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宇宙海賊、イモと出会う

作者: アマラ

 広い大宇宙。

 無限に広がっているといっても過言でもないその場所を、縦横無尽に駆け巡る男がいた。

 彼の名は、宇宙海賊キャプテン・タナッカー。

 片目と片腕をサイバネティック化した、全宇宙を股にかける男である。





「はーっはっはっは! あの商船、けっこう色々運んでやがったなぁ!」


 タナッカーは上機嫌で笑い声を上げた。

 先ほど襲った船から奪った物資が、思いのほか上物だったからである。

 電子機材に部品、お菓子や食料。

 驚くべき事に、最新の武器まで有ったのだ。

 そろそろ部下に新しい武器を買ってやらなくてはと思っていたタナッカーにとって、コレは大収穫であった。

 何しろ武器はものっすごく高いのだ。

 貯金をいくらか切り崩さなければならないかとひやひやしていたのだが、まさにコレは行幸である。

 最近は宇宙連邦の方針で消費税も上がり、何かと金のかかるご時勢だ。

 節約していけるところはどんどん節約していくのが、立派な経営者というものだろう。


「しかしやたら武装してやがったな、あの船。護衛艦まで引き連れやがってよぉ」


 タナッカーの言うとおり、輸送船の護衛はやたら厳重だった。

 戦闘用の重巡洋艦が三隻もくっ付いていたのである。

 輸送艦そのものもかなり武装されており、近づくのにはやたらと苦労した。

 だが、タナッカーが駆る海賊船「フィール・ミョージ号」は、多額の金を注ぎ込んで魔改造を施された戦闘艦である。

 その気になれば、戦艦数十隻と真正面から殴りあうことすら可能なのだ。

 勿論、弾薬と燃料費を気にしなければ、ではあるのだが。

 必要経費を小さく抑えるのも、海賊経営には必要不可欠なスキルなのだ。

 今回は相手が厳重に警備をしていたので弾薬の消費も多かったが、それでも十分許容範囲である。

 なんだったらコレと同じ戦闘が後五回繰り返せるぐらいの余裕がある状態で、積荷を強奪する事に成功したのだ。

 ちなみに、乗組員は全員救難艇に乗せて、近くの宇宙連合加盟惑星に向けて打ち出し済みだったりする。

 一人でも殺すと警察とか軍の追及が千倍は厳しくなるので、タナッカーは部下達にもそこだけは徹底させていた。

 今のところ直接殺した人数が0であるのは、ひそかな自慢であったりする。

 まあ、積荷を奪われたことで首とかをくくっちゃった人はいるらしいが、それはタナッカーのあずかり知るところではないのだ。

 さて。

 今回の獲物の話である。

 やたらと警備が厳重だっただけに、いいものを積んではいた。

 しかし、それにしても厳重過ぎるような気が、タナッカーにはしていた。

 タナッカーの「フィール・ミョージ号」だったから勝つことが出来たが、普通の海賊船ならば近づこうとすら考えない護衛艦であったのだ。

 最新鋭の重巡洋艦三隻など、まるでどこぞの正規軍のような大盤振る舞いである。


「おやびーん! おやびんありやしたぜー!」


 大声を張り上げながらタナッカーのほうに走ってきたのは、副官のスーズキだ。

 小中学生ぐらいの美ショタっぽい外見をしてはいるが、立派なおっさんである。

 彼は子供の外見で大人になる、なんか犯罪っぽい知的生命がクラス星の出身なのだ。


「おう! やっぱりあったか!」


「へい! 隠し金庫っぽいところに、そりゃぁもう厳重に! すぐにあんないしやすぜ!」


 タナッカーは再び走り出すスーズキの後を追って走り始めた。

 船を乗っ取ったタナッカーは、すぐに船員達にある指示を出していたのだ。

 それは、どこかに隠されているであろう、重要そうな物品を見つけ出せ、というものであった。

 コレだけ厳重に警戒していたのだ。

 当然何かが隠されているだろうと推測したのである。


「こういうのを下手にカチ割ると、ゾンビ化ウィルスとか殺人宇宙生命とかが飛び出してくんのよ! 馬鹿はそういうのに引っかかって宇宙の藻屑になるわけだ!」


「さっすがおやびん! そこらの海賊とはレベルがちがいやすぜー!」


「そうだろうそうだろう! なーっはっはっはっはっはっは!」


 スーズキの言葉に上機嫌な笑いを飛ばしながら、タナッカーは館内を走る。

 途中ですれ違う部下達は、タナッカーに気が付くとすぐに直立不動の姿勢をとり、敬礼をした。

 海賊団内の規律が保たれており、なおかつタナッカー本人が慕われている証拠といえるだろう。

 事実、タナッカーは非常に優秀で、頼れる船長であった。

 腕っ節も強く知識も豊富で、頭もそこそこキレる。

 タナッカーはまさに宇宙の男と呼ぶに相応しい人物だったのだ。

 タナッカーとスーズキがやってきたのは、フィール・ミョージ号の貨物庫であった。

 奪った荷物は、すべてここに運び込まれていたのだ。


「あ、親分。お待ちしていやした。コイツです」


 タナッカーを迎えたのは、ヤマモットである。

 整備班の班長をしている彼は、物品の荷物の仕分けに借り出されることもよくあった。

 素人では判別のつかない道具なども、ヤマモットならば分かるからだ。


「いや、何が入ってるんでしょうなぁ」


