ハゲのおじさん異世界に行く
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異世界召喚。それは、その世界が魔王によって危機的状況に追い込まれた時に、異世界から勇者を召喚し、世界の危機を救うというものである。
そして、正に今その異世界召喚が行われようとしていた。世界は魔王により魔物が溢れ、魔物による襲撃で、人は傷つき、数を減らしている。
そんな状況から、すべての国が協力し、その国一番の魔法使いを出し合い、異世界召喚を行う事を決定したのだ。
異世界召喚召喚で呼ばれる者は、圧倒的な力を持ち、その姿は、黒髪であり、眼も黒色という、この世界にはない珍しい姿をしているらしい。
召喚陣に魔法使い達が魔法を注ぎ始めた。それぞれの額には汗が浮かび、陣は徐々に光を増していく。
そして光が部屋全体を包み込み、光が収まった時そこにいたのは...若い黒髪の男女四人と、髪の毛の無いハゲのおじさんだった。
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俺の名前は無髪 屠毛。冗談のような名前だが、しかもつけられた事を思わず恨んでしまいそうな名前だが、これが俺の名前だ。
更にその名の通り、俺の頭部に毛はない。屠られてしまったのだ。二十代で...なみ○いさんレベルではない。横にすらないのだ。あんなもの、まだまだマシな方だと思う。
植毛すらダメだった。身体が受け付けず、つけたその日の夜には、体調を崩してしまう。
だからといって、カツラ。お前はダメだ。負けた気になってしまう。
という事で、俺はハゲの四十代のおじさんなのである。結婚もしてないし、親は早死にしてもういない。金はある。独身貴族なのだ。決してハゲなせいで結婚できないわけじゃない。
そんな俺はいつもの様に、会社での仕事を終え、駅に向けて歩いていた。嬉しい事に、俺はホワイトな会社に就職できたので、まだ空は明るい。部活終わりの学生だって歩いている時間だ。
その後特に何事もなく駅に着いた俺は、電車が来るのを待っていた。ベンチに座って。最近ずっと立ってんのしんどいんだよ。察してくれ。
前を見ると、学生の男女二人ずつの四人組が仲よさそうに話していた。美男美女しかいない。妬ましい。殺意全開。パルパルパルパル。とはならない。もう結婚願望もない。枯れたわけじゃないが、一人でいる気楽さに慣れてしまったんだ。
っと、そろそろ電車が来るみたいなのでその学生達の後ろに並ぶ。
「なっ!何だよこれ!」
何だか騒がしいので学生の方を見てみると、何という事でしょう!彼らの足元に厨二病くさい魔法陣が広がっているではありませんか!
急な事に驚きすぎて、ビフォーでアフターな喋り方になってしまったが、どういう事なんだ?ドッキリか?
しかもよく見ると、ギリギリ俺の足元まで広がっている。離れようとしても、足が離れない。そして、光がだんだん強くなってきて...
目を開けると、青い顔をして今にも倒れそうなコスプレした人達と、やたら豪華な正にイメージ通りの王様!といった感じの人達がこっちを見ていた。・・・どうなってんだ?
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しばらく説明を受けたが、どうやら此処は異世界らしい。頭がおかしい奴らに誘拐でもされたのかとも考えたが、魔法を目の前で見せられては、納得せざるを得ない。
この魔法陣は勇者を召喚するためのものだったらしい。しかしふざけた事に、あの4人は勇者だが、俺は勇者と認められないらしい。問いただしたところ、勇者の特徴としては、黒髪の黒色目を持った人物らしい。
...つまりアレだな。俺はハゲのおじさんだから勇者じゃないって言いたいんだな。クソッタレ!ハゲってだけでこんな事になんのかよ!
