衝撃
ああ、きっと今の私はひどく間抜けな顔をしてると思う。
腫れすぎて分かんないかもな。
「あの、ど、どうやって私をここまで運んだんですか?」
・・・そうだ。さっきのは聞き間違いだ。
いくら男子でも、同い年の女子をそんな、だ、抱き上げるなんて、いくらなんでも・・・
「ん?抱えてここまで連れてきたけど?」
(そう、ですか。なんかすみません。助けてもらって。)
「いやいやな訳無いでしょ!私重いし!」
・・・はっ!!
心と言葉が逆になってる!!
「す、すみません・・・」
「いやいや、いいんだよ。あ、俺は永村 奏太。隣のクラスだよ。」
「あ・・・私は上原 夏実です。」
永村さんか。人気者なんだろうな。私とは生きてる世界が違う人だ。
「ねえ、夏実ちゃんって呼んでもいい?」
「え、う、うん。」
永村 奏太さん・・・
もしかして、前に美桜が好きだって言ってた人かも。
これで余計いじめてくるようになったら、嫌だな。
助けてくれた永村さんには悪いけど、関わりたくないな。
「夏実ちゃん、俺のことは奏太でいいから。」
優しい人なのは分かる。けど私は・・・
「本当にありがとう。永村君。」
これ以上、面倒なことにしたくない・・・
「あんなとこで倒れるなんて、大丈夫?」
倒れる・・・?
もしかして、永村君は私がただ倒れていたと思ってるんだろうか。
このボコボコに殴られた顔を見たら、誰だっておかしいと思うはず。触ってみたらすごく腫れているし、ものすごく痛い。
もしかして、この顔を見ていない?
抱き上げても、顔は見ないでくれたの・・・?
美桜達は服で見えない所だけを殴るから、気づかなかったのかな。
「ん?どうかした?」
「い、いや、なんでもないよ?」
教室に戻ると、なぜか皆静かで、その中心には美桜がいた。
美桜は私を見た途端、睨み付けた。
「夏実・・・あんた、どこ行ってたのよ!?あたしのオモチャ!」
殴られる。それでも、私は何も言わない。されるがまま。
私を蹴る間美桜はずっと
「なんで・・・あたしの奏太君が誰かを抱き上げたなんて!!なんで・・・ふざけんな!!」
・・・美桜が見てたのかな・・・
それなら、私はもう、生きられない。
美桜は私を・・・
「死ねや!!!」
殺すだろう。
大袈裟なんかじゃない。
「美桜、夏実蹴ったって仕方ないじゃん?奏太君が抱き上げた子は、ロングヘアーらしいし。夏実じゃないよ?」
柚花が言った一言に、麻里が慌てた。
「ちょ、柚花!なんで止めるの?」
今そんなこと言うなんて、まるで・・・
「夏実をかばってるみたいじゃない!」
麻里の言葉に、柚花は怒鳴った。
「かばうわけないでしょ、美桜が勘違いしてなければいいなと思っただけよ!」
「そう・・・?」
麻里は納得いかない顔をしていたけど、気にせず美桜が言った。
「どうせなら、もっと酷いことしてやろうよ」
麻里も気を取り直して
「柚花・・・ゴミ箱持ってきて」
「うん。」
柚花がゴミ箱を運んできた。
また、いつもの事だ。