 その隣に立つ白衣の人物は、船医のタカハシーだ。

 もしものときに備え、タナッカーが待機するように言っておいたのである。

 タナッカーは二人に軽く手を上げて挨拶をすると、すぐに目的のぶつの前に立つ。

 それは、鈍く銀色に輝く、コンテナであった。

 なかなかに大きなそれは、通常のコンテナのサイズ規格からはかなり逸脱した形をしている。

 5m×5mの正方形であったのだ。

 タナッカーはその珍しい形を見て、思わず顔をしかめた。

 格納しにくいサイズ規格外のコンテナは、収納効率がひたすらに悪いからだ。

 そういうのが一つでもあると、たくさん荷物かつめない。

 途中補給が難しい宇宙空間では、非常に嫌われる物なのだ。


「で、中はどうなんだ?」


「それが、色々探知機つかってんすけど、良く分からないんすよ」


 タナッカーの言葉に、ヤマモットが頭をかく。

 コンテナの周りには様々な機器が置かれており、それらはすべて壁の向こうを探知するなどの、非破壊検査に用いるものである。

 ヤマモットはこれらの機器を使い、コンテ他の中身を調べようとしていたのだ。

 しかし、結果は芳しくなかったようである。

 すまなそうな顔をするヤマモットの肩を、タナッカーはぽんと叩く。


「分からないものは仕方ないだろう。それだけ価値のあるもんっつーこった。無理するこたぁねぇさ。なに、陸に上がったときに、工場にでも持っていこうや」


「へぇ……」


 肩を落とすヤマモットの背中を、タナッカーは軽く叩いた。

 硬い表情を崩さないヤマモットに、タナッカーは苦笑を浮かべる。


「まあ、とりあえずコイツは厳重管理だ。何人か得物持たせて、監視に付けといてくれや」


「ガッテン! なんか飛び出して来たら洒落になりやせんや!」


 タナッカーの指示に、スーズキがびしりと敬礼をする。

 そして、すぐさま周りの部下達に指示を飛ばし始めた。

 見た目はショタだが、スーズキはベテランの船乗りなのだ。

 スーズキの仕事ぶりに満足した様子で頷くと、タナッカーは改めてコンテナへと視線を移した。


「しかし、何なんだかなぁー、こいつぁ」


 表情を険しくするタナッカーの横に立つと、タカハシーは唸り声を上げる。


「恐らくコイツはジェラルミニウムってやつでしょうなぁ。かなり丈夫な合金ですよ」


「自分もそう思いやす。しかし軍事用の危ないもんを運ぶときに使うもんでがね。こいつぁ、相当ヤバイもんかも知れやせんぜ」


 ヤマモットも同意見であるらしい。

 二人の言葉に、タナッカーは改めてコンテナを見上げた。

 開閉のためのレバーらしきものが見える。

 だが、とても空けてみようという気にはならない。

 その瞬間どんな事が起きるか、まるで予想できないからだ。


「まあ、触らぬ神に祟り無し、だな」


 結局、このコンテナは手下達が交代で見張りながら、厳重に管理する事となった。

 見張りに着く手下達は不気味がって居るが、まあ仕方ないだろう。

 問題が起こらないようにするには、きちんと見張るのが一番なのだ。

 他の物資などの仕分けも終わり、手下達も落ち着いたところで、フィール・ミョージ号は隠れ家のある星系に向って出発した。

 休息をとりつつ、情報収集などを行うためだ。

 だが。

 特に問題がないはずのこの航海が、地獄のようなものになろうとは。

 このときはまだ、約百の乗組員のうち、十名弱しか予測すらしていなかったのである。




 コンテナの中に納められているもの。

 それは、全宇宙に革命をもたらすような画期的な植物であった。

 名を、「宇宙男爵コガネアカリ」。

 響きを聞いてうっすらお分かりいただけるように、いわゆるジャガイモと呼ばれる植物である。

 人が宇宙に進出して以来の、ずっと課題として研究されてきた分野。

 それは、宇宙船の中で、どのように食料を用意するか、というものであった。

 人間は生きている以上、何かを食べなければならない。

 単に栄養を補給するだけならば他にも方法はあるのだが、食とは人にとって大切な楽しみでもあるのだ。

 娯楽の少ない宇宙での生活の、数少ない楽しみが食事であるといっても、過言ではないだろう。

 だが、食料というのはえてしてとても場所をとるものである。

 長期の航海ともなれば、保存する事だけでも一苦労だ。

 そこで考え出されたのが、船内に農場を作る、というものであった。

 宇宙船内の中で、食料を生産する事で、問題の解決を図ったものである。

 この試みは一定の成果を挙げており、現在も多くの客船や正規軍空母などが取り入れている方法だ。

 だが。

 これはそういった農場を作る事が出来る、ごく一部の大型船だけが出来る対応である。

 数十人程度の乗組員しかいない中型、小型の宇宙船では、未だに大量の食料を積み込んで航海するしかないのだ。

 それを解決すべく開発されたのが、この「宇宙男爵コガネアカリ」であった。

 このイモは、土を必要としない。

 空中だろうが真空だろうが自らの力で根を伸ばし、栄養源から直接水やエネルギーを吸収するのだ。

 しかも、このイモは成長に極僅かな栄養と水、そして、若干の熱しか必要としないのである。

