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森人類(エルフ)

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また、読者の意見も参考にしたいので、どんどん感想もお寄せください。それによって展開に反映したりします

勇人たちがデパートの外にでると、複数の黒塗りの車がやってきた。

「あれ?気が利くな。迎えにきてくれるなんて。呼んでないんだけどな」

南方家に仕える黒服たちの車を見て、たくさんの紙袋を抱えた勇人は首をかしげる。


「まあいい、助かったよ。この荷物を運んで……」

勇人が言い終える前に、車から降りてきた黒服たちは姫子の前に立った。


「お迎えにあがりました。金谷姫子様」

彼女の前に整列して、うやうやしく一礼をする。。


「はぁ……私に関わらないでくださいってお願いしましたよね」

ぷいっと顔をそむけて行こうとする姫子の腕を、黒服たちがつかんだ。


「お館様の命令です。さあ、一緒に来てください」

そういって、車に乗るように促す。


「ちょっと待て。お前たちは新田警備保障の者だろ。なんで姫子を連れて行こうとするんだ」

そう責めてくる勇人に、黒服たちは困った顔になる。


「それは、私たちには知らされていません。ですが、非常事態が起こったとのことです。詳しくはお館様からお聞きください。今は一刻も早く屋敷へと」

懇願してくる黒服たちに、ただ事ではないと察する。


「姫子、行こう。俺も一緒にいくから安心してくれ」

「……仕方ありませんね」

姫子はしぶしぶ頷き、車に乗る。


屋敷の門の前では、心配そうな顔をした源人が待っていた。

「おお、姫子。心配しておったぞ。無事じゃったか」

「気安く呼ばないでください。あなたとは縁を切ったはずです」

姫子は源人の顔を見ると、ぷいっと顔を背ける。


「あの、お爺ちゃんと姫子ちゃんってどんな関係にゃ?」

「……気になる」

美亜と玲に聞かれ、源人はきまり悪そうに答える。


「姫子はワシの隠し孫じゃ」

「か、隠し孫?」

意外なことを聞いて、勇人は驚いた。


「なんで今まで黙っていたんですか?もっと早くいってくれれば……」

「仕方がなかったのじゃ。一族の者にも姫子の存在を隠さなければならないほど、複雑な事情があったのだ」

源人はひとつ咳払いすると、その訳を話し始めた。


「姫子の正式な名前は、金森姫キムリンヒ)。その父親は、何年か前に暗殺された、北句麗王国の王子、金正夫(キムジョンフ)じゃ」

「ええっ?」

驚く勇人に、源人は事情を説明する。


「ワシは学生時代、海外に旅行した際に姫子の祖母、エルミナと恋に落ちた。その後、彼女は病気で死んでしまったのじゃが、生まれた娘であるエルフリーデを託されて、日本にかくまっていた。しかし、娘がバイトしていた東京マウスランドで、お忍びで来日していた金正夫(キムジョンフ)と出会ってしまったのじゃ」

源人は悲痛な顔で、話を続ける。


「彼は非常に開明的な考えをする人物で、日本にも好意をもってよく来日していた。金王朝の独裁の元、貧困に苦しむ北句麗王国の人々をなんとか救おうと改革開放活動していたが、お家騒動に巻き込まれて暗殺され、残されたエルフリーデもある日行方不明になってしまった。もうワシはお前だけは失いたくないのじゃ」

話を終えた源人は、ため息をついて姫子を見た。


「ということは、姫子ちゃんって王女様にゃ?」

「……いわれてみれば、なんか高貴な感じ」

美亜たちの反応を見て、姫子は心底嫌そうな顔になった。


「……なぜ今になって、そんなことを話すんですか?お父さんが王子だったなんて、私には関係ないことです。私は普通の女の子として生きていきたいんです」

うっとおしそうに見てくる姫子に、源人は告げる。


「その気持ちはわかる。じゃが、姫子の周辺を探る者たちがいてな。どうやらお前の素性が北句麗王国のスパイにバレたみたいなのじゃ」

「な、なんですって?」

姫子の顔に恐怖が浮かぶ・


「……というわけで、すぐにワシと一緒に後醍醐にいくぞ。あそこなら安全じゃ」

源人はそういって、勇人から与えられた自家用UFO「カグヤ」を示す。しかし、姫子は頑なに拒否してきた。


「お断りです。お祖母ちゃんを捨て、お母さんも守れなかったあなたの世話にはなりません。今日は二度と私に拘わらないでくださいと言いに来たんです。もう私のことは放っておいてください」

