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野良猫彼女と僕  作者: さきち
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飼い猫

幼馴染の凛花に背後から声を掛けられた。彼女は同じ学年で別のクラスに所属している。丁度いいと重ねられたノートを半分押し付けられた。職員室まで運ばなければいけないらしい。たわいない話をしながら歩いていると、そう言えばと、凛花が質問してきた。

「野良猫さんとはどうなってんの?順調?」

「う〜ん、どうだろう。しばらくは野良のままが良いってさ。」

「…程よく断られてんじゃないの?」

凛花は呆れた様な顔をする。

「…いや、そんな感じではないよ?」

多分怖がってるだけ。…だと思う。好きって言ってくれたし。

「新しい猫見つけたら?」

「新しい猫、もういるよ?今その子に夢中なんだよね。」

「え!誰?誰!?」

教えて!教えて!と煩い。何勘違いしてるんだ。

「…誰も人だって言ってないけど。」

「え?今の話の流れ的に、人かと思うでしょ?」

「違う!ウチに来た5匹目の猫だよ。見る?」

「見せて!」

うわぁ、可愛い!と凛花は僕のスマホを覗き込んだ。

「まぁ、基本モテたことはないよね、真司は。」

「失礼な!僕だってモテる事もあるよ?」

「ほう、誰に?」

「…猫にはモテる。マタタビ体質?みたいな…。」

何故か、猫にだけは良く懐かれるんだよね。数少ない僕の自慢出来るところだ。

「……。」

「人を可哀想なモノを見る様な目で見ないでくれる?自分は彼氏とラブラブだからって。」

「だって、本当にラブラブなんだもん♪」

凛花は僕の友達と付き合っている。何を隠そう、僕がキューピッドになったのだ。

「幸せそうで、何よりです。」

凛花の彼氏自慢を、聞き流しながら、僕は職員室までの廊下を歩いた。



いつもの様に屋上に続く階段に向かう。途中で彼女に出会った。僕が少し前を歩いていると、彼女はその少し後を歩いていた。

違和感を感じて立ち止まる。彼女が僕のブレザーの裾を掴んでいた。こんな事をされたのは初めてだ。

「どうしたの?」

僕は少し後ろを振り返りながら、彼女の様子を伺う。彼女は僕の裾を掴んだまま俯いていて、表情は見えなかった。

「…私、堺君の5匹目の猫で良い。」

「え。」

僕はビックリして思わず踵を返して、彼女に向かい合う。

彼女の瞳が潤んで不安げに揺れていた。何かあったんだろうか。

「本当にどうしたの?」

彼女が黙ったままだったので、ゆっくり喋れる様にいつもの階段に彼女の手を引いて、連れて行った。手を握ったのは初めてだったけど、そんな事より彼女の様子が気になる。


「新しい猫の方が良いの?」

彼女の瞳が切なそうに揺れている。

新しい猫って何の事かと思って記憶を探ると、凛花との会話を思い出した。もしかして聞いていたのかと思う。でも、何故こんな反応なのか分からない。もしかして全部は聞いていなかったのかな?

「家の猫の事?」

「猫?」

「そう、家の5匹目の猫。」

「…本当の猫?」

「うん、本当の猫。ほら。」

僕はスマホの写真を見せた。

彼女はヘナヘナとその場にしゃがみこむ。やっぱり勘違いしていたみたいだ。

「…正式には6匹目の猫になるんだけど、飼い猫になる?」

僕はしゃがみこんだ彼女に手を差し出した。

「…なる。」

彼女は僕の差し出した手を掴んで立ち上がる。

「本当?付き合ってくれるの?」

「うん。飼い猫に昇格させてください。」

彼女の言葉に頬が緩むのが自分で分かった。夢じゃないかと思ってしまう。

「…飼い猫と野良猫の違いって何かな?」

ふと、思い付いてポツリと呟く。

「えっと、所有権じゃない?コレは自分のモノ(猫)ってことでしょ?」

自分のモノ…。彼女が僕を見詰めているのを見て、嬉しさが込み上げてきた。

「…首輪、買ってあげる。」

「え。」

良く考えてみると、6匹目の猫って僕、凄い浮気性の男みたいだ。

僕はおずおずと手を伸ばしてみる。嫌がられてはいない様で、ジッとしている彼女の柔らかそうな髪に触れた。本当に柔らかい。ふわりといい香りがした。ずっと触ってみたかったんだよな、その猫っ毛に。

彼女が逃げない事に、また嬉しさと愛しさが込み上げてきた。髪の毛を手櫛で梳いていると君は目を細めて気持ち良さそうな表情をする。猫だったらゴロゴロ喉を鳴らしている感じだろうか。良くここまで懐いてくれたものだ。どうしよう、可愛すぎる。



「僕、人にはモテた事ないから、仁科さんはやっぱり猫だね。」

僕は隣を歩く彼女に言う。

「…堺君の飼い猫なら、それで良いよ。」

彼女はクスクスと笑って僕を見た。


寒さが緩んだ風が、春の訪れを告げている様だった。

僕達は帰り道を歩く。しっかりと繋がれた手に温もりと愛しさを感じながら。



僕と彼女の距離、0センチメートル。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。短編を書きたくて、考えたお話です。

本当は、募集されていた短編小説に応募しようと思っていたのですが、ジャンルが恋愛は募集していなかったのに気付きました。ちゃんと確認しろよ!と自分に突っ込みを入れつつ折角だからと、投稿してみました。無事完結できた事に安堵しています。また、別の機会に応募できたらいいな〜。

ご意見、ご感想をお待ちしています。

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