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アニュスデイ  -ブドウ畑に花が咲く頃にー

作者: gama
掲載日:2026/02/15

  私は、この村が嫌いだ。

毎日、ブドウ畑と家を往復する毎日で、新しい発見やワクワクするような出来事もなく、ただ平凡な日常が繰り返されるだけで、退屈極まりない。

 街さえ出れば、オシャレで流行の服も美味しいパンケーキも洒落たカフェだってある。

素敵な恋や出会いだって、上手くいけば貴族の玉の輿だってあるかもしれない。

職業だって選び放題で、何にだってなれる自由がある。

 それに、毎日がお祭りの様に、退屈しないドキドキとワクワクな日常の時間が、止めどなく流れて行く素晴らしい世界が、待っているですもの。

夢や希望が引き詰められた街を私は歩いて行きたい、此処ではない何処かへ、行ってしまいたい。 

そんな、在りもしない夢物語に,思いをはせていた春の終わりの木漏れ日の中、あの人はやって来たであった。


 「申し訳ございません。

この村に、エルニア・リンダール様というお方がご在宅との事なのですが、ご存じありませんでしょうか」

 背後から聞こえたその声に驚きはあったが、まるで音楽家のような音を奏でるようにして、一語一句話しかけてくる声に、何か心が憂さぶられる思いだった。

白銀の美しい髪は、木漏れ日から抜ける風に揺られ、独特な雰囲気を醸し出していた彼女をより神秘的なモノにしている。

ドレスも流行から乗り遅れた古めかしい差はあるものの、生地がよいのかくたびれた様子もなく、キチンと折り目正しく着こなし彼女に似合っていた。

始めは、こんな場違いな場所に何で彼女のような人がと思たが、よく目を凝らしてみてみると顔は不自然光沢感があり、手は銀色に輝く機械で出来ていた。

違和感のある彼女に畏怖の念を感じ、一歩退き身構える自分がいた。

 「あ、あんた…、な何者なの…」

  

「申し遅れました、私はオルゴール機械人形アニュスデイと申します」

 ドレスの裾を持ち、深々と頭をたれながら

深々とお辞儀する姿勢は、機械らしさの直線的で、あらかじめ決められた動きをまねているだけでしかなく、優雅であるものの内に秘めた人としての心を感じる事はなかった。

 「オルゴール…?、 き、機械人形…?」

「はい、オルゴール機械人形アニュスデイと申します」

「その…、機械人形が、何で私に…?」

「あなた様が、エルニア・リンダール様でしたか」

 「あ…」

 私は、しまったと思い急いで両手で口をふさぎ、慌てた様子でその場を見繕うとする。

 「違う違う、私エルニアなんかじゃない。

そんな人、全然…全然しら…」

 「シリル・バートラン一等兵から、声のお届けに参りました」

 「…え…」

その名前を聞き、私は慌てた様子から一転し落ち着きを取り戻し、その懐かしい名前に驚きを隠せないでいた。

 「シリル…から…」

 「はい、シリル・バートラン一等兵から、エルニア・リンダール様へと伝えたい事があるようです」

思わず身を乗り出し、彼女に近づこうとするが、直ぐに思いとどまり、徐々に錨がこみ上げてきて、唇をかみしめ手を強く握りしめ体を震わせ、

「…帰って…」

 「はい?」

 「帰ってて言ってるのよ!」

 「どう言う事でしょうか?」

 「うるさい!早く帰れ機械人形が!」

 そういいながら、その場から立ち去ろうと足早にその場を後にする。

 今までの感情が爆発したのか、科の自身何も悪くないのだが、怒りをぶつける対象が彼女しかいなかったから、酷いい方に少し自己嫌悪起こしていたが、どうやら彼女にはそんな事は関係無いらしい。

