夫婦の部屋2
紗枝は公園を歩いていた。左手は3歳の女の子の右手をしっかり握り締め、その子の左手は平一とつながれていた。
紗枝は満足していた。このまま歩いていくと綿菓子屋があり、雲の切れ端みたいな綿アメを買ってから
――― だめ、消えないで、目が覚めちゃう。
紗枝は目が覚めた。紗枝は時々夢をコントロールできる時があった。
大抵はトイレに行きたくなって目が覚める前の一瞬ではあるが、夢を見ていることが分かり、意識して夢をコントロールすることが出来た。
紗枝は三人が出かけた後に食器を洗い終わり、簡単に掃除をして、洋服を脱いで下着のまま寝ていた。
ふと気がつくと夢の中だった。
やったー、ラッキーと思い子供と三人のところを想像した。
男の子を想像したのだがボーイッシュな女の子が出てきた。
夢は完全にはコントロールできない。前は、平一との食事を想像したが、出てきたのは60歳くらいの白髪の男性で、今まで見たこともない、記憶の片隅にもないような男性だった。
しかし夢の中では平一と信じきっており、目が覚めてから、今の誰?と思った。
そのときは未来の平一さんだと勝手に解釈し、未来の自分は全然老けていないことに満足していた。
紗枝は目が覚めた原因が分かった。ひとつはトイレだが、もうひとつは人の声だった。
「あら、ぶーちゃんの食べっぷりって素敵ね。紗枝さん上にいるでしょう、上がるわね」
ホモの“あきら”だった。もちろん本名ではないが、男でも女でもいいので、そう呼ばせていたが、
紗枝は“ほもちゃん”と呼んでいた。女装しているわけではなく、男物のカジュアルな服装だった。
紗枝がトイレに行くために部屋から出てきたとき、ホモちゃんが上がってきた。
「あら、素敵な下着ね」
「いらっしゃい。何かあったのって聞く前に、服着てくるからちょっと待ってて」
紗枝は部屋に戻った。
ホモちゃんは声を低くして男っぽい口調で「俺のためなら、服着なくていいぜ」と言った。
部屋の中から「わたしの体で男になれたら喜ぶ?―――協力してもいいわよ」という声が聞こえたが、「知らない人が聞いたらドキィとするようなことを平気で言って」とつぶやきながら、冷蔵庫から牛乳を出して、食器棚へ向かいコップを取り出し、並々と注いだ。
そして一気に飲み干すと、「牛乳もらったわよ」と言って食卓の椅子に倒れこむように座った。
紗枝は、ジーパンに白いタンクトップを着て、ホモちゃんの正面に座った。
紗枝は両腕で左右の乳房を両脇から抑えて胸の谷間を作ってみせた。
ホモちゃんは下を向いて自分の股間をみて「駄目みたい」と言った。
「口でやってあげようか」紗枝は真剣な顔で言った。
「屈辱」
「そうよね。ゴメンね」
「紗枝さんにしてもらって喜べる自分になりたいとも思うけど―――紗枝さんなら本当に私のためにやってくれそうね。」
「うん、わたしが望んでいるわけじゃないから罪の意識もないし――― ゴメン また悪いこと言っちゃた」
「いいのよ。女も、男も、社会も、誰も望んでくれないから」
「どうしたの」紗枝はホモちゃんの顔が急に曇ったことに気づいて心配して聞いた。
ホモちゃんは細々と「また会社を首になった」と言った。
「また、就職していたの?」
「食べていくためにね。わたしは最初に就職した先で、自分を騙し続けていたわね。
紗枝さんに会って、自分を出して人生を楽しみなさいって言われて、本性を出したとたんにいづらくなって辞表出したけど――― 紗枝さんを責めたわよね『あなたの所為で無職になった』って。
