第3話 かわいい先輩(男)
ほらね、やっぱり……。
我ながら自分の置かれている状況を客観的に分析できていると思う。
廊下で肩を貸してくれていた同級生ふたりが途中で、私から離れたのでよろけそうになった。慌てて踏ん張って、倒れずに済んだが、なにも言わない彼女たちの視線がある言葉を発している。
宇良先輩に媚び売ってんじゃねー、と……。
プイっと背中を向けて、演劇部の部室に戻っていく彼女たちをみながら恐れていた事態に筋トレの時とはまた違う汗が噴き出る。
宇良先輩に近づく気なんて毛頭ないのに完璧に誤解されてしまった。
よろめきながら、保健室に向かうべく壁を伝いながら、歩いているとまたつまずいてしまった。
「~~~~ッ」
「大丈夫ぅ―?」
「え?」
膝を打った痛みに無言で耐えていると背後から声をかけられた。
誰だろう?
ナチュラルな癖っ毛に、屈託のない笑顔。男子にしては少し小柄だが、顔がすごく整っている。
「ほら、ボクの肩につかまって」
頭を下げて礼を伝える。誰か知らないが、助かった。肩を借りながら、反対の手は壁に伝わせているので、どうにか倒れずに保健室に辿りつけた。
「ありがとうございました」
「いいよー、ボクは行くけど気分は悪くない?」
養護教員がおらず、そのまま保健室のベッドに横になっていると、連れてきてくれた男子が少し水滴が浮いている冷たいペットボトルを私に差し出した。
「はい、少し横になれば大丈夫です」
「ボクは2年の都成伊都、キミは?」
「私は1年の咲来常です」
「そっか、じゃーね咲来さん」
「あ、あの……ありがとうございました」
「いいよ~気にしないで~」
笑って私にひらひらと手を振りながら、保健室のドアを閉めた
すごくいい先輩。
都成先輩か~。童顔だから女子に可愛い系男子枠でモテるんだろうな。
なーんか、昨日から先輩の男子が私に優しくしてくれる。それに反比例して女子に敵を作っていそうで怖い。お願いだからそっとしておいてほしい。
いろいろと考えていたら睡魔が襲ってきて、完全に意識が微睡み始めた。
目が覚めたら夕方。戸締りにきた養護教諭に起こされ、部室に戻るとすでに誰もおらず、ジャージ姿のままだったので、制服に着替えて学校をあとにした。
電車に乗ろうと駅前まで来たが、慌てて建物の陰に隠れる。
あれは宇良先輩と3年の演劇部部長の宍戸先輩。
ふたりで駅前の建物、2階にあるカフェの階段を登っていった。
やっぱりつきあってるのかな?
朝もふたり仲良く校舎の中に入っていったし。
宍戸先輩って女子の中では、かなり背が高い方でスタイルもいい。演劇部では男性役もこなせるらしく、少なからず女子の中にも宍戸先輩のファンがいる。
だとするとお似合いのカップルだね。
私のような根暗女子とは違い、明るく照らされた道を歩んできたふたりは別世界の住人にみえる。