 「何故、立ち去るのですか?」

 「いっ!」

自分の歩調を合わせるように、背後から彼女が付いてくる姿は、ある意味恐怖でもある。

 「何で、付いてくるのよ。

帰れって言ったでしょ!」

 「いいえ、そういう訳には行きません。

シリル・バートラン一等兵からの声を届けるのが、私の使命でありますので」

 「そんな使命、辞めちまえ!」

 「いいえ、そういう訳にはいきません」

 「機械人形の融通聞かず!」

 「はい、機械人形ですから」

 「何なのよもう!」


 「ゼェ…ゼェ…

な、何で此処まで、付いて来ちゃうのよ」

 一定の間隔を開けたまま付いてくる彼女に、ムキになりながら小走りった。

距離が離れる事も知事むこともなく一定の間隔た持つ姿に遂には恐怖を感じ、段々とスピードを上げ、遂には全力疾走で走り続ける事となってしまった。

結局、突き放す事も出来ず、自宅まで付いてきてしまい、息一つ乱れていない彼女を見て、人間じゃない事を実感させられる。 

 「あんたって…、やっぱり…人間じゃないのね」

「はい、オルゴール機械人形ですので」

 「はいはい、機械人形ですものね、融通なんて聞きやしないわよね」

 「それがご理解できましたのでしたら、エルニア・リンダール様、どうかシリル・バートラン一等兵の声を…」

 「それよ、気になっていたのは」

 「はい?」

 「シリルが一等兵って、何であの子が軍人になっているのよ。

街で、元気にやっているんじゃなかったの?」

 「…」

 「何?急にだりこんじゃって」

 「私の口から申し上げた方がよろしいのでしょうか」

 「どういう意味よ」

 「…」

 「はっ、都合が悪くなとだんまりですか。

ほんと、都合よく作られてるわね」

呆れた感じで嫌味を彼女に言い放った後、

扉を開け家の中に入ろうとすると、彼女も入ってこようとする。

 「ちょっとまった」

 「…?」

 「いい、此処は私の家なのわかる?」

こっから先は、許可なく入るのは駄目なの。

だから、此処から先はは入れないのよ」

 「かしこ参りました。

それと、私からも一つ質問してよろしいでしょうか?」

 「なに?」

「何故シリル・バートラン一等兵の名を聞いて、怒ってらっしゃたのですか?」

 「…」

 「あの…」

 「…おいて行ったのよ…」

 「はい?」

 「シリルが悪いのよ!」

 バタン!

何も言わず私は扉を閉め、その場に暫く立ちすくす。

落ち着きを取り戻し、彼女の言葉を噛みしめて、実感した。

シリルは、もうこの世にはいない事を。


 その夜夢を見た。

子供の頃の夢だ。

あの頃は、ブドウ畑がシリルとの恰好の遊び場だった。

鬼ごっこに、かくれんぼ、虫取り、守り木になっている老齢のぶどうの木に登ったりと、毎日が楽しかった。

両親や村の仕事を手伝い、収穫祭の時はブドウ踏みで足がブドウまみれになったり。

大人たちは、出来立てのワインに酔いしれていいて、その酒臭さに逃げまどっていたな。

 何時からなんだろう、この村がつまらなくkン時る様になったのは…。

 

 ~♪

 ガヤガヤ…

 「う、う~ん…

何よ朝から、音楽ならして…」

 外の声と音楽に眠りを妨げられ、布団の中に潜り込んで再び寝ようとしたが、フッと考えたら変な事に気が付き飛び起きた。  

 「え!音楽!」

 窓を開け、外の様子を伺うと、家の前に人だかりが出来ていて、その原因が彼女だった事が判明。

 どうやら彼女の体内から、音楽を兼ね出ているらしく、その物珍しさから、朝から村人が集まり彼女の音楽に聞き惚れていた。

 「何やっているのよ、あの機械人形」

 私は、慌ててベットから飛び降り、着替えと身支度を整えて家の外に飛び出す。

 「ちょっと、家の前で何やっているのよ」

 「エルニア・リンダール様、おはようございます」

 「おはようって…。

一晩中此処にいたの?」

 「はい、さようでございます」

 「は…」

 機械人形なんだから、外に居ても問題はないのであろうが、小さな村で彼女が居たら話題にもなって、人が集まってくるのは想像できた事であった。

軽率な事をした自分に、呆れていると土星代の男性が話しかけて来た。 

 「なぁエルニア、この機械人形、お前の知り合いなんだって?」

 「知り合い⁉

違う違う、全然知らない」

 「え?