紗枝さんはきっぱり言ってくれたわね『わたしは意見を言っただけ、それに対してホモちゃんが判断して、自分の責任で取った行動だから、わたしに関係ない。自分で考え、判断して責任を取れる年齢になっているんでしょう』って、あの言葉で紗枝さんが好きになっちゃった―――友達としてね」
「失敗を他人の所為にするのは良くないから」
紗枝はそう言うと食器棚からコップを取り出し、冷蔵庫を開け、オレンジジュースを取り出し、テーブルに置いて、自分のコップに注いだ。
「失業保険も切れて、貯金もなくなって―――また自分を殺して就職したけど―――ばれちゃった。内心、自分をだますのが嫌になって、ばれてもいいやと思っていたんだけど―――首。解雇じゃないんだけど、仕事も回ってこないし、居づらくなって自己退職の形なんだけど、人権があるのかもしないけど、行使なんて出来ないし―――やだ、言葉になってないわね」
ホモちゃんの目には涙が浮かんでいた。
紗枝は黙ってオレンジジュースを冷蔵庫に戻し、ホモちゃんの後ろから、下をうつむき、涙をじっとこらえて座っている男を抱きしめた。
ホモちゃんは、涙を拭き自分を抱きしめてくれている紗枝の手を握って言った」
「何とかしなきゃね、ホモだって霞を食べているわけじゃないし、おいしいものいっぱい食べたいし、旅行にも行きたい」
紗枝は希望を持たせるために「ゲイバーもあるよ」といった。
「屈辱」
「ゴメン。またまた失言」
「そうよ、あなた、失業している女性にバーを勧める?―――確かにバーが卑しい職業だとは思わないけど、向いている人と向かない人がいるから」
「ゴメンね、誰だって良いというわけじゃないし、―――おっと、また失言」
「紗枝さんたら、悲しみに浸っているのに、笑っちゃうじゃないの」
少し落ち着いてきた様子を見て紗枝は席に就いてコップを手に取り、「ホモちゃんの将来に乾杯」と言って、ホモちゃんの空になったコップに乾杯した。
「ありがとう、もう大丈夫―――いいニュースも有るのよ」と言った。
「わたしを助けてくれる彼氏が出来たの。援助交際じゃないわよ。ちゃんとした彼氏」
ホモちゃんは涙をハンカチで拭きながらも微笑んで話していた。
「わたし、部屋を追い出されるの、家賃溜め込んだから。そしたら彼ね、一緒に住もうって言ってくれたの。彼もお姉さんの家に同居しているんだけど、そのお姉さんも同性愛なのよ。でも、4人で住んでも性的な対象はお互いの相手だけだから何も問題ないって言ってくれたの。私もレズの二人には興味ないし、相手も私たちには興味ないみたい。でも女の人はいいわよね、レズでも仕事場では気が強い女で通るんですもの」
「彼氏は何の仕事してるの?」
ホモちゃんは、あまり良く知らないと言って
「インターネット情報サービスの会員を募集する仕事みたいよ。夜のお店をネットで紹介して予約も出来るし、割引券をネットで発行するから、会員になればお得なシステムよ。会費も月に三千円と安いし、新会員を紹介したら、会費の一部が返金されるの、だから、彼は逆に相当な額を貰っているみたいよ。」
「犯罪よ、別れなさい」紗枝はきっぱりと言った。
「えっ」ホモちゃんはびっくりした。次第に表情が険しくなり、下をうつむいてしまった。そして急に叫びだした。
「喜んでくれると思っていたのに、ガッカリだわ!―――顔も見たくない。帰ってよ」
そして、さらにつぶやくよう「喜んでくれると思ったのに」と言い、涙ぐんでいた。
「ゴメンね、ここ、わたしの家なの。でも、ホモちゃんは帰らなくてもいいよ」
紗枝は抱きしめた。
ホモちゃんは体中の力を振り絞って「悪い人じゃないのに」とやっと言葉が出た。
「専門家じゃないから断言は出来ないけど、“ねずみ講”じゃないの。親から子、子から孫、孫から曾孫・・・と次から次に会員を増やし、ねずみ算式に会員が増えていく仕組みになっていれば犯罪よ」
