パーティ
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教室
昼休み、玲は作ってきた弁当を広げていた。
「え?これって玲さんの自作ですか?」
「おいしそうにゃ」
玲の弁当をみた姫子と美亜が驚いている。弁当にはこれでもかと気合が入ったごちそうが入っていた。
「一口いただきにゃ!いたっ!」
つまみ食いをしようとした美亜の手を、玲はペシッとひっぱたく。
「……だめ」
「けち。こんなにいっぱいあるから、ちょっとぐらいいいにゃ」
そう拗ねる美亜を放っておいて、玲は勇人に声をかける。
「……勇人、お弁当を作ってきた。一緒にたべよう」
一斉にクラスメイトたちから注目され、勇人は真っ赤になった。
「い、いいって。食堂にでも行くから」
「だめ。私の愛情をたっぷり注ぎ込んだお弁当じゃないと、栄養が偏る」
玲に招かれ、勇人はしぶしぶ隣に座る。
「あーん」
「だから、いいって。仕方ないな。おっ。これはうまいな」
「でしょう。真理婆から教わった。男を落とすには胃袋をつかむのがてっとりばやいって」
そんな仲睦まじい姿をみせつけられ、姫子と美亜は瞳をキラキラと輝かせた。
「もしかして、二人はつきあっているんですか?」
「怪しい雰囲気にゃ」
興味津々で聞いてくる二人に、勇人は口ごもる。
「えっと……あの」
「……つきあってはいない」
玲が否定したので、勇人はほっとする。しかし、次の言葉で飲んでいたお茶を吹き出した。
「……だけど、卒業したら子供を作ると約束している」
「「ええっ」」
玲の爆弾発言に、聞き耳を立てていたクラスメイトたちも驚いた。
「ど、どういうことなんですか?付き合ってないのに子供をつくるって」
「爛れた関係にゃ」
二人が詰め寄ってくるので、勇人は困ってしまった。
「……だから、その……」
「勇人を責めないで。私が一方的に言い寄っているだけ。メイドとして誠心誠意お仕えして、振り向いてもらえるように頑張る。もし飽きられて捨てられたら、子供を引取ってうちの神社を継げばいいだけ」
無表情でいい放つ玲に、クラスメイトの勇人を見る目が冷たくなっていく。
「……フケツ……」
「無責任にゃ」
姫子と美亜は、ムシケラを見るような目で勇人を見た。
「いやいや待って。誤解なんだって」
勇人が弁解しようとした時、今までじっと見てきた女子が近寄ってきた。
「玲さん。どうやら身の程を知っているようですね。勇人さんは名門である南方家の御曹司。あなたのような庶民とは生きている世界が違うのです」
玲を見下した目で見たのは、勇人の元婚約者、豊畑奈美だった。
「……勇人が御曹司とか関係ない。私は勇人個人を愛しているだけ」
「ふん。綺麗ごとを。上流階級の間では政略結婚は当然。そのことを自覚して、正妻になろうなどと考えないことです」
奈美はそういって釘を刺してきた。
「……私は正妻なんて興味ない。そもそも私たちは女だけで自立してきた一族で、全員母子家庭。結婚制度自体意味を持たない。大切なのは、これはと決めた男の子種をもらうこと」
そういって勇人の手に自分の手を絡ませる。
「ふん。下賤な庶民にふさわしい考えですこと」
そういって、奈美は離れていった。
「あれ、なんなんでしょう」
「牽制しに来て返り討ちにあったにゃ」
姫子と美亜は、去っていく奈美を笑う。
「……勇人、そんなわけで今度行われるパーティじゃ、私に遠慮せずに財閥の利益になる女を捕まえる」
「勘弁してくれよ。もうちょっと嫉妬してくれても……これじゃ種馬みたいじゃないか」
独占欲のかけらも見せないあっさりとした玲に、勇人は複雑な気分になるのだった。
週末
勇人は源人に連れられ、政財界合同パーティに出席していた。
「いや、あなたが 南方財閥の御曹司ですか。かしこそうな顔をなさっている」
「どうですか?海設都市の開発をわが社にお任せいただければ……」
「いや、若いのにしっかりしていらっしゃる。わが孫娘とお見合いを……」