だって、この機械人形がエルニアに用事があるって言っていたぞ」

「たくっ…」

 男性と話をしている最中も彼女は、音楽を奏で村人は耳を澄ませながら聞いていた。

少し儚げで寂しさを感じるが、何処か懐かしさを感じさせられるそんな曲。

 パチパチ

 曲が終わると、彼女はドレスの裾を持ち上げ 頭を垂れながら村人にお辞儀をする。

誰ともなく自然と拍手がなり、朝の演奏会は此処で終了し、村人は各々の家路や仕事に出かけ、彼女と2人きりに。

 「満足かしら?」

 「はい。

久しぶりに、本来の機能を生かす事が出来て大変満足しております」

 「それは、良かった事で」

 「はい」

 嫌味も通じない事は分かってはいたが、こうも素直でいると、何か気が抜ける想い出もあった。

 ただ、無機質なはずの彼女の表情は、何処か笑顔にも見え嬉しそうにも感じる。


 「で?何時までいるのよ」

 「エルニア・リンダール様が、シリル・バートラン一等兵の声を聞いてくださるまでです」

 「だから、聞かないって言ってるじゃない」

 「それでは困ります」

 「それじゃ、シリルが何故軍人になったか聞かせてよ」

 「それは先日申した通り、私の喉頭からよりも聞いてくださされば良い事でして。

それでしたら、何故怒っているのか、質問にもお答え願いますでしょうか」

 「ああ、もう、何でそうなるのよ」

 「出ないと、公平では無いと思いまして」

 「あんたと私と、何処が平等なのよ」

 先の進まない押し問答な意味のない会話を続けながら、一定の間隔でついてくる彼女が鬱陶しく思うよになりだしてきた。

憤慨な気持ちでイライラしている精神状態を抑えようとする自分がいた。

 

 しばし無言の時間が続くと、彼女は時折辺りを見渡している姿は、何かを探している感じだった。

今までに無かった、彼女の行動に半ば不思議に思い、思わず声をかけてしまう。

 「ねぇ、何探してるのよ」

 「この、風景を見ているのです」

 「こんな、ブドウ畑しかないのに?」

「はい。

素晴らしいブドウ畑ですね。

青々しく葉が生い茂り、一面のこの姿は生命の息吹を感じ取られます」

 「開花の時期だからね。

この時期が一番成長が早いから、緑が生い茂っているのよ」

 「流石ですね」

 「こ、こんなのは当り前よ。

こんな田舎のブドウ畑を見てたって、何も面白くもないし、ドキドキもワクワクもありゃしないわ」

 「いいえ、この風景は街では見る事は出来ない、此処だけのものです」

 「…え…」

 何も変わらない風景、何もない風景、あたり前の風景があたり前のように流れ、変わることのない時間は退屈なものと思っていた。

 でも、見る人によって、この風景は新鮮なものに映し出されているらしい。

私が、街に憧れているのと同じように。

 しばし時間を忘れ、私はこの風景を彼女と一緒に眺めていた。

 「あんたに、この臭い嗅がせたいわ」

「臭いですか?」

「言ったでしょ、開花の時期だって。

この時期は、ブドウは花を咲かせるの小さい真っ白な花をね。

咲いた花は、ブドウの香りは村全体を包み込むの。

私は、この臭いが一番好き。

シリルもだったわ…」

 「そのようでございますね。

表情に現れております」

 「…あッ」

 感傷に浸ったのか、思わず表情が緩みきってしまった事を指摘され、照れ隠しのつもりで、頬を軽く叩いて引き締めを計りながらも、忘れていた思いがこみ上げてきながら、ブドウの花の香りを堪能した。


 家のドアの前に来ると、彼女は歩みを止め先日言った事を守り外で待機するはずだったが、

「何やってるの、入りなさいよ」

 「よろしいのですか?」

 「外で待たれたんじゃ、また、みんなが集まって来ちゃうじゃない。

だった、中に居てれくれた方がましよ

それに、両親は本宅に居てこっちは一人だから気を使わなくても大丈夫だし」

 「それでは、エルニア・リンダール様のお許しが頂けmしたので、失礼いたします」

 「あと、フルネームで呼ぶのも辞めてくれない。

エルニアでいいから」

 「かしこ参りました、エルニア様」

 「その、様もいらないから」

 「はい、エルニア」

 「よし、私もあなたの事、アニュスデイと呼ぶわね」

 「はい」


食事の支度をしていると、彼女は手伝うと言ったが、大した料理を出すわけでもないし、彼女は食べられないから、丁重に断りを入れた。

対面に座っている彼女を箕ながらの食事は、何やら気恥ずかしいというか、変な感じに思えた。

 話をしていた時は、人間と話している感じではあったが、こうやって改めてみると、服から覗く銀色の機械の部分、透き通るような光沢のある顔、艶やかで美しい白銀の髪。

一つ一つが、精巧に作られている機械人形なんだなと感じた。

けれど、今は初めて会った時のような不自然さや畏怖の念は感じ取られなくなっているようだ。

 

