転移魔法陣の間
真っ白な世界は何のためにあるのか?
大きな白兎は何者か?
勇はまた試されようとしている。
勇くんは私のことを不思議な生き物のように見つめているのよ。
ついさっきまで一緒にいたのになあ。
「勇くん、この空間には幾千幾万という転移魔法陣があります。ここまではいいかな?」
勇くんは辺りを見回していた。
私は薄く広く魔力を空間全体に広げてあげたの。
そうするとすべての魔法陣が淡く光りだすから、勇くんにも認識できるようになるの。
「兎さん兎さん、めっちゃ地の果てまで魔法陣があるんですけど…」
「でしょう?時々壊れたり消えたり、
新しい魔法陣が誕生したりを繰り返してるから、正確な数は私にもわからないんだけどね」
「もしかして、ここって別の電車に乗り換えする大きな駅みたいなものですか?」
「勇くん!するどいね!」
「でも、こんなに多いいと乗り換え出来ませんよ?」
「勇くん、そこは直感を信じて選ぶんだよ」
「兎さん、選んだらどこへ行けるんですか?」
「正確に言うとどこにでも行けるよ!」
「僕…。どうしても行きたい異世界があるんです。 正確に言うとその異世界に帰りたいです。僕を待っている人がいるはずだから」
「ラーメン御麺の皆んなのところ?」
「兎さん?なんでそれを知ってるんですか?」
「あれれ?私は兎だよ?」
「見ればわかります。ちょっと大きい白兎ですよね」
「はあ、鈍感だなあ。勇くんは」
「すみません。良く言われてるような気がします」
「じゃあ、ヒントをあげるね!」
「よろしくお願いします!」
「あなたがよく知ってる----兎の名----を持つ美少女はだれでしょう!」
「白澤兎さん!!」
「正解!!白澤兎だよ!!」
「え!?」
私は大きな白兎の姿から、兎のコスプレをした白澤兎の姿に形を変えてあげたの。
「兎さん!!無事だったんですか?」
「無事も何も、ここへ勇くんを連れてきたのは私だよ?」
「えー?もう何が何やら理解できませんよ!」
勇くんが頭を抱えているわ。
まあ、そうでしょうね…。
「簡潔に説明するよ、去年のウィンウィンパーティーの月の街に勇くんを召喚したのは、半分は私の能力を使ったの。そして今年のウィンウィンパーティーで勇くんをこの転移の間に連れて来たのは全部私の能力なんだよ」
「兎さん、それは何のためにですか?」
「私はこの世界、この宇宙、パラレルワールドとして存在する異世界と呼ばれるすべての世界の、
----監視者----であり、----管理者----というべき役目をしているのよ」
----思い出したぞ、娘よ----
「なんですか?龍神ガルディアークさん?」
----そなたは四千年ほど前にここで私と、
会っているな、たしかシルヴァリーだったか?----
「そんな古い話を覚えててくれるなんて、
とっても嬉しいわ、ガルディのおじさん」
----ワーッハハッハハー!もうわかった。
私は口を挟まないことを確約しよう!----
「話が早くてたすかるわ、でね?
私は一年間の間ずっと勇くんを"生で"観察していたわ、正確に言うと最初にここを通り抜けた時から、異質な存在としてマークしていたの。
私は直ぐにピンと来たわ。勇くんが普通でないことをね。」
「僕が普通でないことは少しは理解しています」
「そうね、純佳さんとの出会いはとても有意義だったわ」
「なんでも知っているんですね」
「勇くんは幾重にも重なり並行している、
全世界の最大の"脅威"だからね」
「え!?」
「普通はね、少しずつ努力して失敗を繰り返して、
研鑽を重ねながら強くなるものなの。でも勇くんは一度目の転移で----神の祝福----を受けたの。
きいているでしょう?無もなき神よ!」
----こうして相まみえるのはいつぶりであろか----
「覚えてないわ」
----私もだ----
「あなた勇くんになにをさせるつもりで、
あんな強大な力を与えたの?普通じゃないわ!」
----すべてを無に帰するため----
「なんのために?」
----はなしたところでわかるまい----
「まあ、そうよね。
でも、いくらあなたが最高位の存在だとしても、私はそれにあがなうわ!」
----せかいはあるがままにある----
----わたしは成熟した、
この世界が意図せぬものに向かっているのが明確に見えた、だからすべてをやりなおそうとおもいこうどうした----
「もう、わかってるわよね?」
----わかっている----
「あなたの計画は勇くんが純佳と出会ったことにより、大きく流れを変えたわ」
----わたしは万能だか万全ではない----
「そうよね、あなたとの話はここまででいいわ」
勇くんは状況を理解しようと深く考えてる様子に見えるわ。過去を振り返っているようね。
私は勇くんが混乱しないように考える時間を与えたわ。
しばらくすると、勇くんが顔を上げて私を見ている。
私は待つことにした。
「兎さん、僕は純佳さんたちのところに帰りたい」
「それが一番良いと言うよ」
「どうやったら帰れるかな?」
「この幾千幾万の魔法陣の中に"一つだけ"
正解の魔法陣があるから、ゆっくり探してみて」
----私はもうわかったぞ!----
「ガルディのおじさんは黙ってて!」
----しかたあるまい----
「勇くん?座ってても帰れないよ。
正解は君にしか見つけられないよ。
ガルディのおじさんが横槍をはさんだら、
たとえ正解の魔法陣でも私は違う世界に勇くんを転移させるわ」
勇くんは立ち上がって、ぐるりと並ぶ魔法陣の海を見渡していた。
「兎さん、どんなに時間がかかっても、
僕は必ず正しい魔法陣を見つけてみる。
それが正解じゃなくても、何度でも転移していつか純佳さんのところへ帰ってみせる」
「勇くん。この転移、今回の転移が勇くんの人生で最後の転移になるよ。だから後悔しないように頑張ってね!」
「兎さん…。
それ、重いよ」
勇くんは一つ一つの魔法陣を観ながら、ゆっくりと歩み始めていたの。
私は勇くんの精神が崩壊したり、飽和しないように、勇くんの側にいることにしたわ。
誰一人口にしなかったことがあるわ。
それは。
勇くんにはこの転移の間さえも破壊して無に帰する力があることを。
これは本当に秘密の中の秘密。
大きな白兎は白澤兎だった。
勇は幾千幾万もの魔法陣から正解を見つけられるのか?
そして無もなき神の望む"世界を無に帰するとは?
勇の選択やいかに!?




