Lesson3「ぷりん党 IN 聖夜祭」 10
「ちょっと、瞠。待ちなさいよ」
キララが私の肩を掴み呼び止める。そこでようやく私は足を止めた。気がつけば正門の前まで来ていた。
「なんだ?」
「なんで独りで帰るのよ」
「キララには関係ないだろ」
「関係大ありよ。話は聞かせてもらったわ。私の事を嫌いになってもいいけど、あの子のことは許してあげてよ」
「許す? 隼人はこの半年間、私に男だと嘘をついていたんだぞ」
「それがなんだっていうの? 男だと思っていたのが、実は女の子だったってだけじゃない。それの何処に問題があるのよ」
「問題大ありだ。ぷりん部は女子禁制なんだぞ。部長である私を騙して入部したんだ。これは禁忌を犯すくらい重罪なんだ」
「それはあんたが決めた事でしょ? 男女差別しないでよ」
また、差別か。冬也も同じ事を言っていた。
「なぜ、お前がそこまで隼人をかばうんだ? キララには関係ないだろ」
「私も同じだからよ」
「同じ? 私を騙したことか?」
「違うわよ」
「なら、なにが一緒なんだ?」
「好きなの」
「えっ?」
想定外の応えだった。
「あの子は、あんたが好きだからぷりん部に入部したのよ。好きなのに見てもらえない。好きだから一緒にいたい。それなのに、あんたは女子禁制って言っているし。だから、男装してまで入部したんじゃない。私だって、一緒にいたいから、なにかと理由つけてあんたを……」
キララの目に涙が溢れる。
二人の間に沈黙が流れた。
「あっ、おったおった」
黒蝶が息を切らせながら走ってきた。私は黒蝶を一瞥し、無言で視線をずらす。
「いったい、どうかしたと? いきなり瞠がどっか行くけんビックリしたと。あの子は泣いちゃうし、もう訳が分からん」
「私も訳がわからん」
私はそう言って二人を残して走った。
もう、どうすればいいのか分からない。
好きってなんだ?
私はその気持ちにどうしたらよいのだ?
走る私の頬を冷たい何かが当たった。
空を見上げると雪が降っていた。
ひどく、隼人との思い出が全て嘘だったような気がした。
私は寂しく降り注ぐ虚空を見つめ、
「師匠。こんな事態を解決してくれる秘術を教えられていません」
そう呟いた。
世間はホワイトクリスマスだと言うのに、私の心は雪に埋もれそうに、苦しかった。