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転移勇者と愛しき人と  作者: 炊飯器と電気ポット
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兎の想いと勇の想い

兎は勇の話すことを疑わず素直に聞き入れていた。

普通なら「異世界から転移して来たんだ!」などと聞いたら病院に連れて行くレベルだろう。


勇は「ヒモにならない?」という兎の提案にどう応えるのか?

うふふっ!

勇くんがボケっとした顔してるわ!

ウケるんですけど!


「行く当てもない、お金もないなら私のヒモになるのが一番良いと思うよ?」


勇くんがマントの中の腰についてる袋を出してテーブルに置いた。なんだろう?


「兎さん…。

たぶん、この世界では価値のないものだとは思うけど、今の僕の全財産です!」


勇くんは袋の中身をテーブルに出して並べてくれたわ。


「勇くん?これが何か説明してくれるかな?」


「兎さん、ここにある金貨は異世界ではかなり価値の高いお金で、ここに十枚あるけど普通の家庭なら二年は暮らして行ける金額なんだよ」


「それはすごいね!

じゃあこの天然石たちはなあに?」


「これは、この赤いのは宝石で紫色なのは純度の高い魔石なんだ。宝石が金貨百枚の価値があって、魔石も一つ金額五十枚くらいの価値があるはずなんだ」


「君、前の異世界とやらでは相当お金持ちだったんだね?」


「純佳さんが、何かあった時に困るからって戦闘の邪魔にならない程度の袋に入れられるだけ入れてくれてたんだ。だからお金持ちは純佳さんだね」


「ちょいちょい----純佳さん----が出てくるけど、

その人は勇くんの奥さんなの?」


「おっしゃる通りです」


「なるほどね、結論から言うとね」


「はい!」


「この世界には金という物質はないの」


「そうなんですか?」


「宝石と魔石は天然石として少しは価値がありそうだけど、この世界には無さそうだから、変わった標本扱いになると思うわ」


「僕…。相当詰んでますね?」


「だから、私のヒモになるって一択しかないでしょ?」


「------」


「心配しなくても私結構稼いでるから、勇くんは何の心配もしなくて大丈夫だよ?」


「考えさせてください」


「良いよ」


「------」


「お酒のおかわり冷蔵庫から持ってくるね!」


「------」


「はい、勇くんはビールをどうぞ!」


「ありがとうございます…。

僕…。考えたんですけど…。

さっき連れて行ってもらった、ラーメン屋さんの…。名前なんでしたっけ?」


「御麺よ」


「それです!あそこでアルバイトします!」


「そう来たか!すごいね!勇くん!」


「すごくは無いですよ」


「じゃあ、こうしようよ!

勇くんは戸籍がないから、借りられる部屋も家もこの世界にはないの」


「確かに!」


「だから、ここに一緒に住んで勇くんはラーメン修行をしよう!」


「おーーーっ!」


「じゃあ、改めてカンパーイ!」


「カンパーイ!!」


「それじゃあ提案その二だよ!」


「なんでしょうか?兎さん?」


「その価値ある金貨とか私にくれる?」


「もちろん!差し上げます!」


「それは勇との出会いの思い出の品として部屋に飾りまーす!」


「飾る物でもないと思いますけど…。」


「その代わりに、明日はこの世界で勇くんが平和に暮らして行けるように、洋服とか靴とか下着とか全部揃えるために買い物に街へくりだそう!!」


「おーーーっ!!」


少し落ち着いたのか、勇くんは少し眠そうな目をし始めた。


「勇くん!寝るならベッドの上でね、

その前に衣装を脱がないとだね!」


「兎さん!」


「なあに?」


「僕…。この鎧の脱ぎ方も着かたもわからりません!」


「えーー!!どんな生活してたのーー??」


勇くんが着ている鎧は脱がすのがすごく大変で、一時間くらいかけて脱がせたの。


「もう〜!酔いが覚めたじゃない!

飲み直しだよ〜!はい!カンパーイ!」


勇くんはもう限界みたいで、ベッドのほうに匍匐前進を始めたの。うふふ。


そして彼はベッドに潜り込んでスヤスヤと眠り始めた。


さて…。


この子はどんな人物なのか、きちんと良くみないといけないかな。


私はハンガーに掛けられそうな鎧をかけて、たためる物はたたんで、部屋の隅に片付けた。


----悪い娘では無さそうだな----

----だが知り人に似ている----


「え?」


私は誰かの声が聞こえた様な気がしたの。



謎多き美少女の兎と謎多き転移勇者勇の共同生活が始まろうとしていた。

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