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ブラック企業を辞めて隣の県に逃げた俺、なぜか隣室の眼鏡美人(※正体は推しの引退アイドル)に「ご飯を食べさせて」と捕まる。  作者: 英 慈尊


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ダ◯ソー漫遊記

 安かろう悪かろうという言葉がある。

 そのままずばり、値段が安ければ品質に劣るだろうという意味合いの言葉であり、おおよその場合、真実を突いていた。

 例えば、俺の畑でいくと料理になるわけだが、原材料費に余裕があれば、その分だけ質の高い食材を使って料理のグレードも上げられるからな。


 水が高い所から低い所へ流れるかのような、この世の基本原則。

 しかしながら、時にその(ことわり)を捻じ曲げるのもまた、人の英知であり、努力であると言えるだろう。

 そして、大判焼き派()今川焼き派(カノンたん)が踏み入れたこの場所こそ、まさに、そんな英知と努力が結集して生み出された場所であるのだ。


 その名は――ダ◯ソー!


 見よ! スーパーマーケットの一つや二つは優に開業できるであろう、この広々とした店内を!

 見るがいい! 天井から吊り下げられた商品分類札の、膨大な数を!

 しかも、これらは最安値のラインをキープしつつも、確かな品質であるのだ!

 まさに……質を選べるし、なんでも揃う。


「いやあ〜、いつ来てもテンション上がるなあ」


「えっへへ……テーマパークに来た気分……です!」


 分厚い眼鏡と黒スウェットで変装しているカノンたんと共に、そんなことを言い合う。

 それにしても、だ。


「(ヒソ)案外、カノンたんのこと注目されないもんだね」


「(ヒソ)えと……堂々としてれば、案外バレない……です。

 わたしの場合、活動してる時はウィッグもしてましたし」


「(ヒソ)加えて、あの悪目立ちするジャージやコーデでなければ、なおのことか」


「(ヒソ)それに関しては、二海さんのセンスがおかしいだけです」


 自分のセンスは確かであると強弁するカノンたんを華麗にスルーし、考える。

 今の彼女は、長く伸ばしっぱなしな黒髪のボサボサ感もあって、完全にだらしない黒スウェットのまま買い物へ来た一般女性と化していた。

 目鼻立ちが整い過ぎるくらい整っていることは分厚い眼鏡でも隠せてないが、それでも、今の彼女を見てあのアイドル“カノン”であると見抜くことは、至難の業であろう。


 だからといって油断していいわけではないが、そもそも、このお出かけはカノンたんの息抜きも兼ねている。

 あまり肩肘を張りすぎれば、かえって怪しかろうというのを思えば、ここはリラックスして買い物を楽しむべきであった。


「それじゃあ、早速、食器のコーナーへ行こうか?」


 だから、俺はそう提案したのだが……。

 それに対し、カノンたんはこう答えたのである。


「せ、せっかくですから……一緒に、色々と見てみたいです。

 こんなに、品揃えが豊富なんです……し!」


「ん? そうだね……。

 せっかく、こうして来たんだし」


 周囲を見れば、実に様々な階層、格好の人々が、あまりに豊富な商品棚を物色していた。

 彼ら彼女らの楽しそうな様子を見れば、必要なものだけ購入してさっさとおさらばするのは、いかにも勿体のないことだと思える。


「ようし!

 それじゃあ、せっかくだし色々と見てみるか!」


「おー!」


 だが、あとになって思えば……。

 これはまさに、ダ◯ソーの地獄沼へとはまり込んでいたのであった。




--




 〜その1、カードゲーム編〜


「へー! スッゲー!

 有名なアニメや漫画のグッズが一杯あるじゃん!

 ここだけ、アニメショップみたいな品揃えになってるぜ!」


 棚にズラリと並んだトレーディングカードやシール、アクスタなどを見ながら、感心の声を上げる。

 いやあ、今まで視界に入ったりは当然してたんだろうけどな。

 こうして興味を持ってみてみると、版権キャラグッズの充実ぶりに驚いた。

 しかも、これらはゲーセンのプライズとかでも常に新作が出ているような、超メジャータイトルのグッズなのだ。


「えへへ……葬送のフ◯ーレングッズ……一杯!

