第4話 そういうのは無しにしようよ?
入学して一ヶ月が過ぎ、暦の上ではゴールデンウィークに突入した。
相変わらず同級生の子たちからみえないところで嫌がらせを受けているが、上級生たちは気づいてないみたい。
あと、あの可愛い系男子、都成先輩が演劇部に所属していることには驚いた。
かなり気分屋さんで、一週間に一回くらいしか顔を出さず、演劇の知識がない名ばかりの顧問の先生よりも姿をみせないのに2年や3年の女子の先輩からすごく可愛がられている。
あと宇良先輩と仲がいい。演劇部は男子はこのふたりしかおらず、3年は女子5人、2年の女子も5人、そして1年は一ヶ月で6人まで減っていた。
その日、2年生と3年生が、勉強のために演劇鑑賞で不在、私たち1年だけ居残りで発声練習をしていたが。
「もっと声のトーンを下げなよ、その声、気持ち悪いんだけど?」
「ゴメンなさい」
私は小さい頃から地声が高い。そのせいで小学校低学年ぐらいから同級生の男の子たちにバカにされたのがきっかけで、人前ではあまり声を出さなくなった。
たまたまトイレの個室にいた時に彼女たちがトイレに入ってきた。そこで聞きたくもない言葉を聞いてしまう。「咲来のヤツ、キャラ作ってんじゃねーよ」、「そんなに宇良先輩に構ってもらいたいのかよ、あの根暗」などと誹謗中傷で盛り上がっているのを耳にして怖くなった。
「悪いけど、離れたところでひとりで練習してくれる?」
ふたりほどオロオロとしているが、残りの3人が強く迫るので、屋上へ移動して練習しようとしたが、いつの間にかドアの前にかわいい系男子、都成先輩が立っていた。
「あれ? 今日は1年の子だけ?」
「先輩たちは今日〇△市へ演劇鑑賞に行ってます」
先ほど強い口調で私に迫った同級生の女子が答える。
「ホント、ありがとう。あっそうそう!」
都成先輩は礼を伝えて、一度背を向けたが、なにかを思い出したのか振り返った。
「そういうのは無しにしようよ?」
「え?」
「咲来さんと仲良くしてあげて、ね?」
さっきの話聞いてたんだ……。
都成先輩がいなくなると、部屋の中が沈黙で包まれる。
「……まで」
え?
「都成先輩までアンタのこと庇って、アンタいったいなんなの?」
先ほど都成先輩と会話した女子が厳しい声音で詰問する。
それはこっちが聞きたい。
なぜ先輩たちは私に優しいの?
そのせいで、あらぬ誤解されてワケのわからない嫉妬の対象になってしまっている。
私を睨みつける目が恐い。小学生の頃に高い声のせいでイジメられてから、ひとの目をみて向き合うのが恐くなった。
そのせいで、前髪で自分の視線をなるべく隠し、マスクをしているととても気持ちが落ち着くようになってしまった。
「先輩たちに密告っちゃお」
屋上へ行こうと演劇部を出ようとしている私にそんな言葉が投げられた。




