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奏でる詩(うた)は音色に乗せて  作者: 日野 詩猫
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Aメロ:始まりの朝

目覚ましであるスマホのアラームが鳴り、締め切ったカーテンが揺れる。それと同時にバタバタと2人分の足音が階段を駆け上がる。俺はスマホのアラームを止めて耳を塞ぐ。すると勢いよく部屋の扉が開けられ、2人の女子が断りもなく部屋に入ってくる。


「おはよー!奏汰かなた!!起きろ遅刻だぞ!!」


女子にしては低く、下手したら男に間違われるような声が響き渡る。彼女は胸下まで伸びた焦げ茶色の髪を半分だけ結って…確か、ハーフアップだとか言っていた髪型をしている。前に「その髪型意味あんの?」って聞いたらグーでみぞおちを殴られた。


かなちゃん、早くしないと電車間に合わなくなっちゃうよ」


続けて、聞いただけでは男としか思えない低い声が優しく響く。吸い込まれそうな長い黒髪を右側の耳横でひとつにまとめた彼女は、困ったように微笑む。彼女は朝ごはんと思われるおにぎりが2つ乗った皿を両手で持っていた。

俺はまだ閉じそうになる瞼を軽く擦りながら起き上がり…いや、2人に無理矢理起き上がらせられる。


「おはよう。詩葉うたは音色ねいろ…」


少し掠れた声でそう言う。すると2人は「相変わらず声高くて羨ましいよ、まったく」「ね〜、私たちほんと声と見た目合ってないよね」と話し出す。因みにサイドテールが八重柏詩葉やえがしうたは、ハーフアップが淡雪音色あわゆきねいろだ。

2人は俺が着替えようとしても気にせず話を続けている。なので俺も気にせず制服へと着替え始める。

……いやまぁ、幼馴染みだからとは言え男として見られていないのには少し腹が立つがそれはそれだ。

ぶっちゃけ俺もパンツさえ履いていれば裸を見られるのも今更全然恥ずかしくない。

まぁ2人は全然こっち見てないんだけどね。


薄い水色のシャツ、クリーム色のカーディガン、ジャケットと順番に着ていく。俺は着替え終わると部屋にある作業机の椅子に座り、置かれたおにぎりを食べ始める。

同時に、スマホで昨日の動画再生数のチェックを始める。すると詩葉うたはは俺の髪を弄りながら俺のスマホを覗き込む。


「それって、昨日のやつ?」


いつの間にか隣に来ていた音色ねいろも俺のスマホを覗き込んでそう聞いてきた。

昨日の、と言うのは昨日の21時にUPした俺たち3人で歌った動画の事だ。カラオケという趣味が拗れて上げていた歌ってみた動画だったが、いつからかコメントが貰えるようになり、いつの間にかそこそこ有名なものになってしまった。

…まぁ、超人気歌い手グループとは全然比べ物にならないんだけど。

それから毎朝コメントや上げた動画の再生数をチェックするのが日課なのだ。


「まずまず…いや、なかなかなんじゃないかな」


昨日UPした動画とコメント、新着ランキングを見て俺はそう答えた。

3人のSNSアカウントでそれぞれ告知していただけあって、反応も閲覧数も上々。SNSの方にも感想コメントが結構来ている。

でも…


「ランキング、全然ダメだ」


こればっかりは数ヶ月前から伸び悩んでいる。

やっぱりただ歌っただけの動画では難しいらしく、オリジナルのPVが付いてたり、描き下ろしイラストの動画の方が人気がある。

俺たちは一斉に肩を落としてため息をつく。

ランキングは上がらないし、かと言って俺たちのできる手はもう既に出し尽くした。


ふとSNSのコメントを見ると、丁度「絵付けないんですか?」という文字列が目に入る。

俺たちだって考えた事はあった。絵を付ければ閲覧数もコメントも、諸々伸びるのでは?と。

だが俺たちの画力は散々だった。一応美術部の俺でさえ、曲と俺たちの声に合うようなイラストは描けなかったのだ。

今から練習した所で、道具を揃えて週に1回あるかないかの部活で練習して…は厳しいだろう。

そして俺たちの知り合いにイラストを描いてくれるような人はいないのだ。ネットでも学校でも、3人とも人見知りを発揮して殆どお互い以外と話していない。


「あっそうだ。イラストの事なんだけど…」


暗くなってしまった雰囲気に、俺の髪を弄り終えた詩葉うたはが何かを思い出したように切り出す。

俺の髪は後ろで1つに結われ、前髪は持ち上げられて…確かポンパドールだったか、ヘアピンで留められていた。


「私の学校で、同じ学年にすっごい絵が上手な人がいるんだって〜。今日その人探してあたってみようかなーって」


詩葉うたは曰く、その人はいつも絵を描いていて授業もろくに聞いていないんだとか。(でも勉強は出来るらしい)

しかも一度ノートパソコンと…ぺんたぶ?を持参して絵を描き、見事に没収されて怒られたらしい。


「ホントなら凄いじゃん!よーし詩葉うたは、頼んだっ!!」


音色ねいろ詩葉うたはに勢いよく抱きつきはしゃいでいる。

言い忘れていたが詩葉うたはは俺たちとは別の高校に通っている。俺と音色ねいろが同じ学校で、詩葉うたはの通っている彩江高校あやえこうこうの方が俺たちの通っている花央高校かおうこうこうより偏差値が20くらい上だ。

ハッキリ言ってこの辺のエリート校である。


「ねぇ、所で…そろそろ時間じゃない?」


俺はスマホの時計を見せながら2人に言う。

時刻は7時15分を過ぎようとしている所で、それを見て2人の顔が青ざめる。


「やばい、ほんとに遅刻するーーーっ!」


音色ねいろの叫び声を合図に、俺たち3人は階段を駆け下りて家を飛び出した。

始めまして、日野です。

この間行ったカラオケで思いついた行き当たりばったりのネタですが読んで貰えたら幸いです。

元ネタは全員女の子でした。

因みに奏汰はアルビノくんです。

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