第6章 逃げろ山田
6月10日、本日発売!
「はぁっ……はぁっ……あ、危なかった……」
高杉は崩壊したビルの瓦礫の下から、ずるずると這い出てきた。
息も荒く、今にも倒れそうだった。誰か、誰かいないか。
そのとき、前方から猛スピードで一台の車がこちらに向かってくる。
「助けが来たのか!助けてくれ……!」
「山田様!目の前に市長確認!」
「よし!そのまま轢け!!」
「ぎゃああああ!!」
高杉の体が宙を舞い、ゴミ袋のように回転しながら吹き飛ぶ。
地面に叩きつけられた彼は、血だらけの顔をゆっくりと上げて叫んだ。
「き、貴様……山田ァァァァ!! よくもこの私を……!」
「まだ生きてるぞ!」
「バックします!」
キュルルルッ!
車が見事なドリフトで回転し、今度はバックで高杉に突っ込む。
「ぎぃやああああ!!」
ふたたび吹き飛ぶ高杉。塵芥のように空を舞ったあと、ガレキに突っ込んだ。
「ぐ、ぐううううう、貴様、よくも…」
「な、何でまだ生きているんだ…」
「ドン引きするな!したいのは私だ!」
ぜえ、ぜえ、ぜえ。
「なぜお前は……そんなにも私の邪魔をするのだ!!」
「いや、お前が喧嘩売ってきたんだろ…なんでそんなに俺を目の敵にしてんだよ」
「貴様のせいで、私の—、私の復讐が終わってしまったからだ!!私は日本政府に対して復讐をするつもりだった…だが貴様に台無しにされたのだ!」
「い、いや、何を言って」
「ふざけるな!これを見ろ!」
高杉の怒りに満ちた声が響く。血まみれの顔で、懐から新聞紙を取り出した。
『針村財務大臣まさかの汚職!与党の大派閥解体へ!逮捕者30名以上!』
あっ。
俺はかつて手に入れた『ドキュメンタリー 針村財務大臣汚職の瞬間』を思い出した。
「ああ……そういえばそんなこと、あったなぁ。懐かしい」
「ううっ……せっかく……せっかく何年もかけて計画を練ったのに……!日本政府の要人を失脚させて……政界を裏から操るはずだったのにぃ…無念だ…」
「…てか、八つ当たりじゃねえか!」
山田は拾った鉄パイプで高杉を殴打!クリーンヒット!効果は抜群だ!
「理不尽ッ」
「お前だよ」
山田は深呼吸しながら言った。
「……よし、負けを認めろ。さっさとこのホムンクルスの暴動を止めろ」
都市は流星群により崩壊した。既に至る所でホムンクルスの暴動が発生している。この事態を収拾できるのはこいつだけだ。
しかし高杉は、地面に倒れたまま、不気味に笑った。
「ふ……ふふふ……ふはははは!!」
「な、なんだよ……今度は何だよ」
「きさまは……何も分かっていない……!」
高杉は顔を上げた。鼻血を垂らしながら、満足げに言い放つ。
「ホムンクルスの制御権は、もはや私の手にはない。いや、最初から誰にもなかったのだ……!」
「は?」
「ホムンクルスを、貴様と7号の支配から解放するために、私は改良を施した。ホムンクルスはもはや誰にも従わない、完全に自立した存在なのだ……!」
「え、じゃ、じゃあ。どうやってあいつらに命令を」
「ふっ、そんなの決まってるだろう。食事だ!!」
「……は?」
「道頓堀市の食文化を発展させたのはこの私だ。満足のいく食を与えることで、ホムンクルスたちを雇っていたのだ! だが今、レジスタンスによる反乱と、流星群の直撃により、供給ラインはズタズタ……料理人は逃げ、厨房は瓦礫、もはや何の希望もない!」
その瞬間、空腹に狂ったホムンクルスたちが地平線を埋め尽くす勢いで地鳴りとともに現れた。
「約束が違うぞ市長!うまい飯よこせェェェェ!」
「お、おい!お前!どうにかしろよ!」
「できるわけないでしょう!?私を倒した以上、あなたがこの街の支配者ですから。さ、あとはよろしく」
高杉は満足そうに仰向けに倒れると、そのまま気絶した。
その直後、空中スピーカーからアナウンスが流れる。
『新たな支配者が認定されました。この街の支配者は山田竜。市長およびホムンクルスとの契約は、すべて山田に引き継がれます。ホムンクルスに植え付けた叛逆因子も停止します。山田を倒したものがこの町の支配者です、今後高杉は一切の責任を負いませんので』
「は、はあああああああああああああ!?!?!?」
ざわ……ざわ……。
ホムンクルスたちの目が、一斉に山田を見据えた。
「あいつを潰せば、俺の街になる!!」
「ホムンクルスに負けるか! 人間の意地を見せてやる!」
「食事は後だ!突撃!!」
山田が走り出す。背後から爆炎と怒号が迫ってくる。
「ま、まずい!これはまずい!…いや、いつもどおりか?」
「チェストォォォ!お命頂戴します、山田様」
そのとき、空が裂けた。
ドォォォォン!!
空から7号が降ってきた。剣を手に、地上に着地しただけで空気が揺れ、衝撃波が走る。
な、なぜ7号がここに…冥王星で宇宙人と戦っていたはずでは…
「何でホムンクルスが反乱してるの?なんで私の管理下にないホムンクルスがいるの?」
「ひ!」
それは怒り。ホムンクルスの頂点、私の支配下にいないホムンクルスなど許さないという怒りだ。
こ、怖い…
「7号だ!7号が来たぞおおおおおお!」
「こいつを倒せば俺が最強だ!ここで逃げれば一生の恥だ!」
「山田なんか無視しろ!7号に挑め!このチャンスを逃すな!」
ドタドタドタ…
ホムンクルスが俺を無視して、7号の方向に向かった。
山田は呆然としながら、ぽつりとつぶやいた。
「……よし、帰るか。アリス」
「はい、帰りましょう。とりあえず各都市の監査を行いましょうか。仕事がいっぱいですね」
どこか遠くで爆発音が響いた。7号が無双しているということだけがわかる。
道頓堀市、これからどうしよう。嫌だなぁ……。
この高杉という男、書籍版にイラスト付きで登場します!
本日6月10日に1巻が発売します!
イラストも最高に素晴らしいので、ぜひよろしくお願いします!
大きく加筆していますので、楽しみにしてください!
タイトルが『ガチャと俺のプライベートプラネット 番狂わせの召喚王』
作者名が井橋 太陽と変わっていますが、気にしないでください。




