第六話 一緒に遊ぼう
「それでは数えますよ?いーち、にーい、さーん、しーい、」
「それじゃあ、全力で逃げるよ!」
「分かってる!捕まりたくないよ!」
現在庭で鬼ごっこをやっている。え?隠れ鬼の間違いじゃないのって?レモンが早すぎるから、その間に私とスノウが全力で逃げる為のカウントダウンだよ。制限時間は十分。その間に、この無駄に広い庭をできるだけ遠くに、尚且つ見つかりにくい場所に逃げなくてはいけない。
因みに見つかった時の罰ゲームは、私は一週間真面目にスキルを習得する。スノウはレモンの作ったお試しダンジョンの探索。
因みにダンジョンの使い道は、侵入者に使うそうだ。これを聞いて分かる通り、かなりえげつないダンジョンになっている。
スノウは涙目で必死に走っている。因みに、これは走行スキルを上げる訓練の一つだったりする。私がノリで、遊びながらスキルって習得できないの?の一言で、スノウにこんな試練を味あわせることになるとは思って無かったけど、これはこれで頑張ろうと思う。
「じゅーう!それでは捕まえに行きますね!」
嬉しそうなレモンの声が、地獄の誘いの様に聞こえた。うわあ、幼女が鬼ごっこで追いかけてくるだけのはずなのに、何だかすごく怖い。
全力で逃げる中ふと思った。私、走るのすっごい苦手。ゼーハーと息を乱しながらそう思った。それと同時に、スノウの悲鳴が響き渡った。
ああ、捕まったのか。
そう悟ると、私は世界チャンピオンを狙えるんじゃないか?と思うほどのスピードで庭を走り回った。何とか、私は逃げ切ることができた。
余談だが、私は追いつめられると、誰に喋っても信じてもらえないんじゃないか、と思えるほどの事をしでかしたりする。恥ずかしいからあえて例え話は出さない。
「ではスノウ。これからあなたをダンジョンにぶち込みますから。ご武運を。」
そう言って、笑顔でスノウをダンジョンに放り込むレモンを、私は動かない疲れ切った体で眺めていた。
「そう言えば今更だけど、なんでスノウがここにいるの?」
「可笑しいですか?」
思い返せば、西暦が無いとレモンは言っていた。私がここにきてまだ二年しかたっていないはず。それなのにスノウはどう見ても私の肉体年齢と同じくらい。どう考えても年代が一致しない。
「ねえレモン、この世界の西暦は今何年?」
「ざっと五百年ですね。」
「え!?」
あれ?何時の間にそんなに月日が経過してたんだろう?
「前にマスターが冬眠していたいと仰っていたのを思い出して、ざっと五百年冬眠させてみました。」
「え~。」
何だか微妙な心境だった。
確かにそんな様な事を思った記憶はある。堕落生活楽しかったよ?でもね。冬眠させるときに説明はしてほしかったよ。
「それでは、ダンジョンの様子を見物いたしましょうか。」
レモンは嬉しそうに、私を抱えてリビングに移動した。
その際、レモンの表情が狂気染みていることに気がつき、まだ放り込まれたばかりだというのに、
スノウが死んだ?
そんな不吉なテロップが、頭の中でなった気がした。