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転移勇者と愛しき人と  作者: 炊飯器と電気ポット
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戦闘訓練②

神の祝福はあるのか?

訓練場は、テレビで観た外国の闘技場のような形をしていた。円形の闘技場の上には観客席まである。



その闘技場の真ん中に、ジル教官が立っていた。


「ついていけるかわかりませんが、今日からよろしくお願いします」


「俺を追い越すくらいじゃないと魔王には勝てないんだよ。死ぬ気でやれ!」


ジル教官は不敵な笑みを浮かべた。


僕はメイドのみんなに、訓練着と呼ばれる服を着せられ、その上から革鎧のようなものを身につけさせられた。多少動きは制限されるが、動きにくいというほどではない。


「おーい、勇者さーん! とりあえず俺がいいと言うまで、闘技場の周りを走れ!」


「できれば、勇と呼んでください」


「わかった。勇よ、全力で走れ」


僕は円形の闘技場の外周を走り始めた。もともと運動は得意でも苦手でもなく、短距離走も長距離走も普通といった感じだった。


だが、どうだろうか。走り始めてみると、身体がとても軽い。試しにどんどん速度を上げてみる。風が耳元を通り抜ける。まだ余裕があるので、さらに速度を上げてみる。


それを繰り返していると、声がうっすらと聞こえてきた。



「もういい! やめろ!」


ジル教官が大声を出していた。


「いやあ、ジル教官。まだ全然、全力じゃないですよ」


「神の祝福ってやつは、本当なのかもな」


「前の世界にいた時の何倍も、動けそうです」


「じゃあ試しに、そこで跳ねてみろ」



「ジャンプすればいいんですね!」


僕は垂直跳びの要領でジャンプしてみた。

……いや、してみたのだが、天井が目の前に迫ってきた! 止まれない!


ビターン!


まるで天井に受け身を取るような形で、全身に衝撃が走った! 痛いけど、痛くない。


そう思っていると、重力に引かれて落下し始める。


「…あ、これやばくね?」


今度は地面が近づいてくる。ジル教官の呆れた顔が、ちらりと見えた。


人間は当然、頭が重いので、僕は頭を下にして落下していた。


防衛反応で縦方向に身体を回すと、きれいに足から着地できた。


「神の祝福とやらを、俺は憎むぜ」


ジル教官は腰から剣を抜いた。


「勇、持ってみろ」


「はい」


「勇、振ってみろ」


「はい」


ヒュン! グニャリッ!



……え? 剣って振ると曲がるの??



「俺の名剣を……」


「す、すみません!」


「…末恐ろしいな。よし! 鍛冶屋に行くぞ」


「はい!」


結局、僕は汗をかくこともなく、初めての訓練場をあとにするのであった。

まあ、こうなりますよね。

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