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転移勇者と愛しき人と  作者: 炊飯器と電気ポット
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半年が過ぎ去り謎の常連客現る

時は過ぎ。

勇は成長して。

謎の常連客が現れる。

僕はラーメン御麺で順調に働いている。

正直いうと高校時代もアルバイトはしたことがなくて、金沢の大学に通いながらアルバイトに精を出そうと思った矢先に異世界転移させられた訳だけど。

良く考えたら人生で初めてちゃんと働いている気がする!!


休みの日は、兎さんと遊びに行ったり。

とおるさんに誘われて、他のラーメン屋の繁盛店に行ったりと充実した毎日を過ごしている。


「はい!いらっしゃいませ!」


なんと僕は半年かけてラーメンを作れるようになっていた。最初はとおるさんがサポートでお店にいたけれど、今はどこかに出かけて行くことが多い。


一人の男性が僕の前に座る。


「ご注文お決まりでしたらお呼びください!」


しばらくすると…。


「特製塩チャーシュー麺ください」


「かしこまりました!」


僕は特製塩チャーシュー麺を作り始める。


「お兄さんどこから来たの?」


「僕は石川県金沢市から来ました」


「そうなんだね」


「お待たせしました!特製塩チャーシュー麺です」


その男性は夢中になってラーメンを食べている。

スープまで完食して席を立った。


「ごちそうさま」


「ありがとうございました!」


だいたい一週間に一度、僕が調理に入っている日にその男性はふらりとやってくる。


「お兄さんどこに住んでたの?」


「僕ですか?犀川ハイツですけど?」


「やっぱりどこか間違えてたんだな…。」


男性はぶつぶつとつぶやいている。


また数日後、その男性はやって来た。


「兄ちゃんもやっぱり中世的な異世界に行きたいよな?」


「行って来ましたけど?」


「え?」


「どういうことだ…。なんか変だな…。」


いや、変なのはお客さんの方ですからね。


----そう言ったやりとりが、その男性と何度も繰り返された。ひと言ふた言のやりとりだったけど、あの人も転移して来た人なのかな?----


そんなことが繰り返されたある日に、その男性はまた店を訪れた。


「ご注文は?」


「手羽先唐揚げと限定餃子と焼酎の梅酒割り」


「かしこまりました!」


めずらしいな。

今日は特製塩チャーシュー麺じゃないんだ。

一人限定二杯しか注文出来ない焼酎の梅酒割りを頼むなんてイケてる感じがする!


「兄ちゃん、焼酎の梅酒割りもう一杯。あと犀川ハイツに積層型立体魔法陣なかったかい?」


「いいえ何も無かったですよ?」


「ありがとう。これはバラして作り直しだな」


小さい声でぶつぶつ言ってるけど、めっちゃ聞こえてますよー!


ラーメン御麺は毎日忙しい。

僕はクタクタになって、兎さんの部屋に帰宅する。


「ただいま、兎さん」


「勇くん〜!おかえりなさい〜!

早くこっちに来て一杯やろうよ〜!」


また飲んでるわ。


僕は兎さんと他愛のない話しをして過ごしていた。

でも心の片隅に引っかかっていたある言葉を僕は兎さんに話していた。


「兎さん、積層型立体魔法陣ってなにかな?」


「なにそれ〜!笑えるんですけど!」


「何が笑えるですか?」


「だってさ〜。そんなことしなくても転移なんて簡単に出来るじゃないのよ〜!ワイン持って来て〜」


兎さんも謎だよな。

単純に酔っ払ってるのかな??


----ある夜のラーメン御麺


「へい!いらっしゃい!」


またあの人だ!


「ご注文は?」


「餃子と手羽先と焼酎の梅酒割りもらえる?」


「かしこまりました」


どうやらラーメンブームは去ったみたいにみえる。

僕はあの男性に焼酎の梅酒割りを持って行った。

美味しそうに食べる男性。

焼酎の梅酒割りも二杯目を飲み終わろうとしている。


「兄ちゃん!注文よろしく!」


「焼酎の梅酒割りはお一人様二杯までですが?」


「特製塩チャーシュー麺を最後に食べたいんだ。兄ちゃんのおかげで今度こそ間違いなく俺の魔法陣は完成したんだよ」


「魔法陣作れるってすごいですね!」


「ここのラーメン食べられなくなるのは、心残りだけどなあ」


男性はいつもの通りスープまで完食して会計に来た。


「はい!これでたりてるかい?兄ちゃん?」


「お釣りありますよ」


「いらないよ、異世界行ったらここの金はつかえないしな、縁があったらまた会おうな!」


その日限りで二度とその男性は店に顔を出さなくなった。


----その二カ月後の夜


僕は休日でまた兎さんと部屋で飲んでいたんだ。

兎さんの手料理とデリバリーしてもらったフライドチキンとピザを食べながら、色んな話しをした。

兎さんは匍匐前進でベッドへと潜り込んで行った。

静かな寝息が聞こえる。

僕は静かに洗い物をして、テーブルの上を片付けて。

余った食べ物はラップして冷蔵室にしまった。


その時小さな声が明確に聞こえたんだ。


----勇よ、平和そうだな----


「ガルディアークさん?」


僕は黒竜の鎧のマントに触れる。


----時は近いぞ----


「時って!この世界にも脅威が迫ってるの?」


----そうではない。

お前はまた別の世界へ行くだろう----


「あり得ない話ではないね」


----安心するがいい。私はお前と共にいる----


僕は兎さんの隣に寝転んで今後のことを考える。

兎さんに迷惑かけないこと。

ラーメン御麺の皆さんにも絶対迷惑をかけないこと。


そう思いながら僕は瞼を閉じた。

兎さんが起きてたのを知らずに。

普段暮らしている中で「魔法陣」や「積層型立体魔法陣」の話をする見知らぬ人がいたら、ほとんどの人は警戒するはずなのに、勇は慣れ過ぎててほとんどを聞き流してしまう。

兎さんも魔法陣耐性があるし、ガルディアークは転移の気配を明確に感じ取っている。


何かが起こる予兆なのでしょうか?

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