 例えば、一般の成人男性が一時間ルームランナーで走ったとしよう。

 そのときに発生する汗と体温上昇による熱があれば、イモは十分に収穫可能になるのだ。

 そう、このイモは、僅かな栄養しか必要としないばかりか、ほんの僅かな時間で成長するという特性まで持っているのである。

 さらに驚くべき事に、このイモには自分で思考する能力すら備わっていた。

 宇宙船内の状況を把握し、必要なイモの量を算出。

 それに合わせて、生産量を調整するのである。

 まさに、全宇宙の常識をひっくり返す、画期的なイモなのだ。


 タナッカーたちが奪ったコンテナの中に納められている「宇宙男爵コガネアカリ」は、自分のおかれている状況を正しく理解していた。

 極秘研究所に運ばれ、試用実験を行われるはずだったのだが、こうなってしまっては仕方がない。

 廃棄されるのを免れるためにも、何とか役に立つものであるとアピールするしかないだろう。

 そう考えると、イモは早速行動に出る事にする。

 「宇宙男爵コガネアカリ」は、見た目上はただのイモと代わりがなかった。

 もし海賊達がコンテナを空け自分を見れば、捨ててしまわれるかもしれないのだ。

 幾ら「宇宙男爵コガネアカリ」とはいえ、宇宙空間に投げ出されてはたまらない。

 何とか役に立つものだと理解してもらい、保身を図る必要があったのだ。

 とはいえ、イモはあくまでもイモである。

 武器を持って戦えるわけでもなければ、燃料になるエネルギーを生産できるわけでもない。

 イモにできること。

 それは、イモを作る事だけだ。

 海賊達にイモが受け入れられるか分からないが、兎に角やってみるしかない。

 イモはコンテナ内にある緊急用レバーに、根をかけた。

 なんとイモは、自由自在に根やツルを操る事ができるのだ。

 ツルを大きくしならせ、イモはコンテナの扉を開けた。

 何とかして海賊達と話し合おうと、胸に熱い思いを抱きながら。




「ったく、コレマジで大丈夫なのかよ」


 スーズキに監視を命じられた手下、ナイトーウは、あからさまに顔をしかめながらそう口にした。

 隣に居るア・ベも同じ意見なのか、大きく頷いている。


「そうだよなぁ。こういうのって、監視してるやつが第一犠牲者になるパターンだもんな」


「おいおいおい。縁起でもないこと言うなよ。俺まだ死にたくねぇぞ」


「俺だって死にたくねぇよ。ローンだって残ってるし」


「ローン? なんの?」


「メイドアンドロイド」


「おま、ア・ベ、そういう趣味だったのか」


 ナイトーウが思わずひいた、そのときだった。

 突然コンテナの前面が、ゆっくりと開き始めたのだ。

 コンテナの警備に当っていた手下達は、一瞬パニックに陥りかける。

 だが、そこは百戦錬磨の海賊達だ。

 すぐに落ち着きを取り戻し、それぞれの得物をコンテナへと向けた。

 周りに居たナイトーウやア・ベ以外の手下達も、それぞれ対応をとり始める。


「おい、誰触ったか?」


「んなわけねぇだろ!」


「勝手に開いたって事だべや。 誰かスーズキさんに連絡しろ!」


 手下達があわただしく動いている間にも、コンテナは開き続けている。

 開いた隙間からは、ドライアイスで出したモヤのようなものが湧き出していた。

 内部のものを保護する薬剤が気化したものなのだが、手下達にそんな事は分からない。

 そのモヤすら危険なものかもしれないと、手下達は警戒しながら距離をとる。

 扉が開ききる頃にはモヤも出尽くしたらしく、それ以上広がって来る事はなかった。

 ようやく見やすくなったコンテナの内部に、手下達はじっと目を凝らす。

 そこにあったのは、真っ白なヒモのようなものが固まったものであった。

 真正面でそれを見ていた、ナイトーウとア・ベの表情が引きつる。

 広い宇宙で戦っているだけに、彼らは外見が当てにならない事を良く知っていた。

 無害そうなものが有害であり、有害そうなものが有益だったりするのが宇宙なのだ。

 だが、目の前にあるコレはあまりにも何であるのかが判別がつかなかった。

 ただの紐の塊であるならば、こんな後生大事にしまわれてはいないだろう。

 一体どうすべきか。

 手下達は、判断に窮していたのである。


「どうすんだこれ」


「とりあえず、まだ撃つなよ」


 そんな声を掛け合いながら、手下達は緊張の度合いを強めていった。

 賢明な読者の方は、もうお気づきだろう。

 この紐の塊のようなものの正体は、「宇宙男爵コガネアカリ」である。

 本体であるイモから、無数のひげ根を生やしている状態なのだ。

 ひげ根による移動や繊細な作業すら可能なこの状態は、いわば「宇宙男爵コガネアカリ・高機動モード」と言った所だろうか。

 手下達と同じく、「宇宙男爵コガネアカリ」は若干の混乱状態にあった。

 警戒はされるだろうとは思っていたが、まさか出会いがしらに武器を向けられるとは思っていなかったのである。

 普通であれば、こういった状況は想定して然るべきだろう。

 しかし、イモはそういった常識とは無縁の生活を送ってきていた。

 作られて以降、研究室を出た事がなかったのだ。

 イモの持つ知識は、その大半が星間インターネットから手に入れたものなのである。