まぁ良い。ここは大人の余裕というものを見せてやろう。まず、俺の今後の扱いについて聞かないといけない。ハズレだから殺されるなんて事になっては大変だからな。という事で、
「私は今後どうなるのでしょうか!!」
土下座。日本の文化。俺の必殺技だ。カッコよくない?余裕はどこにいった?何を言っておる。プライドがなんじゃい!作戦は命大事にだ!
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その後話を聞いたのだが、特にどうするとかはないらしい。魔王討伐のために勇者(4人は魔王討伐をすると決めたらしい)と一緒に戦っても良いし、商人になっても冒険者になっても良いらしい。勝った!
更に、この世界にはステータスというものがあるらしい。ド○ゴンクエストみたいな感じらしい(勝手な解釈)。それでは言ってみよう!
「ステータス!!」
無髪屠毛
レベル1
ユニークスキル
ハゲ魔法
ノーマルスキル
なし
・・・・・は?意味がわからない。名前は合ってる。レベルが1なのも、魔物を倒してないので別に良いだろう。でもユニークスキルは喧嘩を売ってきているとしか思えない。
ヒッヒッフー。落ち着け俺。ステータスは詳
しく見れるそうじゃないか。よし、逝くぞ!
ハゲ魔法
ハゲの中のハゲ。つまりキングオブハゲのみが習得できる魔法。過去に発現した者はいない。このスキルを使用した時、君は奇跡を起こすだろう。
・・・・・は?もう一回言うぞ、は?なんの説明にもなっていない。これでは身の振り方をどうすれば良いのかわからない。
少し相談してみると、訓練場という場所で、スキルの練習をしてみれば良いと言われ、成る程と思い、行ってみることにした。
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着いてみると、勇者達が既にスキルの練習をしていた。どうやら試してみたくて仕方なかったらしい。
光輝く剣を振っていたり、七色の魔法を放ったりしている。勇者してるなぁ。
それに比べて俺は...まず使い方が分からない。普通はスキルが発現した時に自動的に使い方がわかるようになるものらしい。使い方がわかってもどの様な効果があるのか分からない時にステータスで細かくみるらしいが、俺の場合何故か使い方が分からない。そして説明を見ても分からない。無い無い尽くしでどうすればわ良いか分からない。
これじゃあいけないと、危険な世界らしいので、武器を教わってみる。遠くから攻撃したいが、弓は無理そうなので槍にしてみる。
重い。こんなのを持って戦える気がしない。短槍なら辛うじて振れる。遠くから攻撃したいという当初の目的は何処かに行ってしまったが、取り敢えず身を守る手段は手に入れた。太っ腹な事にその短槍は貰えるらしい。ありがたい。
しかし、こんなザマで魔王と戦えるとは思えない。魔王討伐は辞退させてもらった。取り敢えずは冒険者になってみようと思う。そう言うと、何と、資金もくれるらしい。ありがたやありがたや。鎧はその資金で買う為に、少し増額してくれているらしい。
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と言うわけで、話もそこそこにやって来ました異世界の街。人が沢山いる。人混み恐怖症というわけでもないので全然問題ないが...
第一目的は、泊まるところを見つける事である。冒険者ギルドとどっちに先に行くか悩んだが、異世界初心者でいきなり野宿はやばいと思ったので、宿を探す事にする。
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あっさり見つかった。まぁ、人に聞きながらなのだが。宿の女将さんにしばらく泊まるであろうことを告げる。毎日払う人と、一括でまとめて払う人の二種類がいるらしい。
この先お金がどのぐらい必要か分からないので、取り敢えず一泊分払う事にした。
意外と清潔である。因みに街の中で野グソなどをすると捕まるらしい。日本並みとはいかないが、不快に感じるレベルではない。
荷物はどうしているかというと、魔法の袋というものがこの世界にはあり、それを貰った。短槍も入った。という訳で、袋以外の荷物は無い。
よし、それじゃあ冒険者ギルドにいきますか。
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到着!!かなり大きめの建物で、入ることを少し躊躇ってしまいそうだ。まぁ、俺は気にしないがな。入ってみると、酒場が一緒にある様で、酔っ払った男達がそれなりにいた。昼なのに。女はあまり多く無い様だ。
列があり、その奥の受付には綺麗な女の人がいた。誰も並んでいないガラガラのおっさんがいる受付もあったが、俺は迷わず美人を選んだ。誰が行くってんだ!あんなおっさん!
