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転移勇者と愛しき人と  作者: 炊飯器と電気ポット
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六カ国首脳会談

勇者純佳の願いを聞き入れたアルフォード・アステリア国王が各国の首脳を呼び集めた。

そこで純佳が語ることとは?

----謁見の間を抜け、王城の奥深くへ案内された。


円卓の間。


この王国で、最も「言葉」が武器になる場所。


すでに席には、各国の代表が揃っていた。


玉座の左右に設えられた円卓。


北の雪原国家フロストガルド連邦国の白毛皮をまとった老将孫ビグザフ大将軍。


金と帳簿の匂いをまとわせたヴァレンツァ商業同盟の女代表エリナリーゼ。


鎧を脱がぬまま着席しているグラード・ヴァイス軍事帝国の皇弟デッケン。


神聖衣に身を包んだテレシア聖教国のローナ大司教

そして――魔王アルヴェイン・ディアヴォル。


かつて敵だったはずの存在。


全員の視線が、一斉に私へ向けられた。


「勇者純佳よ」


アルフォード王が口火を切る。


「急を要するとは聞いている。だが、この顔ぶれを揃えるのは容易ではなかった。まずは、何が起きているのか、簡潔に話してもらおう」


私は一歩前へ出た。


「はい」


胸の奥で、覚悟を固める。


「結論から申し上げますこのままでは――世界が、壊滅します」


ざわ、と空気が揺れた。


「原因は、ブルードラゴンです」


その名を出した瞬間、軍事帝国のデッケン皇弟が鼻で笑った。


「古代種の一柱か。確かに厄介だが、だからといって六カ国が揃う理由にはならん。討てばいい」


「討てません」


私は即答した。


「正確に言えば、“討ってはいけない”のです」


「何?」


「ブルードラゴンは、世界の魔力循環の要です。

彼が暴れているのは、敵意ではなく――歪みへの警告。

無理に排除すれば、魔力網が崩壊します」


今度は、商業同盟の代表が眉をひそめた。


「それが事実だとしても、ではどうするのです?

被害はすでに出ています。交易路も、都市も」


私は振り返り、勇くんを見る。


「対話します」


その場に、沈黙が落ちた。


「……対話?」


「はい。ブルードラゴンと、話し合える存在がいます」


私は、勇くんの肩に手を置いた。


「この人です」


一斉に視線が集まる。


「勇・轟。もう一人の勇者。そして――ブルードラゴンと同じ“高位存在”の声を、受け取れる者」


テレシア聖教国の大司教が、息を呑んだ。


「……まさか」


その瞬間だった。


空気が、震えた。


柔らかく、けれど確かな圧を伴って、光が降りてくる。


----久しぶりですね、皆さん----


澄んだ声。


天井から差し込む光が、人の形を結ぶ。


銀の髪、白い衣。


慈愛と威厳を同時に宿した微笑み。


「女神……テレシア……!」


誰かが、膝をついた。


----ええ----


女神テレシアは、静かに頷いた。


----私は、勇・轟に加護を与えし者。そして----今は、彼の“対話の橋”です----


女神の視線が、円卓を一巡する。


----ブルードラゴンは、敵ではありません。ブルードラゴンは世界の均衡が崩れつつあることに、怒っているのです----


「だが、なぜ勇者が対話できるのだ……」


軍事帝国の皇弟の問いに、女神は微笑んだ。


----勇は、力でねじ伏せる勇者ではないからです。でも勇にもこの世界を滅ぼす力があります----


女神は、勇くんの肩に手を置いた。


----彼は、問い、聴き、受け止める勇者。そして世界を超越する破壊神。だからこそ、対話が必要なのです----


私は、深く息を吸った。


「お願いがあります」


そして、頭を下げた。


「勇くんを、ブルードラゴンのもとへ向かわせてください。そのために必要な、政治的承認と、軍事的支援を――

六カ国、すべてにお願いします」


円卓の向こうで、視線が交錯する。


反対も、恐れも、打算もある。


それでも私は、顔を上げた。


「これは、世界を守るための賭けです。そして----この人が世界中の人たちを無駄死にさせないための、私の戦いです」


勇くんが、小さく息を吸った。


「純佳さん……」

「大丈夫」


私は、微笑んだ。


「あなたは、話すだけでいい。


守るのは――私と、この世界のみんなだから」


女神テレシアが、満足そうに頷いた。


----では、選びなさい。力で壊すか、言葉で繋ぐか----


円卓に、重い沈黙が落ちる。


勇くんが立ち上がった。


「皆さん聞いて頂きたいことがあります。各国に四人の勇者が召喚されたと聞きました。リン、アンナ、キャシー、ベルの四人です。そしてこの四人が宿す命は全員僕の子供です」


「なんと!?」


ローナ大司教が驚きの声をあげたわ。それもそうでしょうね。


「英雄色を好むとはまさにこのことだな。嫌いではないぞ」


魔王アルヴェイン・ディアヴォルは含んだような笑みを浮かべていたわ。この魔王は話せそうな人ね。


勇くんは話を続けた。


「お願いします!各国の四人の僕の妻と子供を僕に返して頂けませんか?」


「----」


円卓の間に沈黙が走る


----この場にいる皆に女神テレシアの名において----


----勇者である勇の妻の四人を召喚したのは---


----私であると宣言しよう----


----この四人の妻と子に仇なすものを私は許しません----


「女神テレシアさま、その御心に感謝いたします」


----勇者純佳よ----


----そなたの思うがままに願うがままに----


----すすむのですよ----



ここからが、本当の交渉。


そして、勇くんと私が“勇者”として世界に向き合う、大切な一歩だった。


純佳と女神テレシアと勇。

そして世界との対話。

世界は協調できるのであろうか?

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