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1口目 知らない自分


 私の名前は好本 依吹(こうもと いぶき)

21歳。趣味はアニメ鑑賞とお菓子作り、というありふれた日本在住の一般女性だ。


……正しくは『だった』なんだけど。


生まれてから一度も染めたことの無い黒髪、お菓子の食べ過ぎでぽよぽよしていた手足はどこへやら、気がついた時には髪は眩しいほどの金髪、手足は真っ白で細く短くなっていた。


周りは森、柔らかい木漏れ日が足元に落ちていた。


……一体何でこんな状況に!?




遡ること少し前、私はバイト先に向かうべくバスに乗っていた。

仕事を辞めてから早数カ月、バイトも長く続かず転々とし貯金も溜まらず……よくいるフリーターだ。



―まもなく□□前……□□前……―


いつものバス停が見え、足に乗せたリュックを持ち直す。

バスが停車しかけた時、どこからか声が聞こえた。後ろの席からだ。

振り返ると同時に、背中に大きな衝撃が来た。

ガラスの割れる大きな音がした後、何も聞こえなくなった。


最後に一瞬見えたのは、リュックにしまっていたカタログだった。

もうすぐ母の日だから、お墓参りのついでに何か買おうと思って い た……  ……


……………

………………………

………………………………………………………。




う〜ん、どういう状況?

自分が誰なのかは分かる、意識も一応?はっきりしているし…髪色と体型が変わっていることに目を瞑れば体も問題ないし…?


……いや!?やっぱり髪も体もおかしいよね!?


それに最後の記憶、バスで大きな音がした後私はどうしたんだっけ?


「うーん……うん!?へ!?な、なにこれ!?」


唸って悩めば何か出るかと思ったら、自分の口から出たのは自分の声ではなかった。

くぐもったような声しか出なかった口から、『幼女』のような声が出た。

私の声はもっと低かったはず……特徴のある声では無いけど、自分の声くらい分かる。


「あ、あー……あいうえお。うーん、なんていうか……」


この声を表現するならば……そう、『ロリ声』だ。

……いやいや、私ももう20歳だ、そんな声が出るわけがない。

この年になって声変わり?いやそんなものじゃない、明らかに前より高くなっているしなんだか滑舌も良くなっている気がする。


「ふう、落ち着いて依吹。不安だと思うことは大体実現しないって誰かが言ってたじゃない。……よし、冷静にいこう」


仮説を立ててみた。


私は夢を見ている。

こんな意味が分からない状況、夢だったらなんでもないことだ。

それに最後の記憶を当てにするならば、きっと何か異常事態……事故が起こったはずだ。

もし私が入院中で、意識が朦朧としてこういう夢を見ているなら不思議なことじゃない。


……まあ、足(裸足)から感じる芝生の感触がやけにリアルなんだけど…。

ちなみに、頬を抓ったら痛かった。


そしてもう一つ……誰かと入れ替わった

馬鹿げているとは思うが、この体は私の体とは違いすぎるのだ。目が覚めたら体が縮んでしまっていたどころか髪も声も覚えがないのはいくらなんでもおかしい、うっかりどこかの女の子と入れ替わったとしか考えられないくらいに。


……こんな異常事態だけど、自分がオタクで良かったかもなぁ。こういう事態は二次元作品て見慣れたもんよ!


異世界転生モノのアニメや漫画が大好きなオタクとしては、もしそうならこの状況は夢にまで見た瞬間だが……



「…っへくしょい!」


ひんやりとした風が流れてきた。

とりあえず衣服をどうにかしなければ。

私が着ていたのは白い布に穴を開けただけのような服とも呼べない布だった。

布1枚だけは心許なさすぎる……あれ、まって私下着も履いてなくない!?


「……落ち着いて、しなきゃいけないことを口に出してまとめよう。ええと、とりあえず今必要なのは、服と靴と……」


―キュルルルル………―


「……あとご飯」


当ては無いがなんとかするしか無い。

私は見慣れない森へ足を踏み入れた。

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