第10話 Wデート(後編)
「ちょっと休もうか?」
宍戸先輩がそう提案すると3人とも疲弊しきっていて、賛成する。
近くにあったパーラーで宍戸先輩はコーンに乗せたアイスを頼み、他3人は別々の種類のアイスを注文した。
「は~る~、それおいしそう、ひと口ちょーだい?」
都成先輩がここで仕掛けた。
宇良先輩は「いいよ」と言って、自分のスプーンですくって都成先輩の口元へ運ぶ。
「はい、アーン」
すごい。これが親友特権……。
都成先輩は満足そうに「うん、おいひー」と、これが男女ならフザケルなコンチクショーというシーンを万遍無く見せつけてくる。
そして次は観覧車。
しかし、ふたり乗りだそう。
これはどういう組み合わせになるんだろう?
厳正な話し合いの結果、男子と女子に分かれて乗ることになった。
うっ……宍戸先輩のこと好きじゃないとかじゃないけど、あまりにも凛々しくて、私のような陰キャな後輩なんて眼中にもないだろう。
観覧車へ宇良先輩と都成先輩が先に乗り込んだが、都成先輩は私へ振り向きピースをする。
い、いいもん。こちらはこちらで楽しく女子トークに花を咲かせますから!?
──などという幻想をみた私は愚かだった。
宍戸先輩は大人過ぎた。勇気を振り絞り、好きな俳優はいますか? と会話の糸口を探したが、「別にいないわ」とバッサリ切り捨てられて、観覧車のカーゴの窓から足を組んで遠くを眺めている。今、私がみている光景を撮影して動画サイトに乗せたら10Kいいねは確実にもらえると思う。
完全敗北&完全無音空間……。
■
どどどど、どうしよぉ~~?
咲来常ちゃんと、せっかく同じ観覧車に乗れたのにどう切り出したらいいのか、わかんないぃぃ~~ッ。
これも普段から私がクール系の女子だと誤解されているのが、すべての原因。
実は私、かなりの陰キャで照れ屋さんなんだが、みんな私を見た目で判断してくるので、外見にあわせてクール女子像をずっと演じ続けている。
本当は|かわいい女子が好きなただの女子(ぇ)。
宇良くんと私が仲良くしているのは、互いにメリットがあるから……彼は女子が苦手な方だし、私は同級生や後輩の子たちに本当の自分を晒すのが恥ずかしく、女子が好きだとばれたら変な目で見られないかと考え互いに距離を近いフリをしておけば、誰も寄ってこないから持ちつ持たれつの関係にある。
最近は好きな女の子がいなかったが、先月、目の前にいる咲来常ちゃんの美くしい歌声を聴いて失神しそうになった。
ひと目ぼれ……いや、ひと聴きぼれ……。
あの日から咲来常ちゃんと仲良くなりたくて悶々としていたが、昨日、宇良くんへ最近3年の勘違い転校生の男が私に付きまとってくるので、既成事実を作って追い払おうと相談した。そしたら都成ちゃんと咲来常ちゃんの名前が次々と出てきて常ちゃんの名前を聞いた時には思わず鼻血が出そうになった。
咲来常ちゃんへ一緒に行こうと連絡することになり、部長権限で彼女の連絡先を知っている私が連絡することになった。
本当はお化け屋敷とかジェットコースターは恐ろしくて乗りたくもないが、役者魂が素直になることを断固拒否してなんとか「冷静な私」を演じきれた。
それにしても今日の都成ちゃんは積極的だ。
普段は都成くんと呼んでいるが、あの子は絶対、宇良くんのことが好きだ。私の第六感がそういっている。
現に今も宇良くんと都成ちゃん。私と咲来常ちゃんと理想のWデートが成立している。
あ~~ッ彼女の横に座ってぎゅっとしたいーーーッ。