「私も“ねずみ講”ぐらい知ってるけど、新規会員を紹介したらお礼が有るのは何処でもやってるし、利益を得るのは携帯電話や生命保険の勧誘と同じじゃない。ただそのお礼を親にも少しだけ分けてあげるだけ。自分だけのものにせずに、みんなで分け合うの、違法なの?それに、利益が目的じゃないとハッキリしてるし、会費の分はちゃんとメールマガジンとして還元してるわけだから合法じゃないの」
「でも、あんたの彼みたいに、利益を得ている人が居るのも事実ね」
ホモちゃんは紗枝の腕の中で子供のように抱かれていた。
「本当に愛し合ってるの?キスした?」
ホモちゃんはなみだ目から疑惑の目に変わっていた。
「まだ手しか握ったことがないわ」とぽつりと言って、寂しげな顔に変わっていった。そして、急に怒りの目に変わり、
「合法よ、きっと、そんな―――そんな悪い仕事じゃないわ。優しい人だし、一緒に住もうといってくれたのよ。わたしを助けてくれているのよ、そんなこと、そんなこと―――あるかな?」声がだんだん小さくなってきた。「レズのお姉さんも、まだ合わせてくれないし、4人で住むのも変だし、最初はホモって感じがしなかったし―――騙されてたのかなぁー」
ホモちゃんは黙り込んだ。一生懸命信じようとしても、信じきれない自分に気づいていた。
「わたし、刑務所に入るのかなぁー」
「周りは男ばっかしよ、ホモちゃんにはハーレムじゃない―――ごめんなさい、笑えないね」
紗枝は強く抱きしめた。
「大丈夫よ。刑務所なんかには行かないわ。―――もし、騙されているならホモちゃんも被害者だし、わたしが守ってあげる」
「なぜこんな性格に生まれたんだろう。普通に女性を愛せたらいいのに。」
「でも、ロリコンよりましよ。小児愛好家じゃなくてよかったわよ。性的趣向はほとんどがSM、スワッピング、女装、男装など趣味の範囲だけど小児愛好家は実行に移せば犯罪だし、自制するのが大変で、可哀そうにも思えるの」
紗枝は両手でホモちゃんの手を包むように握り締めた。
「犯罪じゃないから堂々としていいのよ。先駆者ってどんな時代でも辛いものよ」
「先駆者?―――そんな立派なものじゃないわよ」
「想像してみて、20年後の未来を。誰もが好きな人を選べる時代を、同性愛者や既婚者愛好家もいいわね。―――それから、塾女・熟年―――わたしはこういう人が好きなんだと堂々と言える時代がきっと来るわよ。ホモちゃんはその先駆者。未来の人のために道を切り開いてあげてよ。―――人間には差別意識があるの。黒人・部落民―――うちの子はあの人たちとは違うという優越感を得るための差別があるの。黒人や部落民は社会が差別は悪いってことが浸透してきたから今は表立ってないけど、その代わりに出てきたのが、学力やあなたたちを利用して差別しているわけ、うちの子は頭がいいとか、同性愛者じゃないとか、不倫など差別の対象にされているだけ、20年後はあなた達も市民権を得ているよ、きっと、うまくいったら10年後かもよ。外国ではもう市民権を得ているわよ」
「10年かぁー、その頃わたしにいい人いるかしら。いい人がいたとしても、子供はいないから、老後は寂しいわね。」
「養子は10年後でもまだ無理でしょうね。でもね、ホモちゃんだけの問題じゃなくてよ。わたしもよ。そろそろ焦らないと高齢出産も過ぎちゃう」
「わたしで良かったら協力するわよ―――なんて言ってみたいわ」
ホモちゃんは、「そろそろ帰るね」と言って立ち上がろうとした時、元気なはつらつとした声が階下から聞こえた。