 それも研究員にフィルタリングされたものであるため、イモの知識はたいへんに偏っていたのだ。

 イモはしばし考えた末、言葉を発して海賊達とコミュニケーションをとることにした。

 非常に繊細な動きが可能なイモのひげ根にかかれば、有る程度の発音も可能だったのである。

 ひげ根を使い袋状の擬似発音器官を作ると、イモはそこに空気を送り込んだ。

 そして、意を決して、声を上げる。


「きゅるきゅるきゅる! きゅきゅきゅきゅきゅぎゅぎぇぇぇぇぇえええええ!!」


「ひぃいいい?!」


「なんだぁ?!」


「構えろ! すぐに攻撃できるようにすんだゴラァ!」


 残念な事に、イモの言葉は手下達には一切通じていなかった。

 それもそのはず。

 イモが話していたのは銀河共通語ではあったのだが、凄まじくなまりが強かったのだ。

 恐らく同じ地方出身者でなければ判断不可能なその言語は、手下達にとってはもはや奇妙な叫び声にしか聞こえなかったのである。

 コレに驚いた手下達は、激しく動揺した。

 手にした武器を構えなおし、今にも攻撃を開始しそうな状態である。

 イモの言葉は手下達に通じなかったが、手下達の言葉はイモには通じていた。

 このままでは、攻撃されてしまう。

 何とかしなければと考えたイモは、とっさにあることを思いついた。

 自分が無害なイモである事を、実際に行動を起して証明しよう。

 そうすれば、彼等も落ち着いてくれるはずだ、と。

 そう決断したイモの行動は、実にすばやかった。

 早速エネルギー源に根を伸ばし、イモを作る事にしたのである。

 「宇宙男爵コガネアカリ」は、二種類のイモを付けることが出来た。

 一つは、今思考を行っているような「本体イモ」。

 もう一つは、人間に食べてもらう目的の、「食用イモ」だ。

 イモは栄養を得る事で、「食用イモ」を生産しようと考えたのだ。

 そして、それを彼らに食べさせる事で、理解を得ようと考えたのである。

 このときイモが選んだ栄養源。

 それは、ほかならぬ手下達であった。

 彼らの汗や涙などを栄養に、イモを作ろうとしたのだ。

 そうする事で、イモは自分が如何に効率のいい食料なのか証明しようとしたのである。

 だが。

 この行為は、手下達にあらぬ誤解を与える結果となった。


「ぎぃいいいやぁあああああ! 触手! 触手がぁああ!」


「触手の塊が襲ってきたぁあああ!」


「ダレカタスケテー!!」


 イモの伸ばしたひげ根のビジュアルは、触手そのものだった。

 そしてそれは、手下達から見れば攻撃外の何者でもなかったのだ。

 混乱状態に陥った手下達は、一斉に攻撃を開始した。

 イモはひげ根を上手く使い、何とか本体への攻撃を避けることに成功。

 幾つものひげ根を吹き飛ばされつつも、何とかそのうちの数本を手下達へ延ばすことが出来たのだ。

 そうなってしまえば、イモのすることは一つである。

 汗などを吸上げ、一気に成長するのだ。

 幸いな事に、手下達は大量の汗をかいていた。

 謎の触手に捕まったのだから、冷や汗の一つもかくだろう。

 イモは手下の体中にひげ根を伸ばし、それを吸収した。

 傍から見ると、手下は触手に飲み込まれたように見える。

 実際、巻き取られた手下達もそう思ったのだろう、その大半は気絶してしまった。

 気絶した手下を、イモは怪我をしないようにきちんと抱きとめる。

 それも傍から見れば、中に取り込んだようにしか見えないわけではあるが。

 一気に栄養を得たイモは、ひげ根とイモを一斉に生産した。

 本来はもっと時間がかかるはずなのだが、気合が入っていたからだろうか。

 食用イモとひげ根は、一瞬にして凄まじい増殖を見せたのである。

 それを見た手下達の反応は、想像に安いだろう。


「食ったー?!」


「あいつ、仲間を取り込みやがったぞ?!」


「うわあああああああ?!」


 パニック。

 混乱。

 阿鼻叫喚の地獄絵図である。

 予想外の手下達の反応に、イモは大いに慌てた。

 何とか自分がイモである事を伝えようと、食用のイモをツルの先につかみ出す。

 そして、それを手下達へと掲げ見せた。

 食べ物であるイモを見せれば、きっと分かってもらえると考えたのだ。

 だが。


「何だあのショッキングピンクの物体?!」


「た、卵だ! 卵に違いない!」


「捕まったら卵を植えつけられるぞぉおお!!」


 食用イモは、鮮やかなショッキングピンクの色合いをしていたのである。

 それを見て食用だと思うものは、宇宙時代であってもなかなか存在しなかったのだ。

 こうして、手下達とイモは、誤解が解けないまま、激しい交戦状態へと突入したのである。




 手下からの連絡を受け艦内映像を見たタナッカーは、愕然とした。

 通路一面を覆う謎の触手が手下達を絡めとり、あるいは交戦をしていたからだ。


「な、なんだこりゃ……」


「植物系の生物兵器だと思われやす。手下共をえさにして、でっかくなったんでやすよ」


「なるほど。って、にしても成長早すぎねぇか?」


 スーズキの説明に頷きながらも、タナッカーは苦虫を噛み潰したような顔で唸る。

