プロローグ
宇宙空間を偶然手に入れた古い、信憑性のない星図で進むこと一週間。果たしてそこには、忘れ去られた小型の工場コロニーがあった。
「本当に……あった……」
コンピューターを操作し、各種スキャンとネットワークへの接続を試みながら、作業着をルーズに着た銀髪で色白、幼女のような外見の少女は呟いた。
「いえーい!」
その後ろでジャケットとミニスカート、その下の健康そうな四肢を身体にフィットするスーツで覆った少女が元気に喜んでいた。飛び跳ねると赤毛のお下げ髪跳ねる。そして、兵装管理席に座る、和風のコンバットドレスに身を包んだ長身の美女とハイタッチ。
「まだ動くなら相当のお宝でござるな!」
美女が興奮気味に言う。
「はやる気持ちは分かるが、いつもの通り行こう」
コート姿の美人が落ち着いた声で、一段高いキャプテンシートから立ち上がって告げた。
「ルーマール」
「ん……」
テンションの低い声で、コンピューターをいじっていた少女が応えた。
「AIと一緒に、情報収集とハッキング、それとバックアップを任せる」
「任された……」
ビッとサムズアップ。
「ビオスは自分と戦闘装備で突入」
「承知」
そう言って長身の美女は脇に置いてあった刀の鯉口を切って刃を確認。刃がレーザーで光り、青い髪と浅黒い肌が照らされた。刃の状態に満足げに頷くと、立ち上がってそれを腰に差した。
「メイ」
「ハイ!」
元気な少女が応える。
「突入七つ道具を背負って着いてこい」
「ええ〜……」
そう言われて急に元気をなくす。
「あれ、ちょっと重いんだべ……」
突入七つ道具とは、物理的に扉や構造物を開ける際に必要なビームカッターなど大型の作業機械の事だ。本来到底、人一人が持てるような装備ではない。
その様子にキャプテンシートから飛び降りながら、コートの女性――レイは苦笑した。
すれ違い様に頭をなでながら「頼りにしてる」と笑顔で言われて、メイがはにかむ。
「さあ、仕事だ。各員の奮闘を期待する!」
だが、これから語るのは、この忘れられたコロニーで起こった人に反旗を翻し魔王と呼ばれるまでになった警備ドローンとのひと騒動のお話ではない。
これは広い宇宙で、彼女たちが巡り会うお話――。




