暴力
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退院した勇人は、夜遅くに屋敷に戻る。
「今帰ったぞ」
堂々と扉をあけて、メイドたちに声をかける。しかし、彼女らは勇人を無視していた。
「おい。なんで返事しないんだ」
「ふんっ」
話しかけてもそっぽを向いて歩き去っていく。
「まあいい。腹がすいたな。とりあえず飯でも食うか」
そういって家族用の食堂に入るが、冷たい笑みを浮かべた直子たちに出迎えられた
「これはこれは勇人様。おかえりなさいませ。エストラント号では大変な目にあったとか」
「ああ、馬鹿な桐人のせいでな。それより腹が減った。飯を出せ」
以前とはまったく違った傲慢な態度に、直子の頬がピクリと動く。
「……わかりました。少々お待ちを」
そういって台所にさがる。しばらくして運ばれた食事は、異臭がする残飯だった。
「おい。なんだこれば」
「こんな夜遅くに帰ってきて、いきなりご飯と言われて用意できるわけないでしょう。仕方ないから、使用人たちの食べ残しを持って来たんですよ」
周りのメイドからクスクスといった笑い声が聞こえてきた。
「……ふん。まあいい。俺は肉体改造によって消化器官も強化されているからな。試しに食べてみるか」
そういうと、まったく躊躇なく腐りかけの料理を食べていく。その様子をみて、メイドたちはうへぇという顔をした。
「信じらんない。腐ったご飯も平気で食べているわ」
「でもお似合いだよね。ここを追いだされてホームレスになった時の練習になるんじゃない。アハハ」
メイドたちの笑い声が響く中、勇人は平然と食べ続けるのだった。
(チッ。この卑しい鈍感男め。この程度じゃ自分が嫌われていることも理解できないのね。仕方ない。次のいやがらせをするわ)
そう思った直子は、スープを持ってくる。
「おっと、ごめんなさい」
転んだふりをして、運んできたスープを、わざと勇人にぶっかけた。
「なんだこのスープは。臭いにおいがするぞ」
「あらあら、ごめんなさい。間違って雑巾のしぼり汁で出汁をとってしまいました。まあでも、残飯でも平気で食べられるあなたにふさわしいでしょ。おほほほほ」
わざとらしく高笑いする直子に、勇人はため息をついた。
「なるほど。使用人の分際でここまで思いあがっていたわけか。これは教育をやりなおさないとな」
そうつぶやくと、勇人は食堂の大テーブルを片手でつかんで思い切り持ち上げた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
数十人が一度に食事できる大きなテーブルである。上に載っていた残飯がぶちまけられて、メイドたちから悲鳴があがる。
「な、何をするんですか!」
ヒステリックに喚き散らす直子に、勇人は容赦ないビンタを食らわせた。
「な、なにを……ぐふっ」
ビンタされた衝撃で折れたのか、直子は血反吐とともに歯を吐き出す。
「おい。お前、俺のことをなめているのか。言っとくけど俺は南方家の血を引くご主人様だぞ。その俺にこんな無礼な態度をとるって、殺されても文句言えないな」
「ひ、ひいっ」
今までとは全く違った迫力をまとった勇人に、直子は恐怖の叫び声をもらす。
「とりあえず、お前は首だ。ハッ」
「ぐはっ」
強烈な膝蹴りを食らって、直子は胃液をはいて崩れ落ちた。
「き、きゃぁぁぁぁ」
「や、やめて。ごめんなさい」
直子に振るわれた暴力を見て、メイドたちは震えあがって泣き始める。
「何泣いてんだ。おら、さっさと掃除しろ!」
「は、はいっ」
勇人に怒鳴られて、メイドたちは残飯や直子の胃液でぐちゃぐちゃになった食堂を掃除した。
「あーあ。きったねえ。お前たちのせいで汚れてしまったじゃねえか。すぐに風呂を沸かせ」
「わ、わかりました」
