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プロローグ

世界観のお話になってしまうので苦手な方は一話からご拝読下さい。


 ───人生を楽しく、面白く、そして魅力的に生きるために一番必要なものはなにか?


 この問いに対することは人によってさまざまだろう。

 『金』、『名声』、『誇り』、『グルメ』なんていう食いしん坊もいれば、『○○ちゃん!』という次元を超えた存在を解答する人もいるだろう。


 全て正解だ。

 それが、その人にとって大切と思えるのであれば、それは紛れもない事実なのだろう。

 つまるところ、この問いに対する唯一無二、百点満点の回答なんて存在しない。

 なにを答えたところで全て正解───けれど、百点ではない、満点ではない。

 そんな『問い』をある人は「哲学的な深い問い」と言う、またある人はこう一蹴するだろう。


 ───「愚問」、と。

 

 愚問───くだらない、無益で答えるに値しない問い。

 そんな『愚問』の模範解答の一つにこんなものがあるので紹介しておこう。


 「人生を楽しく、面白く、そして魅力的に生きるために必要なもの。それは誰かに『恋』をして『愛』することすなわち『恋愛』だ」


 太古の昔から人間は自分の異性に対する想いを表現するために様々なものを創り、発展させてきた。

 

 想像してほしい、世界から『恋愛』の二文字が消えたのならば、誰かを想うことで生まれる『喜び』や『悲しみ』、『憎しみ』という人間にとっての当たり前(・・・・)が奪われた世界を───。


………

……


 ───時は、2316年。


 200年前に勃発した第四次世界大戦で日本もその戦禍に巻き込まれ国土のほぼ全てを焼け野原にされた。

 しかし、焼け野にされた中でも残された人々はその大和魂を胸に不屈の精神で復興を遂げつつあった。

 だが、復興が進むにつれ大きな問題が発生した。

 ───人口増加による食糧問題。

 しかし、日本を含め世界の殆どが焼け野原になった戦後において輸入などできるはずもなく、日本は窮地に追い込まれていった。

 追い込まれた新・日本政府はこの問題の『食糧面』で解決するのではなく『人口面』を解決することにした。


 ───『日本国復活法』。 


 日本はまず地方自治を改革した。

 これまでの都道府県制を廃止、東京都の周辺に巨大な壁を設置し『特区』と定め、それ以西を『女性州』、以東を『男性州』として完全に分断。そして、北海道を『完全農業地帯』とする二州一道一区の道州制を採用した。


 続いて、日本国民を『正統貴族』と『通常国民』の二種類に分類した。

 『正統貴族』は戦後の裕福層の一族で『特区』の居住を許可された選民であり、それ以外の『通常国民』は男女に完全分断され東西の州に住むことになった。

 これにより政府は『特区』以外での男女の結婚、交際を完全に禁止、つまり日本の国民の大半から政府は『恋愛』を奪い去った。

 それに合わせ男女の『恋愛』がテーマあるいはそれが登場するドラマ、アニメ、ゲーム、書籍の禁止(なぜか百合、BLは禁止されなかった)特に、書籍の規制は厳しく、ライトノベルや同人誌までその法は及んだ。


 人口増加に歯止めを掛けることに成功したものの、ほんの一握りの『正統貴族』の繁栄だけではさすがに日本国から人口が減りすぎる。

 それをまるで予期していたかのように、政府は人口受精と人口子宮の技術を発達、受精から出産までを全て人工でおこなうことができるようになった。

 まはや、人間は人工的に造り上げられるホムンクルスと化してしてしまった。


 当初はこの政策に国民は不満を持ったが『特区』に蔓延るほんの一部の裕福層の卑怯で卑劣な圧迫と戦後の国民全体の疲弊により反乱、クーデターは一切として起こることはなかった。

 そして、いつしか国民は一部の裕福層の貴族が住み着く、誰かに恋し、愛することができる高い壁に囲まれた旧・東京都をこう呼ぶようになった。


 ───『恋愛特区』と。


………

……

 

 『日本国復活法』が施行されて100年の時が過ぎた。


 100年という地球規模で考えればほんの一瞬の長い時間は男が女を、女が男という存在を空想上のものと認識させるには充分なものだった。

 しかし、皮肉にもこの分断が日本国の復興を目覚ましく発展させ、たったの100年で日本は食料自給率99%を誇る超先進国となった。


 そんな、偽物の『豊かさ』が蔓延する時代に本物の『豊かさ』を求める少年(キボウ)が誕生しようとしていた。


 それは『恋愛特区』のすぐ隣の地区『男性州第一地区(旧・埼玉県)』から始まる。 


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