政財界の爺さんおっさんたちに囲まれて、うんざりする勇人を見かねて、源人が間に入った。
「わが孫はまだ未熟なのでな。何か話があるのなら、ワシが聞きますぞ」
長年日本の財界の重鎮に居続けた源人の気迫に、勇人を利用しようとしていたおっさんたちもさすがにひるむ。
勇人はその隙におっさんたちの輪を抜け出し、家族が集まるエリアに逃げ込んだ。
「つ、疲れた~。おっさんたちに囲まれても、うれしくもなんともないな」
そうつぶやきながら食事をつまんでいると、今度はおっさんたちの子女に囲まれてしまった。
「勇人さん。パーティに来てくれたんですね。このパーティ会場は、わが豊畑自動車が用意したんですよ。ゆっくり楽しんでくださいね」
そういって勇人の右腕を組んだのは、元婚約者である豊畑奈美だった。
「なによ。こんなに人が集まったのは私のおじいちゃんの鳩川雪雄の人脈のおかげよ」
それに対抗して勇人の左腕を組んだのは、幼馴染である鳩川小百合だった。
二人の間に、バチバチと火花が飛び散る。
「なにが人脈ですか。北句麗王国や大韓朝国に媚びへつらって、日本から総スカンを食らっているくせに。南方財閥の力で政界復帰をもくろんでいるのですか?」
「そっちこそ、アメリカの電気自動車に押されっぱなしで落ち目じゃない。南方財閥の力を借りて、会社を立て直そうって魂胆でしょ」
二人は勇人そっちのけで喧嘩を始める。醜い争いを見せつけられて、勇人はうんざりしてしまった。
「ちょっと、トイレいってきます」
二人が喧嘩している間に逃げ出し、会場を出ようとする。その時、一人のメイドにぶつかった。
「にゃっ!」
「あっ。すいません。って、え?」
勇人は慌てて謝る。ぶつかったメイドは、カチューシャをつけている小柄な美少女だった。
「美亜じゃないか。ここで何やっているんだ?」
「勇人君こそ、何でここにいるのかにゃ」
二人は互いに顔を見合わせ、首をかしげる。
「俺は爺さんにパーティに連れてこられたんだよ」
「そうだったのにゃ。うちはバイトでメイドさんしているにゃ」
美亜はそういって、メイド服をみせびらかす。小柄で可愛い顔をしている彼女に、よく似合っていた。
「バイトかぁ。大変そうだな」
「ううん。パーティが終わった後に残った料理もらえるかもしれないにゃ。おいしいバイトにゃ」
美亜は嬉しそうに低い鼻をひくひくさせて、会場の臭いを嗅いだ。
「いいにおいにゃ。参加している勇人君が羨ましいにゃ」
「そんないいものでもないけどな。飯食う余裕なんてないぞ」
利権狙いのおっさんや、玉の輿狙いの肉食少女たちに囲まれたことを思い出し、勇人はうんざりした顔になる。
「お坊ちゃんも大変にゃね。おっと、いけにゃい。仕事に戻らにゃいと」
「そうか。がんばれよ」
美亜はにっこりと笑うと、給仕に戻っていった。
「さてと……会場に戻る気もしないし、もう帰ろう」
そう思うと、パーティ会場を後にする。
ホテルの前で迎えの車をまっていると、前庭に生えている大きな木の枝に黒い子猫がいるのを見つけた。
「に、にゃーん」
枝から降りられないのか、悲しげに鳴いている。
「子猫って、木に登っても降りられなくなることがあるよな。仕方ない」
勇人は木に飛び上がり、子猫を捕まえる。
「にゃっ!」
「こら、暴れるな」
ジタバタする子猫を抱きしめて、木から飛び降りた。
「ほらっ。もう大丈夫だぞ。って、おいっ!」
暴れていた子猫の爪が、偶然『空神珠』にひっかかり、ヒモの部分が切れてしまう。
地面に飛び降りた子猫は、落ちたネックレスを口にくわえた。
「ちょっ!それは大切なものなんだ。返してくれ」
「にゃ?」
子猫はしばらく考え込んでいたが、いたずらっぽい顔になる。
「にゃーん」
からかうように鳴くと、ネックレスを持ったまま逃げていってしまった。
「ちょっ!待てって。やばい!捕まえないと」
慌てた勇人は子猫を追って、ホテルに戻るのだった。
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