ラーメン龍神
異世界にラーメン屋さんを開けよう!
勇たちはそのミッションの達成を目指して邁進する!
僕は純佳領に戻り、大きくなった勇次郎と純と再会した。
勇次郎は「お父様なの?」と純佳さんの後ろに隠れていたが、純は「知らないおじちゃんはお父様なの?」
と純佳さんに聞いている。
メイド服を着たリンとアンナとキャシーとベルは、「おかえりなさい!勇さま!」と涙を浮かべて、そっと僕に寄り添って来た。
純佳さんは、あの六カ国会談のあとで僕が龍神ヴァルナークと話し合いをして脅威を解決したことで、各国が約束を守り、四人を純佳領へ譲ることを承認して、ここへ来たことと。
ここで四人の出産ラッシュがあったことなどを話してくれた。
「純佳さん、それは大変だったね。
本当にありがとう。それで、子どもたちは?」
「皆んな昼寝してるから、あとでね!勇くんお腹空いてない?」
「十年間、不眠不休で食事もしてなかったから、お腹空いてきたかも?」
「十年間!?それってご飯の前に寝たほうがよくないかな?」
「いや、何か食べてから寝たい」
「わかったよ、直ぐに用意するから!リンさん、アンナさん!キャシーさん!ベルさん!勇くんの鎧を脱がせてあげてくれる?」
「かしこまりました」
僕は領主の館の僕の部屋に案内してもらい、四人が僕の鎧を丁寧に脱がそうとしてくれているのを見ていた。
なんだか、懐かしいな…。
すると、四人が四人とも。
----「あれー?」----
と言ってる。
「どうしたの?みんな?」
「いつもの外す場所がないんですよ」
「そうなの?ちょっと待ってて!」
僕は皆んなに少し離れるように言って、小声で声を出してみた!
「ガルディアーク!」
部屋に広がる漆黒の闇、そして闇は収縮してベッドの上に綺麗にまとまった。
大剣である闇龍と大弓の闇夜もベッドに綺麗に並んでいる。
「勇さま?どういうことですか?」
リンがすごく驚いている。
「今度ゆっくり説明するよ」
アンナとベルとキャシーもキョトンとしている。
「ねえ、皆んな、僕だいぶ臭うよね?」
「いいえ、全然!」
「そう?ご飯食べたらお風呂入りたいんだ」
「ご用意しておきますね、その…不思議なお洋服は着替えますか?」
「あ、そうだね!頼むよ」
服を着替えさせてもらいながら、これもまた懐かしいなと僕は思った。
純佳領の時代感の服に着替えて、僕は食堂へと行った。
「勇くん、驚かないでね?」
純佳さんがイタズラ顔をしている。
そして、運ばれて来たのが一杯のラーメンだった。
「うわあ、純佳さんが作ったの?」
「四人の協力と料理長の力も借りてね」
「いただきます!!」
僕はスープを一口飲んで、芳醇な海の香りを感じた。
----魚介系スープだ
麺を一口すする。
----この麺は今までに無い食感と心地よい歯切れがあって喉越しも良いな。
チャーシューのような物、メンマのような物、岩海苔のような物、どれもとても良くまとまっている。
僕は一言も話さず夢中になって、純佳さんたちの創作したラーメンを完食した。
「うまかったあ〜!」
「良かったわ!」
「皆んな、これはすごいラーメンだよ!」
「勇くんは取りあえず湯浴みをして休もうよ!」
「そうだね、」
僕は本当に久しぶりにお風呂に入れてもらった。
身体を洗う四人が僕の身体をチェックするように、視線を送っているのを感じる。
「どうしたの?」
「いや、勇さまのお身体がより逞しくおなりで、あとお怪我されているところも、見当たらないので少し安心しているところです」
「それは、そうだろうね」
僕はバスローブを着せられて、ベッドに向かった。
ドンっと身体をベッドに横にすると、四人がマッサージを始める。
「すごい気持ちいいよ……。」
僕は微睡みを感じて、そのままに眠りについた。
翌朝、気持ちよく目覚めるとベッドサイドに五人の姿があった。
「やっと起きたよ〜」
「え?」
「勇くん一週間も寝てたんだよ」
「マジか…」
「マジでマジで、心配したよ〜」
純佳さんは本当に安心した顔をしていた。
リンもアンナもキャシーもベルも涙ぐんでいた。
「純佳さんしかわからないと思うけど、僕は龍神ヴァルナークさんに飛ばされた異世界で一年間の間、ラーメン修行をして来たんだ!ラーメン作りたい!」
「お父様はラーメンつくれるの?」
勇次郎が聞いてくる。何歳になったんだろう?