そういうと、姫子は地面に手をついて念じた。


「『地雷移動』」

姫子の身体が雷に変換され、大地に吸い込まれていく。

後には彼女が着ていた服と、ピアスが残されていた。


「消えた!もしかして姫子も亜人類なのか?」

「彼女の祖母であるエルミナは、自分たちを森に住む『森人類(エルフ)』だと言っておった。ああ、今でもあの日のことを思いだす。深き森の中で、恥ずかしがりがらも長い耳を触らせてくれて……ううっ。なせワシを残して死んでしまったのじゃ」

昔を思い出して涙を流す源人に、勇人は突っ込む。


「ちょっ。そんなこと言っている場合ではないのでは?」

「そ、そうじゃ。彼女に危険が迫っておる。ええい。すぐに連れ戻しにいくぞ」

勇人たちは急いで姫子の住むアパートに向かうのだった。



「一刻も早く身を隠さないと」

その頃、自宅のアパートに帰った姫子は、大急ぎで荷物をまとめていた。ピアスを外し、露わになった長い耳が不安そうに揺れている。


「最低限の物だけをリュックにつめて……」

そこまで言った時、家の固定電話が鳴る。


「姫子、どこにいるんだ?」

出てみると、勇人からの電話だった。


「勇人さん。ごめんなさい。迷惑をかけて」

「そんなのはいいから、そこを動くな。すぐに迎えにいくから」

勇人は必死に説得しようとするが、姫子は悲し気に笑った。


「……いいの。あなたたちまで巻き込めない」

「そんな!俺とお前は従兄妹だろ!爺さんが嫌なら、俺を頼ってくれよ」

その言葉に、姫子は泣き笑いの表情を浮かべる。


「ありがとう。あなたたちと従兄妹でよかった。もう二度と会えないだろうけど、玲さんと美亜さんを大切にしてね。さようなら」

そう告げると、一方的に切る。それから決心した顔で、部屋から出ようとした。


その時、いきなり部屋に細長い影が入ってきた。

「だ、誰?」

「我々は北句麗王国に属する諜報部隊『蛇人類(スネーク)』だ。金森姫、一緒に来てもらおう」

細長い影はるみる太くなっていき、人間の姿になる。それはドレッドヘアをした男たちだった。


「くっ!『地雷移動』」

とっさに自らの身体を雷に変換して、地面に潜ろうとしたが、一瞬早く男たちが動いて、アパートの床に黒い影を落とす。


「無駄だ。『影膜(シャドウフィルム)

「きゃっ⁉」

男たちが広げた黒い影にはじかれて、姫子の身体が元に戻った。


「我々は長年地を這って生きるうちに、自らの身体を影に潜ませて移動する術を編み出した。その能力を応用すれば、大地を影で覆うことができるのだ」

男たちの、爬虫類のような細い目が姫子を睨み、ドレッドヘアがゆっくりと解けていく。髪かと思われていたものは、先端に小さな牙がついた黒い触手だった。


「『影毒(シャドウポイズン)』」

触手が姫子を襲い、その細い首筋に牙を突き立てる。姫子の身体は麻痺して、その場に崩れ落ちた。

「よし。こいつに『封電の首輪』をつけろ」

蛇人類たちは倒れた姫子に発電を封じる首輪をつけると、トラックに載せて去っていった。


その後、姫子のアパートに到着した勇人たちは、一足遅かったことを知る。

「くそっ。間に合わなかったか!」

勇人は部屋の中で地団駄を踏む。部屋の中には争った跡があり、姫子の荷物だけがむなしく残されていた。


「ナイト、姫子の生体電気反応は?」

「受け取れません。電気信号の発信を何かに防がれているみたいです」

ナイトが現れて、そう報告する。


「そんな……くそっ。どうやって探せばいいんだ」

姫子を探す手段が失われたことを知り、勇人は呆然と立ち尽くすのだった。


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[一言] おじいちゃんはジョセフ・ジョースターの雰囲気を放つ、彼は前編に値する
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