食後、しばしの沈黙の空気が漂う中、私は静かに口を開いた。

 「ねぇ、アニュスデイ」

 「何でしょう」

 「私が、何故シリルの事を怒っているかて、言ってたよね」

 「はい」

 「…綿ね…」

 「…」

 「私、シリルと一緒にこの村を出るつもりだったの。

何もない、退屈な日常を抜け出して一緒に街に出ようと…。

そう、誓ったの…。

でも、あの子は待っていてはくれなった。

街に出て、大人になったら一緒に飲もうと言っていたワインも一緒に、シリルは逝ってしまった…。

悔しかった、悲しかった、あんなに一緒にてい居たのに、親友だと思っていた、大切な人と思っていた。

裏切られたのよ私…」

「だから、シリル・バートラン一等兵の声を聞きたくないと」

 「そうよ…」

 「そうでしたか…。

でしたら、なおの事シリル・バートラン一等兵の声を聞くべきなのではないのでしょうか」

 「どういう事…」

 「私には判断を付ける事は出来ません。

ただ、もし今の気持ちが本当なら聞くべきなのかもしれません」

 「い、言っている意味わかんない」

 「エルニアは、もう分かっていいるのでは内出ようか」

 「だから、なんなのよ」

 「私から申せる事は、以上になります」

 深々と頭を下げるアニュスデイを見て、私は自分の心の中を覗かれているのではないかと疑心暗鬼に捕らわれ、それを逆恨みするかのように彼女に罵声を浴びせてしまう。

 「やっぱり機械人形ね。

人の気持ちなんて、これっぽちもわかりやしない。

ほんの少しでも、あなたを信頼した私が馬鹿だったわ」

 そう吐き捨てると、自室に閉じこもり、布団の中にはいるが、彼女の言葉が頭から張られず、なかなか寝付けないでいた。

自分はどうすればいいのだろう…、

シリルの声を聞かないまま、この先後悔してしまうのだろうか。

でも、聞いたら自分が自分でいられるだろうか、アニュスデイは私をどう見るんだろうか。何をどう伝えればいのだろうか…。

考えがまとまらないまま、夜が更けてい行く。


 朝、布団の中で丸くなっていると何やら、良い臭いが部屋のカに漂って来て、その臭いにつられ部屋から出てくると、アニュスデイが朝食の準備をしていた。

 「何やってるのよ」

 「おはようございます、エルニア

今、朝食の準備をしている所でございます」

 「へぇ、食事作れたんだ」

 「得意ではありませんが、戦場では私がみなさんの食事登板をしておりましたので、多少の心得はございます」

 「そっか…、あんたも戦場にいたんだね」

 「はい」

 考えて見れば、シリルと一緒なのだから戦場にいたのは当たり前か。

でも何で、アニュスデイのような機械人形が戦場に?

まぁ、そんな事は私には知ったことではないので、余計な詮索はせず今は要してくれた食事を取るとしよう。

 「昨日は…ごめん」

 「何がでしょう?」

 「あんな酷い事言って…」

 「お気になさらずに。

 本当の事を言ったまでですので」

 「くッ…、ほんともうちょっと言い方があるじゃない。

まぁ…いいわ、食事にしましょ」


 ブドウ畑から少し離れた小高い丘に、一本の老木が立っていた。

其処に、私はアニュスデイを招き入れたの出る。

 「この木は、ブドウの木でしょうか」

 「そうよ、流石ね。

このブドウの木は樹齢200年のいわばこの村の守り木みたいなものよ。

毎年この付近で、収穫祭をやるのが習わしなの」

 「さようでございますか」

 「…それと、私とシリルの憩いの場所でもあるの…。

2人で本を読んだり、たわいのない話をしたり、木登りしたり…。

想い出の木なの…」

 「それでは…」

 「聞かせて、シリルの声を。

どんな事になっても後悔はしたくないの」

 「分かりました。

それでは、これからシリル・バートラン一等兵の声をエルニアにお届けいたします」

 彼女は木の幹を背に小塩おろし、私もそれを聞く為、彼女の前に腰を下ろす。

 キチキチ…キチ…

 かすかに聞こえる歯車音が暫く聞こえたかと思うと、アニュスデイの体内のスピーカーから、雑音と主にシリルの声が聞こえは始めた。


 ザ…ザザー…


 久しぶりエルニア。

私ね今、戦場にいるの…。



 もすぐ、私達の部隊は特別任務を酢こうしなければいなか卯なっちゃって、多分もう会うことも出来なくなっちゃうかもしれないから、アニュスデイに頼んで、声だけでも届けてもらおうと思って、今録音しています。

