5逃げていたのは自分
そこにリオンが帰って来た。
「ブリジットただいま。ごめん。せっかく来てもらったのにさ。ママは人使いが荒くて、荷物置いて来る」
「いいの。私も何かお手伝いさせて」
「うん、ありがとうブリジット。でも、君にしては珍しくない?自分から何かしようなんてさ」
「あら、私だってやるときはやるわよ」
リオンと一緒にキッチンに行く。
「ママこれ」
「ああ、ちょうど良かったわ。リオンこれをテーブルに持って行って」
出来上がったおいしそうな料理がテーブルにたくさんあった。
「私もお手伝いします」
「そう?ありがとうブリジット助かるわ」
リオンのお母さんはすぐㇰ気さくな人らしい。
さっきは何だか悪かったな。そんな事を思いながらダイニングルームに料理を運ぶ。
「ごめんブリジット。驚かせただろう?ママはパパが死んでからずっと頑張って来たんだ。パパが死んだとき兄はまだ学園を卒業したばかりでママはそりゃ必死で伯爵家の仕事をやって来たんだ。今は兄が伯爵家を継いで切り盛りしてるけど、何しろ頑張り屋さんでだから俺達兄妹はいつでもママが喜ぶ顔が見たいって思ってる。抱きついたりこんな大きな息子に子供みたいな扱いをしておかしいかも知れないけどママを悲しませたくないからなんだ」
「ううん、リオンちっともおかしくないよ。すごく仲のいい親子で羨ましいくらい。リオンが世話焼きなのもきっとお母さん譲りなんだね。あなたみたいな人が旦那様になったらきっといい家庭が出来るわね」
私は素直にそう思った。そりゃ最初は少しいや、かなり引いたけどリオンの話で納得できた。
それならなおさらメリーナさんを傷つけるようなことはやめさせないと…)
パーティーの準備が出来ると5人で席に着いた。
お兄さんは今日は都合が悪くて参加できないらしく食事が始まった。
私の隣にはリオン、反対側の隣はユーゴだった。
リオンはチキンの丸焼きを取り分けたりワインを取りに行ったりとそれはもう一人であれもこれも忙しく動き回っていた。
メリーナはお母さんと楽しそうに話をしていてそんな中ユーゴがテーブルの下から私の太腿をそっと撫ぜたり「これ、旨いな。どうブリジットも?」わざとらしくそんな事を言って私に触れて来る。
私はユーゴを睨みつけるがそんな事気にするような男ではない。
そうやって食事が進みリオンは機嫌がよく何倍もワインを飲んだ。そのせいですっかり酔っぱらっている。
食事が終わりそろそろパーティーもお開きになろうとしていた。
ユーゴが立ち上がる。
「いやぁ、今日は美味しい料理に旨いワイン。楽しい食事ですごく楽しかったです。マーシャ様メリーナありがとう。メリーナはまだお母さんといたいだろう?リオンもすっかり酔ってるみたいだしブリジットは俺が送って行くから安心して」
つらつらとよくもまあ…と言うくらいうまい言葉を並べ立てるユーゴ。
「まあ、いいの?ユーゴさんって優しいのね。メリーナどう?」お母さんはすっかりユーゴを信頼している感じだ。
「ええ、だってママ片付けもあるしひとりじゃ大変でしょ?お兄さんはすっかり酔ってるみたいだし…もう、リオン兄さん!ブリジット送って行かなくていいの?」
「ぶりじっとは…お、れょが…おきゅって#$%&=*…」リオンはテーブルに突っ伏した。
「もう、リオンったらしっかり」
さっとユーゴがリオンを抱きかかえる。
「リオンをベッドに連れて行きます。このままじゃ風邪をひきます」
「まあ、ユーゴさんありがとう」
ユーゴはリオンを部屋まで運ぶとダイニングルームに戻って来る。
「ブリジット送って行く。じゃあ、俺達はこれで失礼しようか。どうも「ユーゴ悪いけど帰りはひとりで大丈夫だから」そんな訳に行くか。女性をひとりで帰らせる何てできるわけがない。ねぇお母さん」ユーゴは親しみを込めてそう言った。
「そうよ。ブリジット。一人じゃ帰らせるわけには行かないわ。ここはユーゴさんに送ってもらってちょうだい」
「いえ、それは出来ないんです」
「ああ、あなたリオンに遠慮してるのね?ブリジットはほんとにいいお嬢さんね。リオンが夢中になるのもわかるわ。あの子ったらブリジットの事をそりゃ好きで好きでたまらないみたいなの。でも、ユーゴはメリーナの彼何だしひょっとしたらあなた達義姉弟になるかもしれないのよ。だから安心して」
お母さんはそれはもう嬉しそうにそう言った。