ユグドラシル
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「これは沈没船……ですか?しかし、かなり古い船みたいですね」
海底で船をみた誠也はそうもらす。
「この船は、『早丸』といって江戸末期に沈没したとされています」
木造船でかなり長い間海中にいたせいか、ほとんどの部分が朽ち果てていた。
「目的の物はこっちです。足元に気を付けてください」
勇人と誠也は慎重に船に入っていく。やがて、大量の箱がつまれた倉庫に到着した。
「さすがに沈没船だと、怨霊を縛り付ける呪術処置などがされてないから回収が楽だな」
そんなことを言いながら箱の一つに手をかける。中からは大量の小判が出てきた。
「こ、これは?」
「江戸幕府の御用金の一部です。最後の将軍が江戸を無血開城したとき、奥州に向けて軍用金の一部をこの早丸に積んで逃亡させたのだけど、暴風雨で海に沈んだのです」
小判を確認すると、五万両ほどあった。
「よし。『空神珠』に収納」
勇人がペンダントをかざすと、木箱が玉に収納されていく。その様子を、誠也は怖れを感じながら見ていた。
「あ、あなたは一体何者なんですか?」
「ただのお坊っちゃんですよ。今のところはね」
そういうと、勇人は玉に手をふれる。中から小判が100枚ほど出てきた。
「はい。これはあなたの分です」
誠也は呆然としながら、小判をうけとる。ずっしりとした小判の重みが、やけに心に響いた。
「な、なぜ私に財宝を見せるんですか?私なんて航海士になりたての新米で、南方財閥に雇われたのも最近だし」
「勤務期間と信頼度は比例しないということですよ。エストラント号の事件であなたが信頼できることは知っています」
勇人は誠也にむけて、笑顔で手を差し出す。
「わが南方家は、信頼できる者に対してはきちんと報いたいと思っています。どうかこれからも俺に力を貸してくれませんか?」
「……母に相談してみます」
誠也は複雑な顔をしながらも、勇人の手を握るのだった。
千葉県沖で財宝を回収した勇人たちは、そのまま西に航路を転じて四国沖に到着する。
「どうしてここに来たのですか?」
見渡す限り広がる大海原のど真ん中に、エストラント号は停留していた。
「日本近辺には多くの海底資源が眠っているのは知ってますよね」
「ええ。でも海底に広く散らばっているので、商業開発は難しいかと」
勇人の問いかけに、誠也はそう答える。
「ええ、だから海底での採掘が可能になるように、海設都市を作ろうと思います」
「都市ですか……?」
首をかしげる誠也に、勇人は倉庫に積んできた二つ目のコンテナの中身を見せる。金属的な光沢を帯びたタケノコのようなものが入っていた。
「これは何ですか?」
「元素植物の一種『ユグドラシル』です。周囲からさまざまな元素を体内に取り込んで成長する植物で、海中や海底に存在する金属を使って外皮を覆うことができます」
ブラックナイトの記録によると、デーモン星人はこれを使って人工衛星や宇宙船、さらには惑星同士を連結するリング状の星間通路など構築していたらしい。
その「あらゆる環境下で成長する植物」と、地球の「竹」種の遺伝子を組み合わせたものが、この黒光りするタケノコ『ユグドラシル』だった。
「さあ、記念すべき海設都市一号の建設です。健やかな成長を祈りましょう」
そういって、勇人はタケノコを海中に投げ入れる。誠也は訳が分からなくて、ただ見守るのみだった。
しかし数時間後、海底に巨大な竹の柱が立っているのを見て驚愕する。
「そ、そんな……こんなに早く……」
黒光りする巨大な竹は、しっかりと海底の大陸棚に根をはり、一部では海上に顔をだすほど成長していた。
「『雨後の筍』といわれるように、竹は世界でもっとも成長が早い植物で、一日で一メートルも伸びることがあると言われています。その中でももっとも勢いよく繁殖するモウソウチクの遺伝子を採用しました」
そういうと、勇人は三つ目のクレーンを、巨大な竹の先端に降ろす。
コンテナを開けると、真黒に輝く巨大な球のような結晶体が現れた
「これは?」
「水分子を融合させて発電する常温水素融合発電炉、通称『ゼウス』です。『空神珠』を参考につくった隔離空間内に力場で炉壁をつくることで、安全なエネルギー発電を可能にしました」
巨大な珠からは、バチバチと放電現象が起きていた・
『ユグドラシル』から蔓が伸びてきて、『モーゼ』と『ゼウス』に巻き付く。あっという間にそれらは蔓で覆われ、中に取り込まれていった。
「これで人が住める海設都市ができました」
キラキラと黒く輝くユグドラシルをみながら、勇人は満足の笑みを漏らす。
そんな彼をみながら、誠也はある決心をしていた、
(母に会いに行って報告しよう。もしかしたら彼は、我々『海人類』の未来を左右する人物になるのかもしれない)
誠也は勇人の持つ底知れない力に、不安と希望を感じるのだった。
「それじゃ誠也さん。エストラント号をよろしくお願いします。船には簡易モーゼも取り付けていますので、世界中の沈没船から財宝を回収してきてください」
勇人はそういって、ユグドラシルの中に入っていく。
「お。王子。いいんですか?このままだと、我々『海人類』の生息領域が脅かされることになるかもしれませんぜ」
「わ、わかっている。すぐに母に会いに行くぞ」
船員の1人に言われ、誠也は慌ててそう答えるのだった。
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