 …私…、待ってた…、あの守り木の前でずっとエルニアを待っていたの…。

でも、あなたは来なかった…。

だから、私は1人で街に行ったの。

 街は、本当に素晴らしいものだわ。

教会よりも高い建物がいっぱい立ち並び、お祭り化のように、何時でも多くの人で賑わいを見せ活気があり、見たことのない物や人の代わりに機械人形が働いているのよ。

それに、素敵なカフェやオシャレなドレスもあったわ。

私達が夢見た世界がそこにあったの。

あったの…。

あったのよ…目の前に…。

 でも…でも…、届かなった…。

届かなかったの…。

街に行けば何とかなると思ったけど、現実は違っていた。

働くにしても紹介状が必要で、技術も必要だった。

手に何も無い私には、働けるる場所なんて殆どなかった。

オシャレなカフェにも、会社でのタイピングも、商店での売り子にも、ゴミ拾いでさえ、私の場所は無かった…。

 …何でこんな事になっちゃんだろうな…。

このまま村に帰ればよかったのに、それは出来なかった…。

何より、エルニアを失望させたくなった。

夢を頂いていたままで、いて欲しかった。

変わらないエルニアで、いて欲しいと思った。

だから、街に残った…。

 どんな小さな事でも必死に働いたわ。

働いて働いて、働いたけど、お金は全然足らななかった。

食べるものも満足に食べられなかった。

もがき苦しんで、駄目かなと思った時、軍拡によるへ員募集を見たの。

必死だった。た

だ生きたいと思って、軍に入隊したの…。

苦しくつら買ったけど、それでも街にいるよりはましと思い、食らいついていったわ。

…そして、今の部隊に配属されたわけなの。

 …エルニア、あなたの選択は間違っていなかったわ。

変わる事は素晴らしいのかもしれない、でも変わらない事でも素晴らしい事はあるのよ。

青く澄んだ空、緑に茂ったブドウ畑、ブドウの花の香、実ったブドウで作ったワイン…。

同じ毎日が繰り返されるだけかもしれない、退屈な日常かもしれない、ワクワクもドキドキも無いのかもしれない。

でも、其処にはかけがえのない自然豊かな風景と自慢のワイン畑があるんですから。

それだけでも、この村は何処にも負けないと胸を張って言えるわ。

エルニアには、そんなブドウ畑を守り続けてほしい。

 あ、そういえば、大人になったら一章に飲もうと言ってたワイン、部隊の人達と今から飲むことにしたの。

本当は、エルニアと一緒に飲みたかったんだけどな…

 これで、私の言葉はお終い。

これからも元気でいてね、私の大切な友達。

何時までも変わらずにいて…

 ザザ…

  

 「以上でございます」

 「…ええ、そうよ…そうなのよ。

私は夢を見ているだけで、変わる事が怖かった。

街に行きたいと口には出していても、街に行く勇気はなかった。

だから、私は逃げたのよ!

だけど、それを認めてしまうと、自分が自分でいられなくなりそうで…」

 「それで、シリル・バートラン一等兵に」

 「そうよ!

シリルの責任にすれば私は私でいられると思っていた…。

だけど…だけど…」

 アニュスデイは、私の身体をそっと抱き寄せ、優しく撫でまわした。

私は、思わず涙がこぼれ大泣きをしてしまう。

 「私が、シリルを誘わなければ。

私が、夢を見たりしなければ。

私が、私が、シリルを殺したんだ!」

 「誰も悪い分けではありません、誰も殺してはいません。

ほんの少し思いがずれてしまった、ただ、それだけでございます」

 私は泣き続けた。

ブドウの花の臭いが包まれた、二人の想い出の場所で私は泣き続けた。

 


「ねぇ、この村を出て街に行かないかしら」

 「また、エルニアが始まった」 

 「今度は本気よシリル。

だから、一緒に行きましょ!」

 「街に行って何なるつもり?」 

 「街で働いてお金を貯めて、一旗を上げて、この村に錦を飾るの。

素敵だと思わない?」

 「何か漠然としていないかしら」

 「大丈夫、2人でなら何だって出来たじゃない!」

「本当に…本気なの?

私と一緒でいいの?」

「当り前じゃない。

あなたじゃないとダメなのよ。

私達は、街に行って新しく生まれ変わるのよ!

さらば、平凡な日常!

こんにちは、自由とワクワクの達!」

「たくぅ、仕方ないわね。

こうなった以上、あなたにとことん付いて行くわよ」

 そういいながら笑顔を見せているシリルに、エルニアも笑顔を見せ手を差し伸べ、シリルはその手を取ろうとした.

 

 「じゃ、ブドウ畑の花が咲く頃になったら、守り木の前で…」

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