「ぶーちゃん、それ朝食?昼食?―――いいわよゆっくり食べてて、きっと朝食と昼食の間ね―――紗枝さんいる?上がるわよ」
入ってきたのは60半ばの夫婦だった。レストランの経営者である平一の両親である。
「いらっしゃい」と紗枝。老夫婦は紙袋をテーブルに置き、「ふぅー疲れた」と言って椅子に腰掛けた。ホモちゃんはあわてて老夫婦に席を譲った。
「あらっ、ホモちゃん、久しぶりね。元気してた?いい人が出来たの、顔が赤いわよ」
ホモちゃんが答える隙も無く紗枝に向かって喋りだした。
「何しに来たか知りたいわよね。この紙袋に何が入っているか知りたいわよね。ひとつづつ話すから焦らないでね。今日旅行から帰ってきたところなの。何も言わなかったけど、外国―――外国に行ってきたのよ。かばん持ちを連れて」
ちょっとの隙を突いてホモちゃんが「かばん持ち?」と口を挟んだ。紗枝は急須に茶の葉をいれて、お湯を注ぎながら、母が喋っている最中によくホモちゃんが口を挟めたのに感心した。
「主人よ、主人のことよ。あれっ、ホモちゃんは主人とは初めてだっけ?後でお互いにゆっくり自己紹介はしてね。主人は旅行が好きじゃないけど、わたしが行きたいって駄々こねたから仕方なくついてきたの。『俺は旅行に来たんじゃない。お前が心配だからかばん持ちとして付いていくんだ』と言ってね、おかげで楽もできて愉しかったわ。独りじゃつまらないし、安全だし、最初は質屋のワカさんと団体旅行を計画していたのよ。でも急に夫婦四人でってことになって、主人も鞄持ちって言っているけどワカさん目当ても分かっているけどやきもち焼くような歳じゃないし、やっぱり焼くなら海産物よね、昨年行った北海道のバーベキュウのおいしかった事、考えただけでもよだれが出そう。あら、話が飛んじゃったじゃなない。誰か教えてくれれば良いのにね。まったく、年取ると脳のしわが外に出てきて、物忘れがひどくなり話が飛んだりするのよね。話を戻して、暇さえあれば病院に行ってる主人が旅行だなんて。でも体が悪いわけじゃないのよ、病院へ行ってヨタヨタと歩くと若い看護婦さんが『お爺さん大丈夫ですか』って腕を取ってくれるのが嬉しいしいのヨ。この話したっけ、でもホモちゃんは始めてよね、元気が無い声で『有難う』って言う主人は見物よ、私が来ると元気になるから。
歯医者は別よ。子供に付き添って母親が一緒に入って手を握っているけど、私も主人の付き添いで一緒に入るのよ」
ホモちゃんが両手を握りこぶしにして「まあ、やさしい」と言った。
母はニコッと笑い「痛がるのを見て楽しんでいるの」と言い、また話し続けた。
「あッそう、紗枝さん、信じられる?あの主人が、旅行のときはわたしの言いなりなのよ。わたしが行きたいところに付いてきてくれるし、食べる好みが違うのに私に合わせてくれるし、極めつけは―――ハンバーガーを食べたのよ。信じられないでしょう。嘘ついてないわよ。嘘ついたら弁護士辞めるから」
ホモちゃんは「お母さんは弁護士じゃないわよね」と小声て囁いた。
それを聞いた母は小声で「ええ、嘘だったら医者も検事も辞めるから」とホモちゃんに囁いた。
紗枝はお茶を出した。父は口に出さずに表情でありがとうと言っていた。
「あら、ありがとう。久しぶりに美味しいお茶を戴けそうだわ。」母はそう言って湯飲みを両手で大事に包み込むようにして
「熱い飲み物を注ぐと、入れ物が膨張して少し減ったように見えるわよね。これを『天使の分け前』て言うのよ」と言いながら美味しそうに飲み始めた。この隙を狙って紗枝は海外帰りには「紅茶のほうが良かったかしら」と冗談ぽく言った。
母は湯飲みをテーブルに置き、一息ついて、紗枝を見てニコッと笑い、
