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9口目 街へ行こう


「一緒に教会へ行きませんか?」


マンドラゴラのジャム薬の量産を頼まれ早数日、鍋をぐつぐつ煮ているとノルンさんに声をかけられた。


「教会?」


「先日の改良した薬の被験をしてもらおうと思いまして、君のおかげでできたものですから…一緒に行くべきかなと思いまして」


「教会に卸してる薬だったんですね」


ゲームでの教会といえば聖属性魔法のスキル強化とかができる場所だったっけ?


マジホリの世界ではプレイヤー自身で魔法の強度を上げることができるが、聖属性だけは例外で教会で神聖な儀式をしないとできない仕様だ

使ったことはないけれど私も聖属性を持っているっぽいし…行ってみるのもいいのかも?


「教会に併設されている孤児院の子供に被験してもらうことが多いんです、子供の被験体はそういった場所でしかなってくれる方がいないんです」


孤児院はゲームのストーリー上で少しだけ描写があった

確か、キャラクターの一人が孤児院出身で…ええと……うーん……誰だっけ?

クリスティーナさん以外はあまり攻略してなかったからなぁ……


「…教会に少し興味あります、邪魔じゃなければ行ってみたいです!」


キャラクターがこの時代に孤児院にいる年齢かも分からないし、せっかくだしゲームの聖地巡礼だと思って行ってみよう!


「分かりました、外出用の服は僕が用意したものを着てもらうことになりますが…構いませんか?」


「あはは、今更着てるこれもノルンさんが用意してくれたものですし、なんでも大丈夫ですよ」


私が着ている服は帽子から靴までノルンさんが用意してくれたものだ

この間はエプロンに三角巾、マスクのような顔掛けも作ってくれた。どれもシンプルなデザインだがとても触り心地の良い生地に綺麗な刺繍が入っていたりでオシャレだ


「……では今日はあと数瓶ほどお願いします、出発は明日です」


「はい!楽しみです」


本当にゲームのキャラクターがいたとしても、私は主人公じゃないし関わったとしても問題ない……よね?






 

「……こ、これを、着るんですか…?」


朝、渡されたのは真っ白な服だった

広げるとフリルとリボンが付いていて、やけに布がふわふわと広がっている……

なんというか、ウエディングドレスみたいだ……


「上からこれを羽織ってもらうので、顔は隠れてしまいますけど」


そう言ったノルンさんは更に真っ白なローブを差し出してきた


「あれ、これって前にノルンさんが着ていたローブと同じものですか?」


「はい、君に合わせた大きさのものを別に用意しました」


うわあ、綺麗な刺繍が入ってる……

触り心地の良い生地も分厚いはずなのに持っても重みを感じない、不思議だ


「綺麗な刺繍ですね!わざわざありがとうございます、着替えてきます!」





「う、うーん…?ここが…こうなってて…?」


自室で着替えを始めてから早数分、私は最初の段階で躓いていた


この服……どうやって着たら良いのか分からない!!!


私は仕方なくノルンさんに助けを求めることにした


「ノルンさん…」


「…?どうしたんですか?服は…」


「えっと…その……着方が分からなくて……」


そう言うと、ノルンさんは真顔で固まってしまった


どうしよう……なんて物知らずな子供なんだとか思われたのかな…!?でも正直服には興味が無かったし、こんなドレスみたいな服は着たことがないし……


「君は……いえ、そうですね、では教えるのでこちらに来て下さい」


その後、ノルンさんの元で服の着方を丁寧に教えてもらった。今度、一般的なドレスなどの着方を改めて教えてくれるらしい




「ふー……よし!ノルンさん!着れました!」


鏡で確認した後ノルンさんの前でくるくる回ってみせた

自分で言うのもあれだが今の私は金髪碧眼の超絶美少女な訳で、さすがに鏡でこの自分を見たときは真っ白な服のおかげで天使かと思った。


ノルンさんは私を上から下までしっかり見た後、私の頭にぽんと軽く手を置いた


「………はい、言った通りに着れていますね」


うわあ、なにこの図。乙女ゲーのスチル?


