第5話 呼出し
演劇部に入部して2ヵ月が経った。
先週から梅雨入りして、小雨が降っていたかと思えば嵐のようなゲリラ雷雨が襲い、登下校の通学時に何度かひどい目に遭った。
お昼休み、教室で地味系グループに属している私の仲間であり友人のふたりと他愛もない会話をしていた。
帰宅部である友人のひとりが、私が演劇部であることを思い出し、宇良先輩のことを色々と聞いてきた。
宇良先輩は最初、女たらしなのかも、と誤解していたが、普段は無口で女子にキャーキャー騒がれても、嬉しくないのか、作り笑いをしてみせているのが最近わかってきた。女性のことがむしろ苦手にみえる。宍戸先輩とつきあっているのかは依然謎のままだが、これといった噂は聞こえてこないので、偶々ふたりでお茶をしたのだろうか? 男女で……。
宇良先輩は同じ部活の子なら、皆に親切で優しく接している。
ただ、相変わらず私への距離感はバグったままだ。
そして、陰湿なイジメは先月から2年生の先輩まで拡大している。
理由は、都成先輩が私を庇ったこと。あざとく計算高い女子だと2年の先輩に吹き込んだのは同級生の女子。
クラスは別なので、教室は居心地がいい。
──やめよっかな、演劇部。
別にその道に進みたいとかではないし、演劇部に入れたというだけで楽しいけど、人間関係が底辺まで辿り着いてしまっている。
私はただあの光の輪に入りたかった光に誘われて飛んできた羽虫。他の人から鬱陶しがられる邪魔な存在。
私も楽しくないし、私を煙たがっているひと達も私が辞めれば余計なストレスも無くなるよね?
いったん、その言葉が頭に浮かんでしまうと、その言葉が頭の中に蜘蛛の巣のように粘っこくまとわり始め、解決しようとする意志が出口を見失う。
「私、実は……」
演劇部をやめる、友人に伝えようとした瞬間。
『ガラガラガラ』
ざわめく教室、無理もない。宇良先輩がお昼休み中に1年の教室に降臨したのだから、
「常ちゃん、ちょっといいかな?」
──どうしよう?
なぜ私は宇良先輩に呼び出されたの?
私がなんかしたから、注意とか?
ううん、宇良先輩はそんな人じゃない。
ならば理由はひとつに絞られる。
「イジメに遭ってるってホント?」
やっぱりそういう話が先輩の耳に入っちゃったか?
でも、いくら宇良先輩でも男子ではこの問題は解決できないと思うけど。
それに苦痛を感じてまで、演劇をやり続ける熱意が私にはもうないかも。
「常ちゃんの声ってさ」
先輩も気になるのかな?
声についての思い出はぜんぶ暗い過去ばかりで正直、この部分には触れてほしくなかった。
「オレ、大好きなんだ」
「え……」
先輩の紡いだ言葉を私はその意味を理解するのに少し時間がかかった。
「だからオレに考えがある」




