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7口目 ノルンの提案


「話があります」


朝食後、真顔のノルンさんに言われた私は血の気が引いた


ついに…追い出される……!?



「わ、私、どこか気に障ることしましたか?いや居候自体が邪魔でしたよね……で、でも私」


「あ、いえ、そのことではなく。君に頼みたい事があります。無理にとは言いませんが……ただ家事だけしているのも良くないと思いまして……」


ノルンさんはスッと手を机に出すと何かを置いた


「これは……?」


「少し舐めてみてください」


「?はい………うぇっ!?」


舐めた瞬間苦味が強すぎて全身がギュッとなった、反射で涙が出てくる


「これは僕が生産している薬の1つで、飲むと怪我が治ります。君は覚えていないと思いますが、僕が君を最初に発見した時に飲んで貰ったものです」


黒くて丸い……玉?大きめの黒糖飴みたい


「君に手伝って欲しいのは、僕の薬を服用しやすいように作って欲しいんです。僕の薬は効能は良いんですが、服用しずらいのが難点でして……君、料理が好きそうですし、味の改良などできませんか?」


なんとか苦味を消そうと水を飲んだがこびりついて気持ち悪い、確かにこれを飲むのはかなり大変だ


「……料理は好きですけど、薬の知識なんてないですよ?それに……私みたいな一般人が手伝って良いものなんですか?」


ノルンさんは自分で言わないが、とてもすごい人なのはわかる。

森で意識を失った時、たくさん骨が折れていたはずなのに私は1ヶ月も経たないうちに歩けるようになっていたのが証拠だ。

いつも薬か何かの研究をしているし……


「僕がちゃんと確認するので大丈夫です」


家事だけやっているだけでも充分だけど、家主に言われたら断るわけにはいかない、かなあ…

ノルンさんにご飯を食べてもらえるだけで嬉しいけど、もっとできることがあるならやってもいいよね!


「…分かりました。素人ですけど、精一杯頑張ります!」


「ありがとう。じゃあまずは……」


ノルンさんが指を鳴らすと机の上に大量の紙束が現れた


「うぇ!?な、なんですかこれ!?」


「僕が作る薬のレシピです。僕は全部覚えていますけど、今後君に任せる時に無いと不便だと思いまして、書き起こしました」


「か、書き起こ……」


いやいや、一体どんな数を任せようとしてるの!?私が机に立ち乗りしても届かない高さまで積み上がってるけど!?

ていうか……


「今のって魔法…ですか?」


なにもないところから急に紙束が出てきたよね!?


「ん?ああ、空属性魔法を見るのは初めてですか?レシピは関係者以外に見られるわけには行かないので亜空間に保管していました」


…………やっぱりファンタジーな世界なんだ…

私がオタクじゃなかったら今の話でこの人生挫けている気がするよ……何…亜空間って……


「く、空属性なんて初めて見ました!珍しいんですか?」


「……そうですね、適性がある者は沢山いますが扱うのが難しい属性ですから」


ゲームでも空属性魔法を扱うキャラは少なくさらに消費MPが高かった

プレイ時は気にしていなかったけれど難しい魔法だったんだなぁ


「……君は魔法に興味がありますか?」


「へ?」


あるか無いかで言われたらそりゃあるけれど、下手にゲームの知識がある分ボロが出そうで怖い!


「の、ノルンさんの役に立つ魔法があるなら、使えるようになってみたいかも…な、なんて……」


「………………」


「……ノルンさん?」


「……なら、薬の改良と並行して空いている時間に魔法を教えます」


……なんか、ノルンさんの耳が赤い

顔を背けられてしまったけど長い耳までは隠せてない


「ありがとうございます。薬の改良はいつから手伝えば良いですか?」


「今からです」







「うっ……おえっ……ぐ……っ」


「手を止めないでください、失敗しますよ」


「は、いぃ……うぐぅ………」



私はノルンさんの指示のもと鍋を煮ていた

紫とも緑とも黒とも言えないようなドロドロがぶくぶくと……これが本物の『闇鍋』…?

吐き気を催すような酷い甘い匂いが部屋に立ち込めて、脳と胃を揺さぶれている気分だ……


「……はい、止まって。そのままさっき切ったマンドラゴラを入れて下さい」


「はぃ……」







「初めてにしては上出来だと思います。」


「そ、そうですか……」


出来上がったのはドロドロしたヘドロのような薬で、滋養強壮に良く軽い風邪ならこれを飲めばすぐ治るらしい。

ノルンさんは小皿に乗せると私の前にスプーンと共に差し出した


「ではどうぞ」


た、食べるの!?まあ味の改良するならどんな味か知らないとだけどさぁ…!


「確認なんですけど、これって人間が飲んでも大丈夫なやつですか…?なんか、マンドラゴラの鳴き声みたいなのが……」


粗切りにされ煮込まれたこのマンドラゴラという名の植物は収穫の際に絶叫を上げ収穫したものの鼓膜を破壊する。ノルンさんが持ってきたものは最初から切られたものだったが……


「一応卸しているものなので、大丈夫ですよ」


一応!?一応って言った今!?

実の模様が顔に見えて喋っている気がするけど…!?


「うっ…い、いただきます……」


目を瞑って掬ったスプーンを口に入れた


「んぐ……」


「元々飲ませる予定だったものなのでそのお皿分は食べてください」


ま、不味い……けど、思ってたよりでは無かった。

病院で出される子供用の薬シロップを更にくどい味にしたような……

でも、風邪レベルでこれを処方されるのはキツイ……


「……君は結構忍耐強いですね、大人でもしかめっ面をして飲むものなんですよ」


「いやあ……すごく嫌ですけど、前にノルンさんに飲まされた小瓶の薬が衝撃すぎて感覚が麻痺したというか…」


ドロドロした酷い甘さの中にマンドラゴラのシャクシャクした食感が気持ち悪い……

でも、この感じ……似た物を食べたことあるような……


「君は今使った材料と工程を元に、同じ効能を持つ服用しやすいよう改良して欲しいんです。同じ効力がある材料ならをそれを代用しても構わないです」


うーん、どこで食べたんだっけ…?


「うぅん……」


「…やはり難しいでしょうか?」


「………………」


「無理にとは言いませんし、気が向いた時でも……」


「あっ!思い出した!」


「…え?」


そうだ、あれは私が小学生だった時

おばあちゃんの家に遊びに行って、家庭菜園で採れた茄子を使って料理してくれた……私が茄子苦手だから食べやすいようにって……

おばあちゃんの作る料理はどれも強烈だった。

目玉焼きを作れば真っ黒になっているのに半熟で美味しくて、カレーを作れば甘くしすぎるのに不思議とご飯が進んだ

そして…1番強烈だったのは…


「私、これをもっと美味しくできそうです!ちょっと地下室見てきて良いですか!?」


私は皿に乗った分をかきこみエプロンを付けた


「か、構わないけれど……」


「もうすぐお昼ですし、同時にお昼ご飯も作っちゃいますね!」


私は台所へ小走りで向かい地下室へと降りた


早く!早く作りたい!きっとあれができるはず!



「………僕が2年かけて作った薬の代用を、あんな一瞬で……?」


補足.この世界に存在する食材は現実世界のもの+ゲーム世界に存在したものです

依吹の言う"代用出来る"はマーガリンをバターで代用できる、くらいの感覚(あくまで別物)

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