 確かに常識から考えれば、幾ら人間を栄養源にしたからとはいえ、イモの成長力は異様であった。

 既に貨物室を占領し、各ブロックへ通じる通路へと根を伸ばし始めているのだ。


「たしかに、信じられやせんぜ。一体どこから栄養とってやがるんでやしょう」


 スーズキも首を捻る。

 二人とも、まさかコレが捕まった手下達の汗のみで成長しているとは、思いもしていなかった。

 まして、捕まった手下達は全員生きているなど、微塵も考えていない。

 本当はイモが丁重に内部で保護しているのだが、まあ、普通は生きていると思わないだろう。


「まさか、船溶かして栄養とかにしてねぇだろうなぁ。中から風穴開けられたら洒落に何ねぇぞ」


「金属分解バクテリアとかも居る世の中でやすからねぇ。ありえないとは言い切れないですぜー」


「冗談じゃねぇ! 必死に貯金して一括払いで特注した船だぞ! 溶かされてたまるかっつーの!」


 タナッカーはコンソールに拳を叩きつけると、ドアに向って走り出した。

 それを追いかけ、スーズキも慌てた様子でドアを出る。

 二人が飛び出したのは、艦長室だ。

 船は宇宙にあるというのに、二人は思いっきり二本の足で走っていた。

 この船には、重力発生装置が搭載されているのだ。

 荷物を運ぶときや物を食べるとき、遊ぶときや作業するときに便利なこの装置は、今は宇宙船の標準装備である。

 ちなみに、フィール・ミョージ号の重力は1Gに設定されていた。

 実はこれは「宇宙男爵コガネアカリ」が成育するのに最も適した重力なのだ。

 タナッカーの出身星、地球に合わせたこの設定だったのだが、偶然とは恐ろしいものである。


「ひぃいい! 何なんだこの触手!」


「うわぁああ! くちにはいってき、ぎゃー!!」


「ス・ドー! くそ! よくも俺の相棒を!」


 戦いの最前線である廊下に到着したタナッカーが見たのは、戦場さながらの激戦であった。

 手下達が持っているのは実弾系武器ではなく、エネルギー系の熱で攻撃するものばかりだ。

 触手は無尽蔵に増えてくるため、ただ穴を開けるよりも、熱によるダメージをを与えた方が有効だと判断したのである。

 そういったすばやい対応が出来るほど、手下達は訓練も実戦経験も豊富だったのだ。

 しかし。

 「宇宙男爵コガネアカリ」の猛攻は、そういったものを蹴散らしてしまうほど圧倒的だった。

 何人もの海賊を取り込んだイモは、栄養の補給源を完全に確保している状態だ。

 幾ら攻撃されようが、すぐに根を再生できるのである。

 この間もイモは手下達に「自分は害はないただのイモである」と話しかけ続けていたのだが、残念な事に通じる事はなかった。

 むしろ奇妙な雄叫びを上げつつ触手を放ち、ショッキングピンクの球体を振り回すその姿は、手下達に恐怖を植えつける結果になっている。


「ちっ! てめぇら、どけ!」


「お、親分!」


「お前ら、親分がぶっ放すぞ! よけろ!」


 タナッカーはサイバネティック化された手をイモのひげ根のほうへと伸ばすと、手下達に向かって叫んだ。

 それを聞いた手下達は、すぐさま後ろに下がり始める。

 自分の後方へ逃げていく手下達を確認してから、タナッカーは開いた手をサイバネティックの腕へと添えた。

 その瞬間、機械化された腕が大きく変形し始める。

 手の部分がだらりと下がり、腕の部分が大きく上下に開く。

 手首の部分がバックリと割れて内部から露出してきたのは、砲門のようなものだった。

 タナッカーのサイバネティックの腕は、強力な可変式エネルギー砲になっているのだ。

 装備者であるタナッカーの生体エネルギーを破壊力に変換するこの武器は、最大出力ならば宇宙戦艦の主砲クラスの破壊力を持っていた。

 もっとも必要とするエネルギーが膨大であるため、まともに扱えるのはタナッカーぐらいである。

 名前と行動に似合わず、タナッカーは地味にすごい男なのだ。


「おやびん! 思いっきりぶっ放したらそれこそ船がおじゃんでやすよ?!」


「そのぐらい調整してやらぁ! まぁ、見てやがれっての!」


 腕から露出した砲門に光の粒子が集まり始めると共に、タナッカーの片目が紅く光り始める。

 腕と同じくサイバネティック化されたタナッカーの目には、照準機の機能も備わっているのだ。


「ヒート・ハート・バースト出力限定ぃいいい!!」


 タナッカーの叫びと共に放たれた青白い閃光は、一瞬にしてイモのひげ根を吹き飛ばした。

 言葉通り出力を絞っているらしく、廊下や手下達が消し飛ぶ事はない。

 本来この武器、「ヒート・ハート・バースト」の出力を自力で調整することなどは出来ない作りになっていた。

 注ぎこまれたエネルギーを、そのまま出力する装置だからである。

 だが、タナッカーは自身の体から発せられる生体エネルギーを制御する事で、それをやってのけていた。

 人間がやったとは信じられないレベルの離れ技だ。

 宇宙広しといえど、こんな事ができるのはほんの数人だけだろう。

 砲撃の余波である爆風に煽られながら、タナッカーはにやりと口の端を吊り上げていた。

 イモのひげ根はものの見事に吹き飛ばされ、先ほどまで埋め尽くされて見えなくなっていた壁や床が露出していたからだ。


