強制収容
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三か月後
入光史郎は仲間たちと共に、ある少年院に収容されていた。
「くそっ。ここから出たら、絶対に勇人の奴に復讐してやる」
史郎はそう呟く。彼とその取り巻きの不良少年たちは未成年だったので刑務所にいくことはなかったが、高校は退学になり、少年院に入れらて厳しい生活を送っていた。
厳しい教官たちに生活を管理され、何百枚もの反省文を書かされてプライドが傷いた史郎は、そう思うことで必死に毎日乗り切っている。
そんなある日、教官たちからあることを告げられた。
「新しい法案が通り、40歳以下の若くて健康な男性受刑者、少年収容者はある場所に強制的にうつされることになった」
少年たちの前で、移転場所が示される。それは日本から離れた海上にあった。
「そんな!そこは海の上じゃないか!」
「新しくできた海設都市だ。そこなら隔離されているので、警備の手間も大幅にはぶけるのでな」
教官はそういうと、薄く笑った。
「これは民間と国が協力して行うプロジェクトだ。お前たちみたいな犯罪者やその予備軍をお国のために有効に活用しようというのだろう」
教官はそういうと、冷たい目で少年たちを睨んだ。
「覚悟しておけ。今までのように、更生させることが主な目的な施設ではない。お前たちには今まで周囲に迷惑をかけた分、労働で償ってもらうことになるだろう」
労働と聞いて、少年たちから反発の声があがる。
「冗談じゃねえ。そんなかったるいことやってられるかよ」
そう騒ぎ出す少年たちを、教官は憐れみの目でみた。
「大人がそういつまでも甘い顔をしていると思うな。少年法ができて数十年、いっこうにお前たちのような不良は減りはしない。そろそろ社会も我慢の限界にきている所に、南方財閥からある提案があったのだ」
教官は新しくできた法案を説明する。
「収容施設民営化推進法」と題されたその法案は、全国の少年院と刑務所をすべて新しくできた海設都市に移転して、強制労働に従事させるといったものだった。
「日本の受刑者1人当たりの収容コストは年間約300万円もかかっていて、年々収容人員も増えている。税金でお前たち屑どもを養うのも限界ということだ。営利企業である民間に委託して、かかる費用以上の貢献をしてもらおう」
「そ、そんな。俺たちは法律で守られている少年だぞ!更生させる義務が国にあるんだ!強制労働なんて違法だ」
なおも食い下がる彼らを、教官たちは鼻で笑った。
「これからお前たちがいく海設都市は四国の沖だ。そこは日本の排他的経済水域に囲まれてはいるが、国際法上は日本の法律が及ばない公海上にあたる。従って、少年法は通用しない。すべて南方財閥の裁量に任されることになるだろう」
「そんな!」
法の保護も及ばないとして、彼らは絶望する。
「お前たち若年層がいなくなれば、俺たち刑務官もずいぶん囚人の管理しやすくなり、仕事が楽になるしな」
そう言うと、教官はふいに表情を崩す。
「心配するな。そこでの行動はある程度の自由が許される。飯も労働時間も自分で決められるし、賃金も仮想通貨で払われる。しっかり働いて、今までの自分たちの行動を反省するんだな」
そういって教官は出ていく。残された少年たちからはざわめきが起こった。
「労働だってさ」
「でも、少しは賃金がでるんだろう?」
「飯も労働時間も自分で決められる?今迄みたいに厳しく管理されるよりはいいかも」
ここにいる少年たちは、大人や社会に対して反抗心が旺盛なものばかりである。少年院の厳しい締め付けにうんざりしている者ばかりだった。
「しょうがねえな。ここにいるよりはマシだろう」
そう思っていた彼等だったが、海底での資源掘削作業は考えていたものよりはるかに辛い思いをすることになるのだった。
数日後、史郎たちは海設都市「後醍醐」に移送される。
「こ、これが新しくできた都市か。海の上にあるのが信じられないほどの大きさだな」
気持ちいい風と開放的な雰囲気に、史郎たちの気分が緩んでいく。
しかし、審査の段階でいきなり手痛い歓迎を受けた。
「後ろを向いてうなじを出せ」
怖そうな黒服の男にそう言われて、史郎たちはしぶしぶ後ろを向く。
すると、いきなり注射針が差し込まれ、何かを首筋にいれられた。
「痛っ!」
「よし。さっさといけ。次」
黒服の男が何事もなかったように次の少年に向き直るのを見て、史郎はぶち切れた。
「ふざけんな!なにしやがる!」
「必要な処置だ」
史郎の怒りをみても、黒服たちは意にも介さない。
