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転移勇者と愛しき人と  作者: 炊飯器と電気ポット
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犀川ハイツの転移魔法陣の成り立ちと

佐々木茂が語る、魔法陣の真実とは。

佐々木茂さんは、僕と純佳さんにカウンターに座るようにと言った。

きっと重要で重大な話しがあるのだろう。

僕はカウンターに座る前に店を閉めようと入り口へと向かっていた。


ガラガラ!


「まだ、やってるよね!?」


「兎さん?」


「ジャジャーン!白澤兎見参だよ!」


僕は兎さんを招き入れて、入り口の暖簾を下げて、板の営業中をひっくり返して閉店にした。


「勇くん、久しぶりだね!特製塩チャーシュー麺お願いできるかな?」


「もちろん!あ、佐々木さんちょっと待っててください」


「大丈夫だから、美味しいラーメン作ってあげてくれ」


僕は特製塩チャーシュー麺を兎さんに提供した。


兎さんはというと。


「どれくごくおいいいね!」


ともぐもぐしながらしゃべっていた。


「兎さん、食べ終わってから話そう」


「ぞうでね」


僕は純佳さんに白澤兎さんがどういう人物なのかを説明した。純佳さんは本当に驚いた顔をしてこう言った。


「兎さんと勇くんの子供はどこにいるんですか?」


「勇くんとの子供なんていないよ、失礼なことに私には一切なにもしてくれなかったんだよ?」


「勇くんに限ってそんなことはありえないわ!」


「僕って信用ないのかな?」


「んー? 

信用があるとかないとかじゃなくて積み重ねた実績を考えると、少しあり得ないと思うの」


「ねえ、勇くん?彼女の名前は?」


「純佳さんだよ」


「やっぱりねー。これは惚れるわ」


兎さんは、特製塩チャーシュー麺を完食していた。


「あ、佐々木さんお待たせしました。

大切なお話しがあるとのことなので、どうぞお話しください」


僕は佐々木茂さんに声をかけた。


「兄ちゃんは勇って言って、彼女が純佳さん、最後に来たのは…兎さんだっけ?

俺は君をどこかで見たことがある気がする」


「私は美少女だから、覚えられやすいの」


兎さんは本当に美少女だ。

文章では書けないほどに。


「この中で石川県金沢市の犀川ハイツの住民だった人、手を挙げてくれるか」


僕と純佳さんと佐々木さんが手を挙げた。


「次に犀川ハイツから転移されたと思われる西暦を教えてくれるか?俺は二千十五年だ。」


「僕は二千二十五年です」


「私は二千三十五年です」


「ふーむ。 

勇くんはこれを聞いて何か疑問を覚えないか?」


「僕が感じるのが、僕が純佳さんのいるこの異世界に来たときに…。確か?

純佳さんはこの世界に来て一年くらいだと言っていたような?」


「勇くんの言う通りだよ、勇くんと出会ったのは私がこの世界に来て一年くらい過ぎた頃だよ」


「純佳さんだっけ? 

二千三十五年にこの世界に転移、

そして勇くんは二千二十五年にこの世界に転移。これで合ってるかい?」


「佐々木さん僕は正確に言うと、二千二十六年頃にこの世界へ転移しました。その前の異世界で一年過ごしてますので」


佐々木さんは目頭をモミモミしていた。


「実はな、勇くんよ。

あの日ラーメン御麺で君と話してたら、

閃いてな。俺は魔法陣を完成させて転移したんだ」


「この世界にですか?佐々木さん?」


「それが違って犀川ハイツに戻ったんだよ」


「えー!そうなんですね!」


「でな?近所のコンビニわかるかい?」


「もちろんわかります」


「そこで西暦何年か聞いたんだよ。

そしたら二千二十五年だったんだ」


「えーーー!!」


「スゲエむしゃくしゃしてな、

部屋に帰って荷物の中にあったエロ本で、

一発ぶっこいたら天井の魔法陣が光ってこの世界に来たと言うわけよ」


「あー!思い出した!

◯ンコ丸出しで転移の間を通過した人だ!

確かラーメン御麺でも何回か見てるよ!」


兎さんが跳ねた!ぴょんって。


「ねーねー。プロが説明してもいいかな?」


「どうぞ、兎さん!」


「ありがと、勇くん。

一つ、異世界と異世界をつなぐ転移魔法陣を通過する場合は必ず転移の間を通ります。

一つ、転移の間の時間軸には揺らぎがあります。なので転移の間に一秒いただけでも、五年や十年が過ぎることがあります。仮に勇くんみたく十年以上転移の間にいても、この世界に来たときには一週間しか経過してないという実例もあります。

一つ、転生の場合は魂の保護処理があるので、基本的に転移先の神的存在がいる空間へ行きます」


「興味深いな」


佐々木さんは兎さんの説明に聞き入っていた。


「佐々木さんとやら、君は何度か私の転移の間を通過してるよね?

仮に魔力を生命力として、転移魔法陣を世界の扉としよう、君は転移する度に寿命を縮めてるよ」


「兎さんとやら、それは体感していることだ。転移する度に魂のような霊的なものが、吸い取られていく感覚は感じた」


「佐々木さんとやと話してて感じたのだけれど、

君は魔法陣マニアみたいだから、この世界ではこの世界を生き来する横移動の魔法陣を研究するといいと思うよ」


兎さんは何でもお見通しらしい。


「でもね、私はその…。

タイムラグがあって良かったと思うの。

だって時間のズレがなかったら、勇くんと出会うときに私は八歳とかそのくらいでしょ?

なんか嬉しいな」


「純佳さんの言う通りだね、この出会いには感謝しかないよ」


「自分で作っておきながら、何とも無責任なんだが、あの犀川ハイツのあの部屋から異世界に飛ばされた人たちは無事だろうか」


「それは気になりますね、佐々木さん」


僕もそうだったけど、どの転移もすごく運が良かった気がする。


「この兎さんが、さらに説明しよう。

一つ、有能な魔術師が施した魔法陣で勇者召喚される人はとても稀であると。

一つ、人口または自然発生的な魔法陣で転移させられる幼子からお年寄りの数は膨大で、あ、これは並行世界の全部を合わせた数ね、そして今ここにいる世界にも沢山の流浪の転移がいることでしょう」


「その転移者を見分ける方法が口唇術なんですね」


「あの相互自動翻訳機能は転移の間で勝手に付与されるんだよね」


「でも、口の動きと発声される言語に微妙なズレがあるのは、見分けるにはとても重要な情報だと思うわ。」


純佳さんは真剣な眼差しで語る。


「ところで、佐々木さん。犀川ハイツの魔法陣を壊す方法はないんですか?」


「勇くんよ、それは物理的にあのマンションが解体されるしかないんだよ」



----時は西暦二千三十七年四月


犀川ハイツの周りには足場が組まれ、白い工事用シートで覆われていた。

そこへ重機が入って行く。

ダッダッダッ!

築六十数年の月日の間、数多くの住民の物語を詰め込んだ犀川ハイツは解体の日を迎えていた。


それは事実上、勇と純佳と佐々木。

そして数多くの転移者たちの帰還への術が消え去るというものであった。


紐解かれる転移魔法陣の仕組み。

転移の間の時間の揺らぎ。

そして無作為に転移させられた人たちの行く末。

様々な想いが交錯する。

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