しばらく待っていると、俺の番が来た。
「いらっしゃいませ。どの様な御用でしょうか?」
ここは、俺の社会人経験を生かして...
1「綺麗ですね。あなたの名前を教えてください。」
2「ちょっと姉ちゃん俺と一緒に来いよ!」
3「冒険者の登録に来ました。」
2は論外。1を選びたいのは山々だが、そんな事をすると、周りの冒険者の反応が怖い。よって、
「冒険者の登録に来ました。」
無難の何が悪い!セーブもロードも無いのだ。安全第一に決まっている。
「承りました。字が書けますでしょうか?」
実はこの世界の言葉を話せる様になっているのと同時に、字も書ける様になっている。
という訳で書き込む。それを渡して暫くすると、
「貴方は冒険者ギルドの一員と認められました。説明はいりますか?」
勿論イエス。説明された事をまとめると、俺の今のランクはFで、最高はSランクらしい。ランクを上げる為には、強さと、誠実さを見せないといけないらしい。成る程。
依頼を受けるより先に装備を整えた方が良いとのことで、初心者向けの装備を売っているところを紹介して貰った。
鉄の鎧は重すぎて装備出来なかったので、皮の鎧にした。まるで、モ○ハンの初期装備の様だ。まんまコスプレだな。
そして、日も落ちてきたので、宿屋でゆっくり休んだ。
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朝起きて飯(宿屋で料金に含まれていた)を食べて、ギルドに向かった。
そして、ホーンラビットの討伐を受注した。五体倒せば良いそうだ。期限は特にないらしい。これでレベルを上げよう。
外に出る。ホーンラビットは森にいるらしい。
入って直ぐに見つけることができた。短槍を構え、突く!不恰好だったが、無事討伐できた。おっと、レベルが2に上がった様だ。身体能力が少し上がった気がする。スキルは変化なし。
その後も狩り続け、五体討伐をしきった。終わったと思い油断してしまったのだろうか?
突然目の前から頭に向かって飛んでくるホーンラビットに反応できなかった。死ぬ。しかし、ホーンラビットの角が頭に当たったその時、
ガシャン!!
何とホーンラビットが数倍の威力で跳ね返され、バラバラのグロイ死体になったのだ。
その後小石などで実験してみたところ、俺の頭は衝撃を数倍にして跳ね返す様だ。ヤバすぎる。頭だけ無敵だ。コレがハゲ魔法だと言うのなら、言いたい。魔法要素はどこ?
そうは言いつつ、折角の異世界。俺はしばらくの間依頼をこなしレベルを上げつつ魔法の特訓をするのだった。
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10日後。出来た。魔法的なことが出来てしまった。頭から光を放つフラッシュ。頭に手を滑らせることによって発生する摩擦を強力にして放つファイヤ。空気中の水分を頭に集めて放つウォーターカッター。
手からは放つことが出来ない、馬鹿みたいな魔法だが、威力は素晴らしい。魔物の視力を奪ったり、岩を溶かしたり、ぶった切る事が出来るほどの威力だ。十分である。
そうして、俺はランクも上がり、生活を安定させていくのだった。
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ハゲには夢がある。ロマンがある。ハゲにしか出来ない事だって沢山ある。そんな事を異世界で俺は知った。ハゲだって頑張って生きていける。そんな世界に俺は生きていく...
どうでしたでしょうか?
ハゲってすごいんだぜ!雨だって誰よりも早く気付くんだ!
評価してくださると嬉しいです。
私がいつも連載してる小説です。こちらも読んでくれると嬉しいです。
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