「てめえ!ぐっ⁉」
史郎が拳を振り上げた瞬間、首に鋭い痛みが走って史郎はその場に崩れ落ちた。
「これはお坊ちゃまの『雷呪紋』を再現したバイオチップ、通称『ゴスペル』だ。本来の目的は通貨の決済だが、お前たち囚人にはそれに加えてもう一つ機能がついている」
黒服たちは淡々と説明する。
「この都市で犯罪を犯したり、我々に逆らったら、『苦痛』の電気信号が首から全身に流れるのだ」
顔色も変えずに言い放す黒服たちに、不良少年たちは少年院の教官たちとは比べ物にならない恐怖を感じる。
「わかったらさっさと行け!」
黒服たちに追い立てられて、史郎は都市の中に入っていくのだった。
入口では、暴徒鎮圧用のテーザーガンを装備した黒服たちが警備している。
その威圧的な姿を見て、少年たちは恐怖におびえた。
「おいおい。奴ら銃みたいなものもっているぜ。えらい所に連れてこられてしまったな」
「俺たち、これからどうなるんだろうな」
外にいるときは粋がっていたヤンキーたちも、自分たちが訳の分からない所に連れてこられて、抵抗できない状態に陥ったことを理解して、不安そうにしている。
そんな彼らの前に、黒服の護衛達を引き連れた少年が現れた。
「君たち、よく来てくれた。私はこの『後醍醐』の所長である南方勇人だ。君たちのこれからの働きに期待しよう」
「ゆ、勇人?」
史郎は素っ頓狂な声を上げる。まさしく、今まで自分がさんざんいたぶってきた勇人だった。
勇人はそんな史郎を見て鼻で笑うと、説明を続ける。
「君たちにやってもらう仕事は、この海の地下に埋まるメタンハイドレードや金、石油の採鉱だ」
「そ、そんなの俺たちやったことないぞ」
抗議する少年たちの前に、背が低いがずんぐりしてたくましい南方金属鉱山の社員たちが現れる。
「心配するな。我々『土人類』が現場監督として一から仕込んでやるから」
筋肉ムキムキの鉱山夫達を見て、少年たちは萎縮してしまった。
「ふ、ふざけんな。誰がお前の元でなんか……ぎゃああああ!」
それでも反抗を続ける史郎だったが、首のゴスペルから激痛が走って悶絶する。
「ああ、いっておくけどここでは暴力も反抗も禁止だ。海の中だから逃げる事もできない。諦めて働くんだな」
そういって勇人は去っていく。
残された史郎や少年たちは、『土人類』たちに従って「後醍醐」の最下層エリアに降りていくのだった。
「ここがお前たちのねぐらだ」
『土人類』たちにそう言われて、少年たちは顔を見合わせる。
そのエリアはまるで蜂の巣のように小分けされた部屋が上下左右に並んでいて、まるでカプセルホテルのような作りになっていた。
中に入ってみると、清潔な布団と個人用エアコン、そしてテレビがついていて、ちゃんと入口に鍵もかけられる。
「ま、まあ、プライベートが確保されているだけ、今までよりましかもな」
少年院では大部屋に押し込められていた少年たちは、せまいながらも個室が確保されていてほっとする。
「おっ?テレビがあるじゃねえか」
喜んでテレビをつけようとしたが、電源が付かなかった。
「なんでだよ!」
「ああ、テレビなどのサービスは、仮想通貨『アジア』で払わないと受けれないぞ」
案内してきた『土人類』は、ニヤニヤしながら説明した。
「なんだよそれ……。まあいいや。とりあえず腹が減った。食事はいつなんだ?」
「俺は風呂に入りたい」
当然の権利を主張する少年たちに、『土人類』は冷たく言い放った。
「食堂や風呂はこの一階下のエリアにある。自由に使うがいい。ただし、すべて有料だ」
有料と聞いて、今まで食事も風呂もすべて少年院で用意されていた彼らは怒りの表情を浮かべる。
「そんな!俺たちは金なんかもってないんだぞ!」
「飯くらい用意しろ!!」
そう文句を言った瞬間に、またも首のゴスペルから電気信号が発せられ、心臓に激痛が走った。
そんな彼等に、『土人類』は憐れみの視線を向ける。
「本当に甘え切ったガキどもだな、俺たちは刑務官でもお前の親でもねえ。ただの鉱山夫だ。ここでは甘えが一切通じねえ。覚悟するんだな」
筋骨たくましい男たちに睨まれて、少年たちは震えあがった。
「何か知りたいことがあったらモニターに手を入れて念じてみろ。なんでも教えてくれるはずだ。いいか、ここは誰も面倒見てくれるものはいねえ。飯が欲しいなら働いて金を稼げ。自分の身くらい自分で養うんだ」
そういうと、『土人類』たちは出ていく。結局、その日は誰もが腹をすかせたまま放置されてしまうのだった。
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