「紗枝さんのお茶はおいしいわ。平一ったらこんなに美味しいお茶を入れてくれるのに、コーヒーを好むなんてもったいないわ」
紗枝は、平一さんも日本食の後はお茶ですよと言いかけたが、母はその隙を与えなかった。
「こんなに美味しいお茶の淹れ方のコツを教えなさいよ」
「コツと言っても、ただチョッと高い茶の葉を買って、お茶の葉の一枚一枚にこめられた愛情を私の情熱で温めたお湯で、秘められた―――」
「おやめっ」母は人差し指で紗枝を指した。
紗枝はチョコッと舌を出しニコッと笑い、
「淹れ方に大差は無いけど、飲む人の体調や気持ちで大きく変わると思いますけど」
母は「そうかもね」と言って
「旅行はいいわよ。主人は優しくなるし、この店あなた達に売り払って、主人と旅行して余生を過ごそうかと話していたのよ。もう働く必要もなさそうだし、平一には紗枝さんがいるし、順平が心配だけど、紗枝さんがお姉さんになってくれているし、紗枝さん様々ね、
後は孫だけね―――おっとこれ禁句。嫌われる姑の候補ね。さてと、女はお喋りするとストレスが発散するって本当ね。あなた達にストレスが移っただけかもしれないけど、旅の疲れが取れたわ。さあ今度は紗枝さんがお話しする番よ。何か良い話しを聞かせてくれない」
紗枝は母にお茶のお代わりを出しながら、
「お店を買う余裕はまだ無いですけど、お母さんがお店で働かないんだったら、ホモちゃんを雇ってもらえませんか?」
ホモちゃんは飲みかけていたお茶をブッと噴出した。紗枝の思いがけない言葉に動揺した。雇ってもらえるとは思わなかったが、紗枝の言葉がうれしかった。
「あらっ、ごめんなさい。なんて事を」ホモちゃんはあわててハンカチを取りだし、周りを拭き始めた。
父も母も微動だにせず、ホモちゃんを見ていた。「面白そうね。お客の前で噴出さなければ」母はそう言うと、あわてて拭きまくっているホモちゃんの手を取り、
「面白いかもしれない。ホモちゃんのいるお店。ホモちゃんは性格もいいから人気者になれるかもしれないわね。常連の年取った方は眉を顰めるかもしれないけど、わたしも最初はそうだった様に、ホモちゃんを知ったら人気者になれるわよ。」母は主人のほうを向いて、「あなた、どうします?」と聞いた。父は「いいよ」と一言だけ言った。
「おめでとう。主人の許可が出たわよ」
ホモちゃんは目を大きき見開き、
「信じられない。わたしがお店の経営者なんて」
「違うわよ。ウエイターよ」紗枝はすぐに訂正した。
「ごめんなさい。わたし、動揺しちゃって、でもいいのかしらわたしがウエイターをして、信じられないけど、素晴らしいわ、嘘みたい。なんてお礼を言っていいのかしら」
母が付け加えて言った。
「でも、―――」一同は母の言葉に集中した。特にホモちゃんは不安を感じながら母の次の言葉を待っていた。
「板さんは大丈夫かしら」
父は「ぶーちゃんと働いているくらいだから大丈夫だよ」と言ってお茶を飲み、
「お客に色目は禁止だ」と付け加えた。
「わたし、一生懸命働きます。でも、本当にいいんですか?」
「ウエイターがマッチョマンよりましよね」紗枝がフォローした。
母がパチンと手をたたき「ウエイターがマッチョマンもいいわねぇー」と付け加えて、さらに
「うちに住み込んでも良いわよ。―――此処じゃないわよ。ここには順平も居るしまた子供みたいなのが増えると紗枝さんが大変だから。―――平一も順平も居なくなって空き部屋があるの。但し、もし住み込みなら、レストランをやってる以上、ガス自殺と食中毒による自殺は禁止します。その代わり、主人に色目は―――使っても良いわよ」