Lesson3「ぷりん党 IN 聖夜祭」 05
私を含め、愉快な仲間たちは第一体育館に通じる並木道を歩っていた。私は、先ほど中庭にあった射的屋「意中のハートを狙い澄まし」で、見事手に入れた残念賞の小説を持っている。残念賞の景品が小説とは、作者に失礼だ! と、思いつつも手ぶらで帰るのもしゃくなのもあり、私は受け取った。
目の前を歩く乙女が手にするのは、非売品のイケナインジャーフィギュア。見事に中心を狙い澄ました彼女は、楽しそうにスキップをしている。続いた私たちも、彼女の幸運にあやかろうと、目的の商品に狙い澄ました結果、三人とも残念賞を獲得したのだ。私は小説。キララは吹き矢。黒蝶はボンボン(水風船)。なんともアンバランスな組み合わせである。それにしても、乙女がイケナインジャーフィギュアを大切に持っていることから、彼女もイケナインジャーが好きらしい。それだけでも、親近感がわくではないか。
並木道は色とりどりの電球が取り付けられ褐色ずいている。夜になれば綺麗なイルミネーションが見られるだろう。
「あれはなんでしょう?」
先頭を歩いていた乙女が指差した先を見ると、パンチパーマの男が懸命に木をよじ登っていた。
「こら、パンチ。こんな往来でなにしとるか?」
パンチパーマの呼び名が「パンチ」だったことはあえて触れないでおく。
次第に野次馬も増えてきた。なんだなんだ? 私はパンチの動向を見守ることにした。
そのとき、木のてっぺんからニャーと鳴くのが聞こえた。
「子猫ね」
キララが言った。
「なるほど。パンチさんは子猫を助けようとしているんですね」
まったく……。このレトロ集団は毎回違った演出で登場するな。初めは逆恨みで私を襲ったと思えば、次は全身タイツ姿で現れ、今回は子猫を助けようと木をよじ登っている。
「こらパンチ。絶対、子猫を助けんといかんと」
黒蝶がボンボン(水風船)を握り潰さんばかりに握り絞める。
「おうよ。任せておけ」
パンチはおぼつかない足取りで子猫のいる所までたどり着いた。緊迫の一瞬。子猫は爪を立てて木に必死にしがみついている。バランスをとるためパンチは両手で子猫を掴むことが出来ない。それでも、なんとか子猫を木から引きはがし自分の胸に抱いた。次の瞬間。
落ちた。
引っ掛けてあった足場が滑り。真っ逆さまだった。
落下地点には黒蝶が待ち構えている。両手を出し「むむむ」と力が入る。が、パンチが落下してくるギリギリのところで黒蝶は避けた。当然の判断だろう。実際、落ちてくる人を両腕で受け止めるのは不可能。ある程度の高さから落ちたなら巻き込まれないように逃げるのが得策である。
「いでええええ。黒蝶、なんで受け止めてくれねえんだよ」
「あんたを受け止めたら、うちも巻き込まれるけん。仔猫が無事ならうちはよかと」
「そりゃねえよ」
パンチが腰を押さえながら言った。そして、両手に抱きかかえていた仔猫を見て「お前は大丈夫だったか?」と優しい声を掛けた。が、仔猫は「にゃ」っとパンチの鼻先に爪を立て、一目散に逃げていった。踏んだり蹴ったりである。




