第14話 声
「その頃、常ちゃんに救われたんだ」
「私に?」
宇良先輩……当時の雨男くんからみた私は他の女の子と違って、アリの行列を眺めている自分の隣に座って一緒に観察していたそうだ。
雨男くんはクラスのいじめっ子に外見だけで、「オマエがいると雨が降るんだよ、あっち行け」と言われ、それが広まり、周囲に「雨男」と呼ばれて孤立していたそうだ。
そんな時に公園で同じくいつも独りの女の子がいて、なにもしゃべらないのに傍にいてくれて、とても心が救われたそうだ。
「でも常ちゃんもその頃からイジメられてたよね?」
そう、声が高い、という理由で、耳がおかしくなるとクラスの男子に意地悪されていた。友達もなかなかできず、よく公園で時間を潰していたのを覚えている。
「雨の日、オレ聴いたんだ。常ちゃんの歌声」
ある日、雨が降っていて公園には誰もおらず、コンクリートで出来た滑り台の雨風にさらされない下の場所で、いつものようにアリの行列を眺めていると、雨が降っているのに滑り台で上から歌声が聞こえたそうだ。
宇良先輩は雨のせいなのかは、わからなかったそうだが、目に涙を浮かべながら私が歌っていたそうだ。
なぜかはわからない。でもその歌声を聴いて、自分も涙が溢れてきた自分に驚いたそうだ。
──そして、その歌声を聴き恋をしたと。
「常ちゃんの声はオレにとってはかけがえのないもの、そしてボクはそれからずっと恋に落ちている」
「なッなにを///////」
ちゃんとした言葉が出て来ない。とにかく顔がリンゴのように真っ赤になっていることは間違いない。
「だから新入部員初日に『あっ』って声を聞いてすぐに常ちゃんだって分かったんだ」
そんな短い一声で……。
「常ちゃん、オレはキミのことがずっと好きだ」
頭が真っ白になっていくなか、後ろの方に立っている都成先輩がウインクして合図をする。
今わかった……。
都成先輩のウインクの意味って。
「わわわ私も宇良先輩のことが好きです///////」
言ってしまった。
モブキャの私が分不相応のことをしでかしてしまった。
宇良先輩は、一度背を向けガッツポーズをしている。そんなに嬉しかったのでしょうか?
「あとさ、ちょっといいかな?」
「わお♪」
ななッ、なにをしてるんですか?
宇良先輩が私のマスクを外し、前髪を左右にかき分け、前髪で普段隠している素顔を露出すると、都成先輩が驚いた。
「知ってたんだ。常ちゃんが隠れ美人ってこと」
恥ずかしい。あんまり顔をジロジロを見ないで欲しい。
「おめでとう、ふたりとも、ボクからの餞別聞きたい?」
都成先輩はからかうように宇良先輩と私に質問する。
「歌声のパートもあるし、ヒロイン『キアナ』役は咲来さんに譲るよ」
「は、はひぃ」
まだ、梅雨が明けていない今日、本番当日は晴れ上がって、最高の舞台を学校のみんなに贈ることができるだろう……。
【おしまい】
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
ガチ恋を描いてみましたが、いかがだったでしょうか?
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