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野良猫彼女と僕  作者: さきち
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野良猫の気持ち

2月の終わり頃、三学期の学年末試験の時期が近付いてきた。私達は学校帰りに図書館に行って、一緒に勉強していた。

最近は、教室に居ても息苦しさを感じなくなっていた。彼が居てくれているからだろうか。自分の中での彼の存在が、日に日に大きくなっている気がする。

堺君が休憩しよう言って、外の自販機に行って二人で飲み物を買って飲んだ。彼が私にチョコレートを手渡してくれる。勉強している時には甘いものが食べたくなるんだよね。

「堺君ていつもチョコ持ってるの?」

「仁科さんが、チョコ食べてると幸せそうな顔するから。」

「…そうだったんだ。」

私の好みに合わせてくれていたのか。嬉しさと、照れくささを感じた。少し赤くなってしまった頬が、彼に気付かれませんようにと祈る。

「猫によって好みって違うんだよね。家の猫は餌バラバラだもん。」

「堺君の家の猫は幸せだね。」

「…飼い猫になる?」

堺君は悪戯っぽく私を見て、ニヤリと笑う。

「…今はまだ野良で良いかな。餌付けもして貰えるし…。」

彼から視線を逸らして、私は前を向く。

「飼い猫になりたかったら、いつでも言って?」

「…うん。」


一緒に過ごす時間が、幸せで愛しいと感じる。彼の事は好きだけど、飛び込む勇気がまだでない。彼はずっと待ってくれている。申し訳ないとは思いつつ、やっぱりまだ怖さがあるんだ。臆病な自分が情けなくなる時もあるけど、彼はその気持ちごと受け容れてくれてる様な気がする。

私はいつか、これだけじゃ満足できない様になるのかな?もっと近付きたいと思う様になるのかな?

隣に座る彼を見詰めると、目を細めて微笑んでくれた。やっぱり、好きだな…。



3月に入って寒さが緩んできた頃、学年末試験が終わって、通常の日々が戻ってきた。今日は部活が終わったら、彼と会える。試験中は一緒に過ごせなかったので、凄く久し振りで楽しみだ。早く放課後にならないだろうかと考えてる自分に気付く。

そんな事を考えていたら、前を歩いている彼の背中が見えた。女の子と一緒に何かを運んでいる様だ。何を話してるんだろうと気になった。耳を澄ませる。


「野良猫さんとはどうなってんの?順調?」

アレって、私の事だよね?女の子が彼に問いかけている。

「う〜ん、どうだろう。しばらくは野良のままが良いってさ。」

「…程よく断られてんじゃないの?」

違う!違うよ!心の中で否定する。

「…いや、そんな感じではないよ?」

彼の言葉にホッとした。

「新しい猫見つけたら?」

ドキリと心臓が脈打つ。

「新しい猫、もういるよ?今その子に夢中なんだよね。」

「え!誰?誰!?」


頭が真っ白になって、その場に立ち止まる。彼らは私に気付かず離れて行く。


私が居心地が良いと思っている場所は、他の誰かにとっても同じなのかもしれない。私は落ち着かない気分になる。他に好きな人が出来たのかな…。不安で仕方がない。

その後の授業にも身が入らず、上の空だった。彼の背中ばかりをチラチラ見てしまう。


部活が終わって、いつもの様に屋上に続く階段に向かっていたら、堺君と出会った。にこっと笑う彼は普段と変わらない。私の少し前を歩く彼の背中を見詰めた。何処かに行ってしまいそうな気がして、彼のブレザーの裾を掴んでしまう。

彼は少し驚いた様に立ち止まった。

「どうしたの?」

「…私、堺君の5匹目の猫で良い。」

「え。」

お願い。何処にも行かないで。



私と彼の距離、5センチメートル。

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