さすがに2ヶ月くらい一緒にいるのでノルンさんの美形っぷりにも慣れてきているが頭ぽんぽんには流石にときめいてしまった


「では、行きましょうか」


「はい!」


ノルンさんの見様見真似でローブを羽織る

羽織った瞬間、刺繍がほんのり光ったような気がした


「…?」


ノルンさんがドアを開けたので慌てて付いていく。

私が出たことを確認するとノルンさんはドアに手を当て何かをつぶやいた。ガチャンと鍵が閉まる音がした


洗濯の時に外に庭から外には出るが、ドアから出入りしたのは初めてでなんだかソワソワする


「ここは森の奥地なので、街の近くまでは彼らに運んで貰います」


「彼ら?」


ノルンさんの周りにぽわっと淡い光の粒が現れたと思うと次の瞬間馬のような形に変化した


「どうぞ」


ノルンさんは手を差し出してきたが頭が追いつかない


「えっ…!?な、なんですかこれ…この子?は!?」


魔法の類はもう驚かないと思っていたけれど、こんなのゲームでも見たことがない


ゆらゆらとした光があまりにも綺麗で、まるで夢を見ているみたいだ


「彼らはこの森の精霊です、街までは距離があるのでいつも運んで貰っています」


「せ、精霊……妖精のようなものですか?」


「妖精が進化すると精霊になるので、妖精より上位種族ですね。森に悪意を向けない限り温厚なので大丈夫ですよ」


ゲームでは妖精使いのキャラがいた。しかし妖精は非常に珍しく、使役どころか出会うことすらほとんどない……って言ってた気が……

その上位種族が集まってきて馬になって街まで運んでくれるって……………

………………うん、もう考えるのはよそう

ノルンさんってやっぱり規格外なんだなぁ、まあ、皇族らしいし……ゲームの主人公も充分チートだったけど、その基準ですら考える器じゃないのかもしれない…


私は考えることを放棄してノルンさんの手を取った


おそるおそる精霊の馬に近づくとぬっと顔をこちらに向けてきた


「…………」


「あっ、の、乗っても良いですか…?お馬さん…」


「…………」


精霊の馬はブルルンと鳴くと前を向いてしまった

良いってことかな?



なんとか乗馬し私の後ろにノルンさんが座った


なんだか昔お父さんと乗馬したのを思い出すなぁ


ノルンさんが馬を人撫ですると馬は軽やかに走り出し空を飛んだ

そう、空を飛んだのだ


「……っ!?の、の、のノルンさん!?飛ぶんですかこの子!?」


「っふふ、風の精霊なので飛びますよ」


頭の上からノルンさんがくすくすと笑うのが聞こえてくる

馬はどんどん上昇していき初めて見る上空からの景色に驚く


「綺麗……」


普通の森じゃないと思っていたけど、想像以上だった

あちこちできらきらしている光を目を凝らして見ると精霊と同じ光だった


「今日は馬の気分で良かったです、昼には着きそうですね」


「馬じゃない時があるんですか?」


「精霊はとても気まぐれなんです、この間は羊の気分だったみたいで、結構時間がかかったんですよ」


精霊の馬がブルルンと鳴いた


「あはは、そう言わないで下さい」


「ノルンさんって精霊とお話できるんですか?」


「え?ああ…話という程では、なんとなくです。君もこれから接していれば、そのうち彼らが何を伝えたいか感じれるようになりますよ」


ノルンさんの顔は見えなかったけれど、嬉しそうに喋っていてなんだか嬉しくなった


「そうでした、着くまで君に教会の事を説明します」




ノルンさんの話によると、ノルンさんは薬を売る際『皇族の召使い』と名乗っているらしい。皇族を名乗ると面倒になるからだそうだ

そして教会では2人の神が信仰されており、その神は皇族の祖先でその子孫がノルンさんという訳だ。

そのノルンさんが作った薬を持ってくる召使いなので『御使い様』と呼ばれているらしい…


「君は、召使い見習いという体で赴いてもらうことになります」


「分かりました!何か気を付けることはありますか?」


「……そうですね、僕と君の素性は明かさないようにお願いします。場所が場所なので…信仰に傷が付くのは避けたいんです」


信仰に傷……神聖な皇族がどこの馬の骨とも知らない女児を引き連れているのは確かに良くない

……いや本当、なんでノルンさんはここまで私にしてくれるんだろう





「見えてきましたよ」


「わぁ…!!!大きな街ですね!」



しばらく森の上空を駆けていると遠くに街が見えてきた。

街並みの中で2つの白い大きな建造物が目立っている


「あの白い建物…」


「中央の高い方が王城で、もうひとつは王立学園です」


「あれが………」


王城……は正直ピンと来ないが、学園は見覚えがあった。

ゲームの、マジホリの舞台である学園でもある……


「サクラーレ学園…」


「おや、知っているのですね」


「えっ!?あ、はは……えっと、憧れてて…」


正確には『学園にいるクリスティーナさんを』だけど!


