった。
『死亡役』
僕は思わず足を止める。
その文字の下で、その生徒は普通に笑っている。
でも、その頭の上には確かに書かれていた。
『死亡役』
僕の背中に、冷たいものが走る。
……それは、どういう意味だ?
まるで。
この人が死ぬことが決まっているみたいじゃないか。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
この物語では「もし人生に役割があったら?」と言う設定で書いています。
通行人Bの凪が、これからどんな選択をしていくのか、自分でも楽しみながら書いています。
よろしければ感想などももらえると嬉しいです。
次回もよろしくお願いします!




