第一話 ファンタジー
綾町閑杞さん、突然ですがあなたは死にました。そんな不運にあってしまった貴方に別の世界でやり直せるチャンスを差し上げます。叶えられる願いは3つです。神様らしき人物にそう言われ、私は迷うことなく3つの願いを述べた。
「じゃあ、なんでもできる万能なメイドさんと、私の肉体年齢を10歳の時に戻してついでに不老不死にしてほしいのと、私に底なしの才能をください。」
「育成ゲームがお好きなんですか?」
「大好きです。」
特に幼女を育成して、可愛い見た目とは裏腹にチートです。って知った時の他のサブキャラクターのリアクションを見るのが好きだったりする。
人の驚いた顔を見るのが好きなんだよね。
私の願い事は問題なかったようで、神様は何も文句を言わず微笑みながら手を振ると私の意識は薄れていった。
今更だけど神様、金髪ロン毛のめっちゃ美人さんだった。何か通信手段を貰えば良かったかな?薄れていく意識の中そんな事を考えた。
私が目を覚ますと目の前には金色の長い髪にエメラルドグリーンの目をした。メイド服を着用した幼女の姿があった。
「おはようございます。マスター。」
ニパッと輝かしい笑顔であいさつされた。
その現状に思わず飛び起きた。周りを見渡すと、広大な大地があるだけだった。森どころか草も見当たらない。
「ご説明させていただきますね。私は神様から遣わされたあなたのメイドです。名前はまだありません。なので早速ですが、私に名前を付けていただけますか?」
「な、名前?えとじゃあね。」
どう見ても洋風系の顔立ちだ。日本名より外国系の名前が良いかな?どうせなら日本名と外国名を足した感じにしよう。
「金髪だからレモンね。」
「畏まりました。これから私はレモンと名乗ります。」
安直な私の提案を、嫌がる素振りも見せず笑顔で受け入れた。
「名前が決まったところで、続けてご説明させていただきます。今現在のこの場所はマスターの住んでいた地球とは別世界で所謂ファンタジー世界になります。そして、ここからが重要なのですが、このファンタジー世界の西暦はありません。たった今つくられた世界なのです。」
「嘘!?」
冗談抜きで、自分の目玉が飛び出てくるんじゃないかと思うほど驚いた。
「嘘ではありません。現在マスターのレベルは最低ランクの状態です。これからマスターはご自分を育成しますよね?幸いこの世界では、魔法や鍛冶師や農業と言ったスキルを習得することが可能です。やり方や習得方法は随時私の方から連絡させていただきます。現在のマスターの肉体は不老不死なので猶予はたっぷりあります。この世界はマスターが能力を習得したり、レベルが上がれば発展していくようにプログラムされていますので楽しく育成ライフを過ごしましょう。」
笑顔で説明され、取り敢えず最初に何をすればいいんだろう。
「そもそも今この世界にモンスターはいるの?」
「いません。ですから最初は私がお相手いたします。」
そう言ってレモンは私に向かってお辞儀をした。
いや、如何しろと?
私が狼狽えていると、思い出したようにレモンが顔を上げた。
「マスターこちらをご覧ください。」
そう言ってレモンは鏡を取り出した。鏡を見ると小さいころの自分の姿が写っていた。よくよく見ればめっちゃ縮んでいる。でも、髪が伸びているところを見ると、若い時にちゃんと戻っていると分かった。シミひとつない真っ白な肌、艶々とした長い黒い髪、まだ純粋だったころだったからなのか黒い目はキラキラと輝いて見えた。
「おお!」
思わず感動した。ムニムニと自分のほっぺをつまんだり、ちょっと走ったりしてみた。
levelup
ん?ゲームで聞こえる様な声と共に、何か画面の様なものが目の前に開かれた。何これ?レモンを見るとこちらを満面の笑みで見つめていた。
「流石です。まさか何もご説明することなく、ご自身のスキルを上昇させる方法を発見なさるなんて。」
ウットリと恍惚の表情を浮かべている。
「上がったの?」
私がしたことと言えば頬っぺたつまんだりちょっと走っただけ…。
そうか、走ったから走行スキルみたいなのがあがったのかな?
「これで、少し弱いモンスターとほんの少しの動植物が誕生しました。能力はご自分で割り振れるようになっていますので、早速やってみてください。」
そう言われて私は目の前に出てきた画面をタッチしてみた。攻撃力と書かれたところを押すとぴこーんと言う音と共に攻撃力が1上昇していた。何だか実感は微塵もわかないが、ステータスを自分で割り振れるのは使い勝手が良いかな?そんな風に思った。
本日の成果
1 levelup
モンスター追加
動物追加
植物追加
体力30、魔力15、攻撃力3、 防御力2、法攻撃力2、魔法防御力2、素早さ2、運2