でも予想より幼いかな?
純はお兄ちゃんの背中をギュッと握っている。
他に男の子の赤ちゃん、女の子?男の子、男の子と四人の赤ん坊をそれぞれが抱いていた。
全員黒髪で黒い瞳だった。
僕は子どもたちを紹介してもらった。
リンは男の子でイサリークと名を付けた。
アンナはアリサという女の子だと言う。
ベルはちょっと大きな赤ちゃんで名をベルフレットと言うそうだ。
キャシーは男の子にアーサーと名付けたという。
僕は一人ずつ抱かせてもらい、大家族の父親になっていたことを実感した。
「皆んな、本当に苦労をかけたね。元気な子どもを産んでくれてありがとう!」
----そしてその夜
僕は異世界帰還記念第一回家族会議を開催した。
議題は一つ「この世界にラーメン屋を開業すること」
僕はこの世界では貴重な紙に、必要な店舗の大きさや店舗デザイン、厨房機器、冷蔵庫、冷蔵室、素材などを書き出した。
僕の書く字は純佳さん以外は読めなかったけど、純佳さんが翻訳して書き直してくれた。
あと、ラーメン安定供給に必要な養鶏場や養豚場などの設置も記した。
開店場所は純佳領主の館に最も近いアルスと言う宿場町であり商店街の一角に店舗を建造することになった。
----それから一年後
全員の協力、領民の協力もありアルスの街の一角の店舗に看板がかけられる日を迎えた。
その名も。
「ラーメン龍神」
お店の入り口を、ガラガラと開けると。
目の前に広がる十二席のカウンター。
キッチンの中に入ると…。
そう、ガスがないので薪で焚くコンロがずらりと並んでいた。
入り口には来週何日開店!と張り紙をして翌朝からラーメンの試作の最終段階に入る。
この世界には醤油が無いことと、純佳領は潤沢な海産物があるので、肉系スープと魚介系スープの二本立てで行くことを決めた。
製麺は純佳さんの料理長チームが請け負ってくれた。
純佳さんの提案で開店前にレセプションを開催することになり、夕方五時から招待客が訪れて来た。
「へい!いらっしゃい!」
最初に入って来たのは魔王のアルヴェインさんだった。
「久しいな、勇殿」
「アルヴェインさん!遠くからようこそ!」
「しかし…。食べ物屋とは貴様も変わり者だな」
「そうですね」
そして、エリナリーゼさんが入って来た。
「来たよ」
純佳が僕の横に付いた。
誰か入ってくる。
たくましいおじいさんだ…。誰だろ?