尻をけられたメイドの一人が、転がるように大浴場に向かって走り出すのだった。
「お、お風呂が沸きました」
しばらくして、びくびくした様子のメイドが伝えに来る。
「おう。さっそく入るとするか」
風呂場に向かう勇人に、メイドたちはほっとする。
その時、勇人は振り返ってこう告げた。
「着替えをもってこい。もちろん下着もな」
そういって出ていく勇人に、メイドたちは真っ青になる。
「ど、どうしょう。あいつの服は全部捨てちゃった」
「もし下着がないなんてことがわかったら、また殴られちゃう」
「と、とにかくコンビニでもいって買ってこよう。えっと、でも服はどうしょう。お店が開いてないよ」
右往左往するメイドたちに、声がかけられる。
「な、なんだこれは。何があったんだ」
食堂に入ってきたのは、筋骨たくましい執事たちだった。
「き、聞いてよ。あいつが……」
メイドたちは勇人の暴力を訴える。
「ふーん。いやがらせを受けたら泣いて出ていくと思っていたが、反抗するとはな。腐っても南方家の者か。でもバカだよな。かよわい女たちに暴力を振るうなんて」
「ああ。これで勘当は確実になったな」
ニヤニヤしながら指をボキボキと鳴らす。
「ちょうどいい。俺たちが追いだしてやろうぜ。おい、あいつが風呂から出てきたら訓練場につれて来い」
執事長の堂満達夫はニヤリと笑って、訓練場に向かうのだった。
大浴場を出た勇人は、屋敷の執事たちに取り囲まれた。
「坊っちゃん。ずいぶんメイドたちにひどい事をしたそうじゃねえですか」
執事たちは、勇人を睨みつける。彼らは、南方家の家臣である新田組に拾われた元半グレたちであって、新田警備保障の社員として屋敷を警備している。
それなので、南方家や勇人に対する忠誠心はもともと低かった。
そんな彼等を、勇人は恐れげもなく睨み返す。
「しつけのなってない使用人に教育するのは、主人の役目だからな」
バスローブを着た勇人は、平然とそう答えた。
「面白い。だったら俺たちにも教育してくれるんですかい?」
「もちろん。しつけの悪い犬どもには、今までの俺への態度を骨の髄から反省して、俺の命令に絶対服従するようにしてやるよ」
全く恐れない勇人に、執事たちは不快そうに鼻を鳴らす。
「ふん。おもしろい。それなら俺たちを顎で使う資格があるかどうか、試してもらおうじゃねえか」
執事たちに囲まれて、勇人はトレーニングルームに向かう。そこでは執事長の堂満達夫が、リングの準備して待っていた。
「ほう。素直に来たのか。てっきり泣いて謝るか、逃げ出すとおもっていたんだがな」
現役のプロレスラーの頃のコスチュームに身を包んだ達夫は、ロープにもたれながらニヤニヤしていた。
「飼い犬のしつけをするのに、なんで逃げないといけないんだ?」
余裕たっぷりに返す勇人を、達夫は嘲笑う。
「がはははは。度胸だけは一人前か。いや、自分の実力もわからないただのバカか。いいぜ、上がってこい」
その挑発を受け、勇人はバスローブ姿でリングに上がった。
「……てめえ。その姿はなんだ。俺をなめているのか」
「いや、パンツがまだ用意されてないんでな。まあ、どうせ汗もかかないで瞬殺だろうから、これで充分だろう」
素人の少年にここまでなめられて、達夫の顔は真っ赤に染まる。
「ほざいていろ。すぐにぶっ殺してやるぜ」
二メートルにも達しようかという巨体で、勇人の前に立ちはだかるのだった。
「先にいっておくが、お前には生贄になってもらう。ほかの執事への見せしめとして、ボコボコにされたあげく懲戒解雇だ」
「やれるものならやってみろ。こっちこそヒイヒイ言わせた後にその手の店に売り飛ばしてやるぜ」
カーンとゴングが鳴らされ、達夫は勇人に掴みかかっていった。
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