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1話

秒で改稿しました(涙)

妹の見た目書いてないじゃん!!1!ってなって再度改稿しました。

 装甲車が通学路を塞いでいる――そんな風景も、もはや日常だ。

 グレーに塗装された重装輪車両。サイドに刻まれた“国防軍・第六方面混成防衛群”のマーキング。

 機銃の代わりに、コイルランチャーが睨みつけるように車体前方へと伸びている。

「うわ、マジで“本物”じゃん。あれ、実戦配備されたばかりらしいぞ! 生で見れるなんて……ミリオタに嫉妬されるだろうな~」

 横を歩く男子学生がはしゃぐように指差す。

 ユウは手を振るでもなく、ただ一瞥して歩き続けた。


 ここは北海道の中部都市。元は温泉とスキーで知られた静かな地方だった。

 だが今は、“前線の背中”──異世界との融合地点からわずか百数十キロ圏内。

 つまり、いつ魔物が現れてもおかしくない土地だった。

 そのせいか、通学路には監視ドローンが低空を滑って飛んでいるし、交差点には二重の検問と、実銃を持った警備員の姿。

「これさあ、慣れちゃうと逆に怖くない? “戦争の中で生活してる”ってことに気づかなくなるっつーか」

「慣れるしかないだろ」

 ユウはぼそっと呟いた。

 隣の友人は「真面目か」と笑ったが、それ以上は何も言わなかった。


 登校途中の小学生が、ランドセルの脇に民間防御用の「魔導警棒」を差しているのが見える。

 それは――自分の妹も同じだ。

(そういえば……)

 ユウは、いつもは腰の右側あたりにある重みを感じないのに気が付いた。

(抜き打ち検査でもなければいいが、護身装備忘れると本気で怒られるからな)

「おにいちゃーん!」

 遠くから叫ぶ声が聞こえる。

 そのすぐ後、カランと小さな音がして、歩道橋の上から少女が飛び降りるように現れた。

「お兄ちゃん! これ、忘れてたよ」

 神名美月――ユウの妹で、中等部の制服に身を包んだ少女。

 襟足で結ばれた跳ね気味のツインテールが揺れ、光に透けた茶色の髪が赤みを帯びて見える。

 彼女は無邪気に笑いながら、警棒をユウに突き出した。

「昨日メンテしてたでしょ? また置いていったの見てたから、持ってきてあげたの」

「……ああ、ありがと。忘れてた」

「うふふっ、やっぱり私のほうがしっかりしてるよね」

 彼女は得意げに笑って、自分の腰にも同じものを装備して見せる。

 薄紫色の円筒状の器具、それが今の民間人に許可されている魔導装備の最軽量モデルだった。

 力の弱い子供や女性でも、正しく使えばゴブリン程度になら対抗できるというキャッチコピーだ。

「今朝のニュース見た? “短剣所持テスト”の合格率、また下がったんだって」

「民間訓練受けてない人にまで配り始めたからだろ」

「うーん、それもあるけど……私ももうちょっと上位モデル欲しいなぁ。あれじゃ“デスワーム級”には対応できないでしょ?」

「軍隊か、異世界の勇者様レベルじゃないとそもそも無理だろ……」

 デスワーム。あの名を日常の会話に織り交ぜられるあたり、美月も変わったのだと思う。

 かつては病弱で、外に出ることすら難しかった彼女が――。

「あ、でもなんか出てきたらお兄ちゃん盾にするから、よろ~」

 本当にたくましくなった。その成長が怖いほどに。


 そんなことを考えつつ、ユウは歩きながら、街の空を見上げた。

 青空は広がっている。

 だがその端、北の空の一点だけが、まるで“色を塗り忘れた”ように、滲んでいた。

 それを見慣れてしまった自分が、少し嫌になる。

 タイミングよく、遠くで、防災無線のようなアナウンスが流れてた。

「……異常気象ではありません。安全です。情報拡散はお控えください」

 それは昨日も聞いた。先週も。先月も。

 そこが“融合地点”に近い領域だった。

 空気は現実と異世界の混じったものに書き換わり、雲すらも異形の曲線を描いている。

 滲んだ空の下、雲がごく自然に“輪を描いて”回っていた。まるで、あの空にだけ、別の重力が働いているかのように。

 その異常は、もはや“非日常”ではない。

 ここでは、すべてが“日常”として受け入れられつつあるのだ。

(この街は、ゆっくりと壊れてる……誰も気づかないまま、フェードアウトするみたいに。でもそれを止める奴はいない……もちろん俺も)

 ユウは、声に出さずに思った。

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