「さっすがおやびん! HHバーストを使わせたら宇宙一ですぜー!」


 地面にぺったりと張り付いて爆風をやり過ごしていたスーズキが、感嘆の声を上げる。

 他の手下達は、呆気にとられたように呆けた顔をしていた。

 どうやらタナッカーがヒート・ハートバーストを使う場面を直接見たことがあるものは少なかったらしく、皆感動しているのだ。

 タナッカーがキメ顔でサイバネティックの腕を掲げると、呆然としていた手下達もすぐに気をとりないし、歓声を上げ始める。

 ちなみに、幸いな事に吹き飛ばされたひげ根の中には、既に取り込まれた手下達は居なかったりした。

 別場所に移動させられており、丁重に捕まっているのだ。

 手下達の士気が回復したのを見て取ったタナッカーは、大声を張り上げた。


「野郎共! 触手ふっとばして、貨物室の本体を消し飛ばすぞ! ついてこいやぁ!」


「おお!!」


「武器を取れぇ!」


「根性見せてやるぜぇ!」


 タナッカーのカリスマ性あふれる掛け声に、手下達は大いに湧いた。

 すぐさま武器を取り直すと、タナッカーの周囲へと集まり始める。


「でもおやびん! まだ本体って貨物室にあるでやしょうかね?」


「バカやろう! こういうときのお約束は最初出たところからあんましうごかねぇもんだろうが!」


「さ、さっすがおやびん! 大学出だから考える事が違いやすぜぇー!」


 すぐさま疑問に答えてみせるタナッカーに、スーズキはオーバーリアクションで感心する。

 出身星でも五本の指に入る一流大学の法学部を出たタナッカーは、実は高学歴なのだ。


「よっしゃ! んじゃ、行くぞテメェら! 宇宙海賊の意地見せてやろうぜぇ!」


「「「おお!!」」」


 廊下を走るタナッカーの後を、手下達が追いかける。

 ヒート・ハート・バーストの圧倒的な火力で、タナッカー達は一気に貨物室へと進行するのだった。




 ヒート・ハート・バースを連射しながら、タナッカーはようやく貨物室へとたどり着いた。

 完全に息が上がっており、ぜーはーと非常に苦しそうな状態だ。

 この兵器は生体エネルギーを打ち出すものなのだが、使うと使用者はたいへんな体力を消耗するのである。

 具体的にいうと、タナッカーが連射していた出力で25mを全力疾走するぐらい疲れるのだ。

 幾ら距離が短いとはいえ、ずっと打ち続ければ疲れもするということだろう。


「この野郎、ひさしぶりに、つかれっちまったじゃねぇか!!」


「おやびん! だいじょうぶでやすか!」


「ったりめぇだ! 俺を誰だと思ってんだ泣く子も黙る宇宙海賊タナッカー様だぞ!」


「さっすがおやびん! 男の中の男ですぜぇー!」


「なーっはっはっは! そうだろうそうだろう!」


 軽く乗せられている感じがしないでもないが、そんな感じですぐに気力が回復してしまうのもタナッカーのすごい所だ。

 スーズキとの会話ですっかり元気を取り戻したタナッカーは、ヒート・ハート・バーストの砲門を貨物室へと向けた。

 壁、天井、床と張り巡らされたひげ根が、警戒するようにびくりと蠢く。

 イモの本体は、本当に貨物室の中にあったのだ。

 だが、それだけではない。

 イモが絡めとった人間達も、この場所にいたのである。

 このままでは、自分はおろか彼らまで吹き飛ばされてしまう。

 そう考えたイモは、何とかそれを回避すべく方策を考えた。

 そして、とある手段を思いつく。


「あ! おい、見てみろ! 触手の中からオブッチーが出てきたぞ!」


「大丈夫かオブッチー!!」


 手下の叫びどおり、イモのひげ根の間から現れたのは、絡めとられたはずの手下の一人であった。

 イモは捕まえた人間が無事である事を示し、自分が危害を加えるつもりがない事を示そうと考えたのだ。

 ここでさらに、イモはもう一つことを実行する。

 捕まえていた手下に、イモを食べさせるのだ。

 そうする事で、このショッキングピンクの物体が食べ物であり、自分が食用の植物であるという事を証明しようというのである。

 イモはショッキングピンクのイモを取り出すと、おもむろに手下の一人、オブッチーの口元へと近づけた。

 そして、ひげ根で口を開かせると、その中にイモを押し込んだ。

 繰り返すようだが、「宇宙男爵コガネアカリ」は外部との接触を殆どとってきていなかった。

 そのため、いわゆる常識というものが欠落しているのだ。

 今この状況を見て、海賊達がどう考えるのか。

 そこまで頭は回らなかったのである。

 ひげ根にがんじがらめにされ、口にショッキングピンクの物体を押し込められるオブッチーを前に、海賊達は表情を引きつらせた。

 それも仕方ない事だろう。

 海賊達から見れば、オブッチーはあまりにも凄まじい状況に居るのだ。

 全身をうねうね動く白っぽい触手に縛り上げられ、口には得体の知れないショッキングピンクの物体を突っ込まれている。

 どう考えても、触手状エイリアンに卵を飲まされそうになっているとか。

 なにかしらの拷問を受けているとか。

 兎に角何かしらソッチ方面のことをされているようにしか、見えなかったのだ。


「お、オブッチー!」


「なんてムゴイ……!」


「しかも、オブッチーが居るから攻撃できねぇ!」