「へえ、君は魔法も得意そうですし良いと思いますよ、まだ先のことですが」


「いやいや…私、自分の家柄も分からないような状態ですし……書類の時点で落とされるんじゃないですか?」

 

「君が入りたいなら僕が手伝いますよ、僕の力があればそれくらい朝飯前です」


「……あはは!ノルンさんがいるなら心強いですね」


「……朝飯前といえば、少し小腹が空きましたね」


「ふっふっふ……」


「なんですかその笑い方」


「実はこんなこともあろうかと、新しく作ったお菓子を持ってきました」


私は袖にしまっていた亜空間に繋がる袋を取り出した

本当はノルンさん用じゃなくて私がお腹空いたとき用だったけれど……


「マンドラゴラのジャムを入れたマドレーヌです、今食べますか?」


「ありがとうございます。…………うん、とても美味しいですね」


私も1つ取り出して食べ始めた。うん、ジャムを入れて正解だった。チョコレートとかがあればもっと幅が広がりそうだけど……私が食べたいだけでお願いするのはなぁ…


「美味しかったです、君の料理は店を出せるくらいの腕前ですね」


「え、えへへ……そうですか?」


「いっそのこと、僕が今作っている薬を全て君に改良してもらって卸すのも良いんじゃないかと思うんですよね」


「え〜?そ、そうですぁ…?えへへ……」


マドレーヌが大層気に入ったのか、その後もノルンさんによる褒め殺しは続いた




「ありがとう、帰りもお願いします」


ブルルンと精霊の馬が鳴いた

私も手を振って見送ろうとすると馬がこちらに近づいてきた


「ん?どうし……うひゃっ!」


馬が腰に頭を擦り付けてきた


「あ、これ?」


ブルルンと返事が返ってきた。どうやらマドレーヌが食べたかったらしい

結構作ってきたけど、あの後ノルンさんめちゃくちゃ食べたから……えーと、あと…3個しかないじゃん!

美味しすぎるお菓子を作ってしまった私の腕め……


「はい、どうぞ」


マドレーヌを2個渡すと精霊は馬の形から光の粒に戻り、宙に浮かせたマドレーヌと共に森の奥へと消えていった


3個あげてもよかったけど、最後の1個は私の非常食だから……!


「では行きましょうか、はぐれないように付いてきて下さい」


「はい!」





森のすぐ外なので街と言っても田舎かと思っていたらかなり発展している所だった。いかにも西洋ファンタジーっぽい街並みにワクワクしてしまう


「…!うわあ…!」


露店が目に入った。杖が沢山並んでいる

包丁くらいのものから私と同じくらいの大きさのものまで、ぐるぐるしている枝や大きな宝石が付いた杖に思わず見惚れた


うわぁ……私が中学生だったら絶対に買ってたよぉ………はあ、ファンタジーな世界って最高……


杖を見ていると肩にぽんと手を置かれた

驚いて手の主を見ると真顔のノルンさんがいた


「はぐれないように、と言ったでしょう」


「あ、う……ごめんなさい……」


は、恥ずかしい……子供みたいなはしゃぎ方をしてしまった…


するとノルンさんは私の手を掴んできた


「散策は帰りにしましょう、まずは教会です」


「はい…………あの、この手は?」


「迷子防止です」


こんなの、本当に子供みたいじゃん!

でも正直悪い気はしないので繋がれたままにしておくことにした。






「ここが、教会……」


手前に教会があり奥にある別棟が孤児院らしい


入り口に近づくと何人かの大人が膝を付いていた

黒と白の礼服……教会の人かな?


「司祭と少しお話をして受け渡しをしたら終わりです、君は僕の後ろに付いていて下さい」


長くなったので中途半端だけど次回へ

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