「勇くん、フロストガルドのビグザフさんだよ」
「あ、ありがとう!ビグザフさんようこそ!」
次は本当に知らない人が入って来た。
「純佳さん、どなた?」
「ごめんわからないかも?」
「よい、グラード・ヴァイス軍事帝国皇帝、
デラステン・ヴァイスである!」
「兵!らっしゃい!」
どんどんやって来る。
「テレシア聖教国のローナ大司教だ、お招き感謝する」
最後に来た人には見覚えがあるぞ…。
「純佳さん…。どなた?」
「だよねえ」
「良いのだ、勇者純佳よ。我こそはアステリア王国国王アルフォード・アステリアだ。開店おめでとう」
リンとアンナとキャシーとベルは、頑張って開発した焼酎の梅酒割りに近いものをそれぞれに提供した。僕らもワイングラスを手にする。
純佳さんが集まってくれた皆さんに挨拶をする。
「皆さま大変遠いところから起こし頂きまして、感謝してもしきれません。勇者である主人の勇がこの世界に新しい食文化を創作いたしました!是非このひと時をお楽しみください」
そしてアルフォード国王が話し出す。
「食は文化であり、各国をつなぐ平和の証でもある。勇者勇の新しい船出を祝おうではないか!乾杯!」
皆んながグラスを持ち上げて飲み始める。
「これは、ほんのりスイートなのにドライなのね?美味しいわ」
エリナリーゼさんがグイッとグラスを開ける。
リンがおかわりを持っていく。
しばらく歓談の時間が過ぎたので、僕は特製魚介系塩ラーメンを作り始めた。
スープは純佳領特産の海塩、具材は白身魚の薄切りを炭火であぶったチャーシュー、メンマの変わりにアワビをスープで適度に炊いて火を通してスライスした物、岩海苔とワカメと開発した岩海苔。
「先ずはこちらのアッサリ系からお召し上がりください」
この店の基本のカトラリーはお箸だが、もちろんフォークは用意してある。
皆んな黙々と食べている。
二杯ずつ召し上がって頂きたいので、麺は半分量にしてある。
「美味だ、限りなく美味だ!」
アルフォード国王がつぶやいた。
「これは我が国に欲しいな、民も喜ぶであろう」
老将軍ビグザフが大きな声で言う。
商業同盟ヴァレンツァ代表のエリナリーゼさんが、僕を見てこう言った。
「このレシピ言い値で買うわよ」
何ていうんだろうお国柄が出てるなあ。
「勇くん、次に行こうよ」
「はい!」
僕は特製塩チャーシュー麺を作る、素材はこの世界の物を集めたけど、ラーメン御麺の味に近い作品だ。
「なんだ!このパンチのあるスープは?透明なのに深い旨味とコクがたまらん!」
デラステン皇帝のキャラが変わった。
ローナ大司教は無言で上品に焼酎の梅酒割りで口を洗いながら食べている。
魔王アルヴェインは純佳さんに、色々と話しかけている。
「まだ何か隠しているだろう?早く出しなさい」
だってさ。
僕はリンとアンナに手伝ってもらって、手羽先唐揚げと焼餃子をお出しした。
焼酎の梅酒割りが大爆発していた。
本当はお一人様二杯までだけど…。
今日はいいか!
こうして大盛況でレセプションを終えたのだった。
翌日、本格的なオープンで一週間全品半額で営業した。昼の部で完売続きだった。
----半年後のある日
閉店間際に一人の男性が入って来た。
「特製塩チャーシュー麺」
ボソリとそう言う。
「へい!おまち!」
男性はペロリと完食して、立ち上がると思いきや次にこう言った。
「焼酎の梅酒割りと手羽先唐揚げ」
「はいよ!」
「へい!おまち!」
黙々と飲んでは食べ飲んでは食べを繰り返している。
そして僕を見てこう言った。
「ラーメン御麺にここまで近づけるとは…。
兄ちゃんすごいな!」
「え!?」
「覚えてないかい?俺だよ?」
強烈なデジャヴが僕を襲う。
「あの、どこから来たの事件のお兄さんですか?」
「覚えててくれたか、正解だよ」
「えーーーー!?」
「この後話せるかい?そっちのお姉さんも」
その男性は僕と純佳さんを指名して、何か話があるらしい。
僕は声を振り絞ってこう質問した。
「あの…。お名前は?」
「佐々木茂、犀川ハイツに魔法陣を構築したのは俺だ」
「僕は轟勇です。どうして僕が転移者だとわかったのですか?」
「口唇術だよ、そっちのお姉さんも君も日本語を話してるのがわかる。異世界へ行くと、その世界の言語が日本語に聞こえるけど、口の動きがバグってるんだ」
----今、この瞬間に、
この一連の転移の謎が明かされようとしていた----
前段のお話しを吹き飛ばすような、謎の人物。
その名は「佐々木茂」
彼はいったい何を知る者なのだろうか?