「くそ、人質かよ! なんて触手だ!」


 手下達の言うとおり、確かにオブッチーを人質にしているように見えなくもない。

 実際この状態でタナッカーがヒート・ハート・バーストを撃てば、触手だけでなくオブッチーも焼きあがる事になるだろう。

 攻撃の手を止めさせるという意味では、イモの目論見は一応の成功を見せた、かのように思われた。

 だが、しかし。

 我らが宇宙海賊タナッカーは、そんな事で立ち止まる男ではなかったのである。

 何かを振り払うように頭を振ると、改めてイモへと砲門をむけたのだ。

 そんなタナッカーを見て、スーズキが度肝を抜かれたように慌てふためく。


「おやびん! 撃ったらオブッチーまで巻き込みやすぜ?!」


「オブッチーはもう駄目だ! こうなったら触手もろともふっとばしてやるのが情けってやつよ!」


「さっすがおやびん! 涙を呑んで止めを刺してやるのもオブッチーのためなんでやすね!」


 タナッカーの優しさに、手下たちは涙をこらえ切れなかった。

 オブッチーは必死に首を振って嫌がっているようにも見えるのだが、皆気のせいだと思うことにしたらしい。

 こういうときの思いっきりのよさも、タナッカーのすごいところなのだ。


「オブッチー、成仏しろ!」


「大丈夫だ! 親分のヒート・ハート・バーストなら一瞬で逝けるはずだぜ!」


「お前の部屋にあるオーディオ機器は俺が引き取ってやるからな!」


 手下達は涙ながらにオブッチーにお別れを言っていく。

 オブッチー自身は必死の形相で何とか助かろうと暴れまわっているが、誰も気にも留めない。

 海賊達の中では、オブッチーは既に尊い犠牲扱いになっているのだ。

 ヒート・ハート・バーストの発射体制に入っているタナッカーも、一切のためらい無くエネルギーの充填を終えている。


「おっしゃ! 確実に吹っ飛ばしてやるぜ! 地獄で会おうぜオブッチー!」


「成仏しろよオブッチー!」


「税金導入しやがって!! 燃え尽きろ!」


「それ、タケ・シータだろ?」


「おんなじ様なもんだ!」


 名前が似ていると言うだけで、古代の政治家の行った政策まで押し付けられるオブッチー。

 しかも、完全な濡れ衣だ。

 オブッチーは全身を使って死にたくないとアピールしているが、一切誰も取り合わない。

 そして、ついにタナッカーが必殺の砲撃を放つ。


「無限の宇宙を股にかけ、お宝狙う冒険野郎! 宇宙海賊タナッカー様の魂の咆哮だぁ! 喰らいやがれっ! ヒート・ハート・バースト!!」


 雰囲気台詞をドヤ顔で決め、タナッカーはヒート・ハート・バーストの思考トリガーを引く。

 最高の気分だったタナッカーだったが、隣に立っていたスーズキの一言で一気に現実に引き戻された。


「あれ? この貨物室の向こう側ってエネルギー貯蔵庫だったような?」


「あ」


 トドメの一撃だからと多少威力を挙げたヒート・ハート・バーストは、一瞬にして貨物室の壁を突き破る。

 その先にあったのは、スーズキの言葉通りエネルギー貯蔵庫だった。

 宇宙時代になっても、エネルギーを砲撃した場合に起こることは同じだ。

 そう。

 爆発である。

 外からの攻撃には無敵を誇るフィール・ミョージ号も、内部からの攻撃には多少弱かったのだ。

 フィール・ミョージ号は、爆発炎上。

 そのまま木っ端微塵、とはならなかったまでも、このままではとても航行が不可能な状況に追い込まれた。

 だが、日ごろの行いがよほどよかったのか、なんと近くに銀河連邦に所属する惑星があったのだ。

 海賊達は必死の思いでそこにたどり着き、事なきを得えたのである。

 驚くべき事に、手下達は全員生きていた。

 「宇宙男爵コガネアカリ」は、ギリギリの所で貨物室から逃亡。

 その際に、絡めとっていた手下達も避難させていたのだ。

 イモの尽力があったとはいえ、宇宙で事故を起こし生きて助かるなど、奇跡といっていいだろう。

 そんな事ができてしまうのも、タナッカーのすごいところである。




 タナッカー達が不時着した星は、「惑星イモイナー」であった。

 最近銀河連邦に加入したばかりの、いわゆるド田舎である。

 突然空から降ってきた海賊船に、イモイナー人達は一瞬にして絶望の坩堝に叩き落された。

 イモイナー軍の装備では、とてもとてもフィール・ミョージ号には勝てないからだ。

 変に文明に触れてしまっただけに、そんな事もわかるようになってしまっていたのである。

 だが、宇宙海賊たちの様子がおかしい事に気が付いたイモイナー人達は、慌ててその救助へと乗り出した。

 田舎者ではあったが、彼らはとても親切で心優しい知的生命体だったのだ。

 イモイナー人達に助け出されたタナッカーは、その過程で「宇宙男爵コガネアカリ」とも接触した。

 最初は言葉が通じなかったのだが、たまたま突入したイモイナー人が持っていたケータイアプリの「方言同時翻訳」が突破口を開くことになる。

 イモイナー人と「宇宙男爵コガネアカリ」は、コミュニケーションに成功したのだ。

 このことに驚いたのは、タナッカー達海賊だった。

 自分たちが勘違いで宇宙船を落してしまった事を嘆きつつも、彼らはきちんとイモに謝罪をする。

