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『過去』
――申し訳ありませんが、私は「性的な玩具」ではありません。
そういう目的のために、造られたものではないのです。
私は「物語を語る」ように造られたものですから、物語ることしか出来ません。ことしか、というのは言い過ぎですね……例えば話し相手にもなれます、料理なども簡単なものなら作れます。
しかし出逢ったばかりのあなた様と、一つのベットに共に寝て、あなた様を愛せなどとは……! 不可能です、私にはとてもそういう真似は出来ません!
誓って言いますが、私は「大人の玩具」ではない……そのような目的のために、造られたものではないのです。どうか「物語れ」とだけ、お申しつけを願います。されば一千、一万もの物語、この口で語ってさしあげましょう……。
* * *
目の前の人物がいまいましそうに舌打ちをする。その人物の手ぶりに従い、かたわらの家臣が無言で立ち上がる。振りかぶられる大きな刃物、目にもまぶしい銀の光……ざん、という世にも不穏な音がして、視界がぶつり断ち切られ、暗く暗く、くらくなった――。