 わたし、アクスタとか飾ってみたいと思ってました」


 カノンたんが欲望のまま、いつの間にか手にしていた買い物カゴへグッズを放り込んでいく。

 まあ、自分のお金で買うのだし、好きにすればいい。

 推しキャラのグッズとかを飾っていれば、部屋を散らかさないという意識も働くかもしれないし。


 そんな風に思いつつ、ふと目線をさまよわせて……それに気付く。


「これは……もしかして、オリジナルのトレーディングカードゲームか?

 本格的だなあ」


 そう……このダ◯ソー内でも実際に商品として扱われているアクリルケースへ陳列されていたのは、いかにも小学生受けしそうなキラキラ加工を施されたカードだったのだ。

 見た感じ、昆虫を題材としているようだな。

 ケースの下には、同ゲームのパックがズラリと並べられている。


「おー、やっぱりダ◯ソーオリジナルのゲームだ。

 へぇー、結構流行ってるんだなあ」


 こういう時に便利なのが、スマートフォン。

 検索して出てきた結果を読む。


「最近、こういう界隈が熱いって言うもんなあ」


「あ、熱いのは、テンバイヤーのせいですけど……。

 レアなカードを買い占めて、投機的に市場を荒らしてます……!」


 隣へ来ていたカノンたんが、グッと拳を握り締めながら力説した。

 うんうん、自らも売り場のグッズを買い占めながら語るカノンたんも、可愛いよ。

 ……ていうか、テンバイヤーに関しては俺も他人事じゃないんだよな。『ハニー・パレット(ハニパレ)』のライブチケット、それで高騰したりしてたし。


「それで、こういう需要が生まれるわけか。

 確かに、子供たちからすれば、遊べればなんでもいい感はあるしな。

 しかも、ちゃんとカードとしてのクオリティ高そうだし」


「買い物ついでに、お母さんへおねだりできそう……です!」


 推しと共に、ダ◯ソーの飽くなき商品展開力と、着眼点の鋭さへ感心を深めるのだった。

 そして、せっかくだから、二人揃って遊ぶのに必要なスターターセットやブースターパックを手に取ったのである。




--




 〜その2、プラモデル編〜


「おー、かっけー!

 オリジナルのロボットプラモデルもあるんだなあ」


「しかも、既存の作品とは異なるオリジナリティがあるデザイン……です!

 見た目も売り場も購買層も、棲み分けができて……ます!」


 ただ感心するだけの俺と異なり、人気商売をやってきたプロとしての視点を交えてカノンたんが解説する。

 なるほど、ケース内にディスプレイされた完成品は、ガ◯ダムなどとは確かに異なるデザインラインで――クール。

 しかも、見るからに組み立てが簡単そうで、可動域も広いようだった。


「しかも、ロボットの整備ドックとか、倉庫のコンテナとか、ジオラマグッズも色々と取り揃えてるんだな」


「えへへ……せっかくだから、買っちゃう」


「おー、俺も俺も」


 俺も途中で手にした買い物カゴへ、ポイポイと放り込んでいく。

 何しろ、安いからな!

 値段も気にならないぜ!




--




 〜その3、食品編〜


「ヒャッハー! よりどりみどりのお菓子だー!」


「スナック菓子も、クッキーも、ナッツ系も駄菓子も、菓子パンもカップ麺も、なんでも……ある!」


 これを見て、欲望大解放せずにいられる人間などいようか?

 いや、いない(断言)!

 ハッキリ言って、この品揃えはそんじょそこらのスーパーを上回っている。

 生鮮食品系を扱わない分、こちらに注力して仕入れや陳列を行えるからに違いない。


「乾麺のそばも買い足して……。

 お、韓国系のヌードルも充実してるな」


「えへへ……スーパーではなかなか見ない、変わり種のインスタント食品が一杯」


 カノンたんと一緒に、たくさん購入した!




--




「あー! たくさん買い物した!」


「有意義な買い物……でした!

 連れてきてくれて、ありがとうござい……ます!」


 高揚した気分でペダルを踏み込む俺の隣で、ぐっと拳を握ったカノンたんがやはり興奮気味に答える。

 ああ……本当に、楽しい買い物だった。




--




 そして、本来の目的である食器を買い忘れたことに気付き、この後Uターンした。

 お読み頂きありがとうございます。

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