ケンカの後は・・・
ほのぼのとした話が書きたくて書きました。
3年前の12月15日…
つまり今日
僕たちはここで 出逢った。
彼女は卒業旅行
僕は仕事
キッカケはなんてことない
ここ 宮島の有名な大鳥居の下で
何もないところでつまづいた彼女をたまたま隣に居合わせた僕がささえた。
ただ それだけ…
あの頃は まさか 彼女とまた逢えるなんて思ってもいなかった。
半年後 再会するまでは…
宮島桟橋から 歩いて 15分ほど
海にそびえ立つ大鳥居が見えてきた。
ちょうど 潮が ひいていた。
12月の17時ともなると
あたりは薄暗く 人もまばらだった。
さすがに この薄暗さで 大鳥居に近づくものはいなかった。
ただ一人を除いて
僕は階段を下り 水分を含む 砂の上を歩く
「やっぱり ここか」
僕は呟きながら 大鳥居に向かった。
大鳥居の下で一人の女性が
海に見入っていた。
人の気配がしたのだろう。
女性は 僕に気付きゆっくり近づいてきた。
僕も足を進める。
「びっくりした??」
大鳥居の下にいたのは 3年前に、ここで出逢った彼女だった。
「・・・・」
彼女の言葉に 僕は 何もいわなかった。
気がつくと 彼女の目には 涙がたまっていた。
「どうして 何も 言わないの??
ここまで 私を 探しに来てくれた。
ちゃんと私のこと考えてくれてるって 期待しちゃうじゃない。」
僕は 1歩 前へ進む
「・・今朝みたいなことは もうゴメンだ 。」
彼女にだけ 聞こえるような小さな声
彼女は 僕の言葉に 涙を止めた。
そして 再び歩き出した。
僕は 彼女が通り過ぎるのを 見送った。
そんな 僕の態度に 彼女は 振り返りもせず ただ進んでいく。
きっと さっき止まった涙が溢れ出しているだろう。
僕たちは 再会して しばらくしてから 付き合い出した。
そして 先月から 一緒に暮らしていた。
昨夜 ちょっとしたことで ケンカをした。
そして 今朝 彼女は 何も言わず
「きのうはごめんなさい。」という
手紙を おいて 消えた。
すぐに 彼女の自宅に連絡したがいない。
家にいってもまったく反応がない。
もしかしたら と思いここにやってきた。
「約束してくれないか?」
僕は 彼女の背中に 向かって叫んだ。
彼女は 驚いた様子で 振り返った。
「たぶん これからもケンカをすると思う。
でも 黙って 僕の前から いなくならないでほしい。」
僕は 彼女の 前までに行き 涙をぬぐった。
「OKだったら 僕と結婚して ほしい」
彼女は 何も言わなかった。
かわりに 彼女は 僕の 首に腕をまわした。
今まで ずっと我慢していたのか
声を出して 本格的に泣き出した。
僕たちの出逢った場所は今日 新しい人生へと出発した場所に思い出を書き換えた。
【おまけ】
「なんで ちゃっかり 旅館の予約してるの??」
彼女の言葉に僕はだんまり…
僕たちは、せっかくだからと宮島に泊まることにした。
実のところ、昨日プロポーズする予定で 今日ここに泊まるつもりだったのだ。
彼女に そのことを 伝えると
「ありがとう。」
と笑顔でいってくれた。
僕はプロポーズの答えよりもこの『ありがとう。』のほうが本気で嬉しかった。
-完-
※06.12.15に自サイトにて掲載したものです。