ウィンウィンパーティー
転移した勇は信じられない光景を目にする。
現代日本と見間違う世界。
勇は何と戦うのであろうか?
目を開けると僕はとんでもない雑踏の中にいたんだ。
辺りを見回すとゾンビやらセクシーポリスの格好をした若者たちの姿が目立つ。
僕は激しい既視感に襲われた。
----そうだ!これはハロウィンパーティーだ!!
僕は辺りを呆然と見回すことしかできなかった。
純佳は?
胸に湧き上がる喪失感で息が苦しくなって来た。
「ちょっと〜!気合入りすぎじゃない?」
「----」僕に話しかけるのは誰だ?
「もしもーし!お兄さーーん!!」
目の前には白兎のコスプレをした美少女がいた。
人懐っこそうな笑顔が僕に安心感を与えてくれる。
「やあ、今夜はハロウィンパーティーなの?」
「ハロウィンってなに?
今夜は年に一度のウィンウィンパーティーだよ!」
----ウィンウィンパーティーだって!?
「お兄さん、友達とはぐれたの?」
「僕は一人だよ」
「決まりだね!飲みにいこうよ!」
「たぶん…。お金ないよ?」
「細かいことは気にしない!気にしない!
私がご馳走してあげるよ!」
----先ずは情報収集が大切だよね?
僕は白兎さんに連れられるがままにお店に連れて行かれた。
「居酒屋どん兵衛?うどん屋さんなの?」
「お兄さんさっきから変なことばかりいうのね?
うどんってなに?クスクス!良いからはいろうよー」
「ありがとう!」
店内に入ると威勢の良い声で「へい!らっしゃい!」と言う声が聞こえる!
席に着くと「お飲み物はいかがなさいさますか?」と聞かれるメニューも見てないのに。
「私は白ワインジョッキでお願い!お兄さん好きなの頼んでいいからね!」
「じゃあ大生で」
店員さんは「はい!よろこんで!」と言い離れていった。
「自己紹介しようよー。
先ずは私からね!白澤兎二十歳だよ!
お兄さんは?」
「僕は轟勇…。あれ?何歳だっけ?」
----僕は十八歳であそこに行って一年、
一年くらいで純佳に出会って五年、すると。
二十四歳になるのか!?マジ!?----
「僕はたぶん…二十四歳だよ」
「二十四歳かあ、めちゃくちゃ身体鍛えてるね!」
「ここしばらくずっと訓練してたからね」
「勇くんは戦士?なの?」
「兎さん、僕は勇者らしいんだよね」
「ウケるんですけど、勇者ってこれまたびっくり!」
店員さんがやって来て「へい!おまち!」とドリンクを運んで来た。
「じゃあ!勇くんの完璧なコスプレを祝って!」
----「カンパーイ!!」----
僕はなんだか悩んでるのが馬鹿らしくなって来て、大生を何杯もおかわりした。少しほろ酔いになって来たのを感じて、酔いに任せて聞いてみることにした。
「兎さん?ここ渋谷だよね?」
「勇くんって本気で言ってるの?
ここは月の街っていうんだよ?」
「ここは日本国?」
「ここは大和国だよー。酔ったの?」
----打率五十パーセントで異世界確定だなあ。
「今の総理大臣はだれ?」
「総理大臣ってなんなの?
この国はいにしえから朝廷があって、その頂点には帝さまがいてね。この大和を護ってくれてるんだよ?」
----打率百パーセントで微妙な異世界だわ。
僕は白澤兎さんに、僕が転移勇者で魔王と戦って転移して、次の世界で家庭を持って龍神ヴァルナークと話し合いをして、この黒竜の鎧がガルディアークとして生きていて、ヴァルナークさまの気まぐれで転移させられて、この世界に来たら白澤兎さんに声をかけられたこと。なるべく手短にふざけないで真剣に。
ちょっと考え事をしてる風な兎さんが、僕の目を見てニコニコ笑ってる。やっぱり信じてくれないよな?
「勇くん!核心的なことを言うね?
君、この国で生活するお金ないでしょ?」
「確かにないですね!」
「だよね!だよね~!」
「なんで嬉しそうなんですかー?」
「ちょっと散歩してお店を変えて作戦会議をしようよ!」
兎さんはとっととお会計を済ませて、僕の手をにぎってぐいぐいと引っ張って街中を進んで行く。
「勇くん、この世界は平和だよ」
「そうみたいですね」
「あ!あの子たち見て!クオリティ高いよね!」
----たぶん、この世界のアニメのコスプレかな?
「飲んだあとと言えばラーメンでしょ?」
「え?うどんはないのにラーメンはあるの?」
「ラーメンは国民食だよー。
超絶美味しいお店にご案内するよ」
メインストリートからちょっと裏に入ったところに、そのラーメン屋さんはあった。
---- ラーメン御麺。麺にこだわってるのかな?
「ここの特製塩チャーシュー麺がおすすめだよ!」
まだ、月の街はウィンウィンパーティーの行列で賑わっている、しばらくしたらこの店も大混雑するだろう。
カウンターに座り、兎さんが注文をする。
しばらくするとどんぶりが運ばれてくる。
懐かしい湯気の香り。
大きなチャーシューが五枚も入っている。
「兎さん、いただきます!」
「熱いうちに食べよ!」
----美味い!感動的だ!純佳さんにも食べさせてあげたい!
ふと目をやると「アルバイト募集中」のポスターがみえる。独立起業応援します。の文字。
「勇くん、お会計も終わったし行こうよ!」
「何から何までご馳走です」
「そんなこと気にしないでいいの!
次に行くよ!第二回作戦会議をはじめるよ!」
僕はまた兎さんに手を引かれて連れられるままに、街を歩いた。
エレベーターに乗せられて九階、どうやらここはマンションらしい…。
「勇くん到着しました!作戦会議の会場です!
さあ、入って入って!」
兎さんは玄関の鍵を開けて、僕を部屋に入れる。
----真っ白だ!床から家具からベッドから何から何まで真っ白。
「勇くん適当に座ってくれる?」
「ありがとう。ちょっと剣を降ろすね」
僕は大剣で床を傷つけないように、慎重にそっと床に置いた。
「はい!作戦会議の前に飲み直ししよ!」
兎さんは缶ビールと白ワインを持ってきた。
----「カンパーイ」----
「では勇くん!作戦会議の結論からいいます!
君は異世界から転移したばかりでお金もない、
洋服も靴もない、住むところもないで正しいですか?」
「もう、隅から隅まで兎さんの言う通りです」
「よろしい!君?今日から私のヒモね!」
日本に似て日本ではない国、大和国。
はたして、白澤兎とのヒモ生活が始まるのか?
勇者勇はいかに!?




