楽しいラーメン研究会と僕の心からの告白
ラーメンスープ研究会は楽しそうですね!
それにしても大人の気配りってさりげなくて素敵ですね!
何日も僕は悩んでいた。
どうやって話すんだ?
どうやって説明するんだ??
心の片隅で頭の片隅で悩み続けていた僕に、とおるさんが声をかけて来た。
「勇くんよ、明日と明後日は定休日なんだけど。
ラーメンスープ研究会を久しぶりに開くから遊びにこないか?」
「それは…!興味深いですね!是非参加させてください!」
僕たちは閉店作業を済ますと、ユニフォームから私服に着替えて店を出た。とおるさんが鍵をかけている。
「じゃあ、勇くん明日の十一時に来てくれよ」
「はい!」
そして翌日十一時に僕はラーメン御麺の店頭でとおるさんが来るのを待っていた。
「おう、待たせたみたいだな。すまん。」
「いえ、来たばかりですよ!」
とおるさんは楽しそうに出汁の素材の話しをしてくれる。乾燥したキノコから取れる出汁、乾燥した貝柱から取れる出汁、煮干し、鰹節、小さな手鍋で少量ずつの出汁を作る。
「勇くん、それぞれ一口飲んで見てくれるかい?」
「うわっ!全部個性が違いますね!」
「そうだろ?ここで驚いてはいけないんだよ」
とおるさんは色々な出汁をブレンドして三種類のブレンドした出汁を作った。
「味見してみるかい?」
「はい!」
これはヤバいかも…。
美味すぎる!!
「とおるさんすごいですね!とても風味があります!本当にどれも美味しいです!」
「ここでびっくりしてはいけないんだなあ」
とおるさんは冷蔵室へ行き、この店自慢の熟成スープを持って来て三種類のスープに混ぜていった。
そして茹麺器に水を張って火をつけた。
「まあ、人それぞれだけど旨味ってやつは無限にある。正解も不正解もないのさ。その時にある素材で作るのも正しいし、うちみたく決まった製法を守るという選択肢もあるんだ」
そのうちお湯が沸いて来て、とおるさんが麺を入れる。
どんぶりも三つ温められている。
「俺は塩が一番素直に素材の味を出すから試食は塩でするんだ」
三杯の素ラーメンが出来た。
それぞれ一口ずつ味見をする。
どれも感動的な美味しさだった!!
「とおるさんすごいですね…。ベースは熟成スープなのに風味がそれぞれ違います!」
「ここで驚いてはいけないんだなあ」
とおるさんは三種類のスープの残りを一気にブレンドして、そこにアサリを入れる。
麺が茹で上がったのと同時に、アサリの貝が開いてとても良い香りがする。
そして一つのどんぶりにすべてが集合し一杯のラーメンになった。
「よし!食べるか!」
「はい!」
新鮮なアサリの出汁が広がってすべての出汁が重低音のように舌の上で響き渡る。感動だ!!
「美味いか?」
「人生の価値観が変わるくらい美味いです!」
「それは良かった。で?
この数日心ここにあらずだったのはなんでだい?」
「それは…。」
「何も俺が解決しようって訳じゃないけど、聞かせてくれてもいいんじゃないかい?」
僕は正直にすべてを、とおるさんに打ち明けた。異世界から異世界へ渡り歩きここへ辿り着いたこと。
そして次の転移が近づいていること。
「勇くんは大変なことになってるなー。」
「そうなんです。なので一ヶ月後に辞めさせてもらえませんか?もしかしたらその前に転移しちゃうかも知れませんが」
「そうだな…。
よし、こうしよう!今月いっぱいで退職することにしよう!」
とおるさんは大人だった。
とても気優しいカッコいい大人の人だ。
「それでお願いします!」
「じゃあ、片付けて飲みに行くか!送別会の前の送別会だ!」
僕たちは片付けをして、とおるさんオススメの昼飲みの街へと向かって行った。
数駅離れたその街は昼間から飲み屋が立ち並ぶ混沌とした街だった。
夕方まで飲んで酔っ払ったとおるさんを家まで運んで、僕は兎さんのところへ帰った。
----僕のラーメン御麺の最終日は月曜日だった。
僕の送別会には、とおるさんとヒデさんと真帆さんも参加してくれて朝まで飲んでしゃべってとても楽しかった。最後に皆んなから贈り物をもらった。
「開けてごらん」
とおるさんが涙目で言う。
包装紙を取って中身を見ると何かの小さなケースが入っていた。そのケースを開けると綺麗な石の付いたネックレスが入っていた。カッコいい!!
「ありがとうございます!!」
ヒデさんも涙目ぐんでいて、真帆さんは泣いているように見える。
僕も感動してうるうるとしていると、朝日が昇り始めていた。ビルのガラスに反射して万華鏡のように見える。
僕はこの光景を皆んなの想いを一生忘れないと心に誓った。
「あ、今月の給料渡すの忘れてた!!」
「とおるさん、良いですよ」
「いや、良くない!社長としての最低限の責任だからな。本来月末締めの翌月十五日払いだけど、特別に用意したから受け取ってくれないかい?」
「ありがとうございます!」
そして解散したんだ。
それからしばらく、まったく何もなく日々は過ぎて行った。兎さんに連れられて色んな場所に行った。
それにしても…。
本当にどこへ行っても東京にそっくりだなあ。
----ウィンウィンパーティーの夕方----
「あー、もう!これどうなってるの??」
「ごめんよ、兎さん。自分で来たことなくて」
「ウィンウィンパーティーに間に合わないじゃないの!?」
---その時!部屋が漆黒で埋め尽くされたようにみえた!
いやあ、とおるさんがいい人。
ヒデさんも真帆さんもいい人。
兎さんもいい人。
漆黒に埋め尽くされた勇は転移したのでしょうか?