 仕事以外で悪い事をしたらきちんと謝るのが、タナッカーの方針だったのだ。

 勿論、タナッカーはイモイナー人達にも感謝をした。

 タナッカーはきちんとお礼が言える海賊なのだ。

 しかし、ここは銀河連邦加盟惑星である。

 ついに年貢の納め時かと思ったタナッカーであったが、意外なことにイモイナー人達は海賊達を捕縛する事はなかった。

 それどころか、フィール・ミョージ号の修理を買って出てくれたのだ。

 訝しげに思ったタナッカーに、イモイナー人達は事情を説明してくれた。


 イモイナー星は銀河連邦に所属していたのだが、実は体のいい植民地状態にあった。

 なにせ技術力も低いド田舎惑星である。

 星全体掛りでフィール・ミョージ号に敵わないレベルの技術力しかないのだ。

 逆らおうにも、近所に銀河連邦の宇宙戦艦が駐留しただけですくみ上がるしかないのである。

 そんな彼らにとって、銀河連邦を相手取り宇宙でブイブイ言わせているタナッカー達宇宙海賊は、まさに憧れの的だったのだ。

 命の恩人に憧れられている。

 このことはタナッカーを有頂天にさせるのに十分な事であった。

 早速、タナッカーはフィール・ミョージ号に積まれていたデータの一部をイモイナー人達に引き渡す。

 それは、様々な技術の教本や、兵器設計図であった。

 イモイナー人達がどうしても手に入れたがっていた、いわばプラチナデータである。

 コレさえあれば、イモイナー人達は進んだ技術力を手に入れ、植民地状態から脱出する事も難しくない。

 だが、技術力を手に入れたとしても、どうしようもない事もあった。

 宇宙連邦に強制され、惑星イモイナーは食料自給率20パーセント未満の星にされていたのだ。

 食べ物を輸入している先は、勿論宇宙連邦である。

 食い扶持と自衛手段を抑えられていたために、イモイナー人達は今まで涙を飲んでいたわけだ。

 逆に言えば、後は食べ物さえどうにかなってしまえば、イモイナー人達は独立へと動き出せる。

 そう、食料さえどうにかなれば。

 皆さんお分かりだろう。

 「宇宙男爵コガネアカリ」の出番である。

 あっという間に膨大な量に増える能力を得たこのイモにかかれば、惑星一つ分の食料をまかなう事も難しい事ではなかったのだ。

 しかも、イモ自体が自分で最適な状況を作り出すので、世話も必要ない。

 食糧生産を禁止され、農業技術の衰退していたイモイナー人達にとって、まさに願ったり敵ったりの存在だったのだ。

 こうして、タナッカー達海賊は命を拾う事ができ、「宇宙男爵コガネアカリ」は新天地を見つけ、イモイナー人達は独立への希望を掴む事になった。

 タナッカー達が「惑星イモイナー」に不時着してから、一ヶ月。

 海賊達は再び、宇宙の大海原へと船を漕ぎ出す事になった。

 このとき、フィール・ミョージ号は修理されただけではなく、新しい機能も追加されていた。

 「宇宙男爵コガネアカリ」のひげ根を使った、生体艦内配線である。

 既存の機械的回線に加え、変幻自在なイモのひげ根を使うことにより、少々の損害なら自力で直してしまうほどアクティブな船へと生まれ変わったのだ。

 栄養は海賊達のトイレや洗濯物から取られているので、別に与える必要も無い。

 今まで機械で行っていた部分を、さらに高性能で維持費もかからない植物で代用しているので、とてもクリーンな上に経済的だ。

 出来る経営者であるタナッカーにとっても、申し分の無い代物である。


「いやぁー、一時はどうなる事かと思ったけどよぉ。落ち着くところに落ちついたじゃねぇーの!」


「さっすがおやびん! コレが人徳ってやつでやんすね!」


「あっはっはっは! そうだろうそうだろう! 俺ぐらいになるとトラブルも最終的にラッキーに転がっちまうのよ!」


 まさに絶好調といった様子で、宇宙へと旅立っていくタナッカー。

 これは、今まで極力メタ内容に堅実な仕事を心がけてきたタナッカーが、歴史の表舞台にたった最初の事件であった。

 後に、銀河連邦に支配された星々を、なんやかんやあってイモにより開放しまくる事になる英雄タナッカーの、誕生の瞬間である。

知人である「祐夢 ゼノ」さんが、なんか企画をやるというので参加しようと思ったのですが、既に参加表明期間を過ぎていたので勝手に参加してみました!

参加をOKしてくれたゼノさんには感謝です。


絶賛無気力上対中なのでリハビリ作ですね。

よろしければどーぞ

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― 新着の感想 ―
[良い点] とりあえずメイドアンドロイドの下りが芋とかよりもすごい印象に残りました。さりげない一言で笑わせてくれてうれしいです。 全体としては素晴らしいコメディになっていました。 何にも考えずすらっと…
[良い点] 出来る経営者だな、キャプテンw [気になる点] 今まで極力メタ内容に →今まで極力目立たないように [一言] エネルギー・質量保存の法則を無視するイモ凄ぇとしか…
[一言] 聖賢、豪傑、盗賊を兼ねたり。 を、意図せずにヤッチマッタぜ。状態のスペースパイレーツ。
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